7
階段を降りた先に居たのは人間の頭ほどもあるネズミ。
種類はわからない、グレイラットとか書いてあるけどグレイの意味を知らなければ意味が無い。
ちょっとたじろいだリサちゃんに発破をかけて、グレイラットに突貫させる。
突貫したことによってグレイラットの間合いに入るけど、それを無視してさらに突っ込む。
グレイラットは噛み付き攻撃を仕掛ける。
それを右足を半歩下げて体をひねることで回避すると、グレイラットの目に短剣を突き入れた。
痛みで悶えるグレイラットに対して、喉元などの急所を狙ってメッタ刺しにして戦闘終了。
レベルが5とはいえ、格上相手にかなり安定して戦えてるね。
『スキルの恩恵だと進言します』
うん、スキルはすごいよね。
どう動いていいのか、どれだけの力を込めればいいのか、そういった諸々の情報が全部体に染み付いてる感じだもんね。
それがあったから10万のゴブリンに囲まれた時も何とかなったんだし、本当にスキルさまさまだよ。
リサちゃんの解体する作業を手伝って、魔物の核である魔核を取り出す。
後はそんな作業を繰り返すだけ。
6階層目には危険な魔物は居なかった。
だってグレイラットしか出ないんだから危険でもないよね。
レベルは5~10と開きがあったけど、それくらい誤差の範囲だし、何よりリサちゃんのレベルもそこまでは簡単に上がるってことだしね。
ただ難点があるとすればリサちゃんのスタミナが少ないことかな。
2~3戦で疲れたと言ってくる。
まあ小さいし、レベルも低いから仕方ないかもしれない。
マップを見る限りだと、6層目から下に人間は居ない。
皆上を目指してるみたいだね、出口なんてないのに。
「ねえツカサちゃん」
「そのちゃんづけやめない?」
「えと、男の人にトラウマあるから女の子扱いさせてくれると嬉しい」
「じゃあ僕は女の子になったほうがいいかな?」
そう言ってから女体化魔法を使用。
体に丸みが帯びて、骨格が変わる、僕にとってはそれだけの変化だ、もともと女の子っぽいから顔とかの作りは全く変わらない、残念なことに。
驚いてるリサちゃんに再び話しかける。
「これでよしっと、でさっきは何が言いたかったの?」
「あっ、7階層に入ったら敵がすごく強くなったりしないよね?」
「ああそれは大丈夫だよ、7階層も10くらいの敵ばかり、油断しなければ十分に対応可能だよ」
「そっか、それとありがとう」
最後は消え入りそうな声だったけど、僕にはしっかりと聞こえたからいいでしょ。
階段を降りて7階層へ、この辺はまだ罠とかないから順調に進むことができる。
エル、念の為に空間魔法と重力魔法、それから罠発見と罠解除をお願い。
『命令を実行、完了しました』
さすがに早いね。
これでこのダンジョンは大丈夫でしょう。
『僭越ながらマスター思考加速のスキルを取るべきかと愚考します』
思考加速? そんなスキルもあるんだね。
効果はどれくらいなの? デメリットは?
『効果は思考速度が500倍、デメリットはありません』
そっか、ならそれもお願い。
それからは戦闘でも罠でも随分と早く処理できるようになった。
思考加速のおかげで、視野が広くなったためだと推測してる。
戦闘でも常に戦場の端から端までを見渡せるようになったから。
さくさくとレベルを上げながら、10階層まで辿り着いて、今日の冒険を終わりにした。