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光が収まると、目に映るのはまさにファンタジーの定番である、地下迷宮といった有り様だった。
マップに友好的な光点が映っている。
確認のために振り向くと、そこには小さな女の子。
多分10歳前後だと思う。
さっきまで近くにいなかったから、どうやら運悪く連れて来られてしまったらしい。
彼女のステータスをチェックする。
レベルは1、能力は近接向きの筋力と体力が多いタイプだ。
更に気になる項目が1つ、彼女の称号欄に転生者と書いてある。
同郷の人だからってわけじゃないけど、こんな小さい子をここに残すわけにもいかないよね。
「さっき上級悪魔と戦ってた人だ、神主スタイルというのを知っててその格好にしてるの?」
「勿論知ってるよ」
「ということはあなたも、私と同じ転生者、あるいは転移者ってことか」
「うん、僕は転移の方だけどね」
僕と話すことで、彼女はどうやら安心したようだ。
僕の戦い振りを見てるのもあるし、そばにいれば戦ってくれるっていう安心感もあるだろうけどね。
まあ同郷の人をわざわざ見殺しになんてしないから、その策略に嵌るんだけどね。
さて、見たところ彼女は近接戦も魔法による遠距離戦もできなさそうだ。
しかもレベルは1だし、1人だったら確実に詰んでるよね。
『セイル市とやらの地下を迷宮化させてもらった。これで後は諸君らの絶望と命があれば我は元に戻れる。存分に恐怖してくれよ、人の子らよ』
随分と自分勝手な主張だね。
でも、悪魔の言ってることは悪魔的な常識なんだろうね。
そんなことより、今は脱出のほうが先だよね、なにか出口はっと……あれ? マップに表示されない。
まさか、出口はあの悪魔を倒さないと現れないっていうパターンかな。
『99.89%そうです』
パターンは青かあ、こりゃ普通の人には無理ゲーだね。
だったら僕がなんとかしなくちゃ駄目か、仕方ない守りながらっていうのは難しいけどなんとかこの娘のレベルを上げなくちゃだね。
いい方法はないかなー
『彼女にスキルを譲渡することをおすすめします』
スキル譲渡か、なるほどいい考えだね、それならステータスが低くても割りと戦えるようになるからね。
後は武器か、彼女が使えそうなのは短剣くらいかな? 杖でもいいけど、魔力が低すぎて無理だろうね。
短剣スキルと二刀流スキル、後は新規に回避を取って彼女に譲渡する。
これで多少無茶しても大丈夫なはずだ。
迷宮は30階層ほどあって、そのうちの5層目くらいに僕達はいる。
上に向かうのではなく、下に向かう。
さすがに見かねたのか彼女が口を挟んでくる。
「ねえ、この階段は地下に続いてるよ? 出口を探さなくていいの?」
「うん、出口なんてないからね、あの悪魔を倒さないと永遠にこの中だよ」
「そんな情報聞きたくなかった、ところでどうしてそんなこと分かるの?」
彼女に僕のスキル構成とメニューについて教える。
彼女はチートめとか呟いてたけどこれでもまだスキルの乱獲は控えてるんです。
「私リサ、リサアサカゼ。日本人」
「僕はツカサ、ツカサアオイ、同じく日本人」
リサちゃんに創世で作った名剣レベルの短剣2本を渡す。
この階段を降りたら早速戦闘だ、リサちゃんに対するパワーレベリングを開始します。