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セイル市を目指してはや2日、僕の未来視によろしくないヴィジョンが浮かんできた。
それは上級悪魔の出現とセイル市の壊滅。
さすがにこれは見逃せないよね。
というわけで急いで行く、前にちょっとした準備をしておく。
創世の魔法を使ってみることにする。
何故か魔法や魔力の使い方は頭に浮かんでくるから使いやすくていい。
ってこれはどうでもいいことか、さて、作るのは人工頭脳。
もう1つの脳みそといえば理解しやすいかもしれない。
そこに人格を植え付けてあげれば、それで完成だ。
特に複雑なことは何もなかった、創世の魔法さまさまだ。
さあ、お目覚めの時間だよ、エル。
『命名を認証、おはようございます。マスター』
うん、おはよう。
さて、これから上級悪魔と戦いに行くんだけど勝算はあるかな?
『隠している情報がそのままなら勝てません。ですが、隠している以上そのとおりではないのでしょう?』
あれ? エルにも有効なんだ。
偽情報を無効化して本当の情報を開示する。
これでどうかな、戦えそう?
『これなら勝算ありです。悪魔の個体差にもよりますが十中八九勝てるでしょう』
そっか、流石にメニューとスキルの膨大な情報を取り込んでるだけはあるね。
そんな情報どこから拾ってきたんだか。
まあいいや、ってことは最悪の事態は避けられそうかな。
『はい、可能であると進言します』
ん、ありがとう。
だったら遠慮なんかいらないね。
エル、スキルの構成は君に一任する、必要な物はどんどん取っていってくれていいよ。
『了解しました。マスター』
念の為に、普通の鋼鉄剣ではなく、スキルスロットの空いた鋼鉄剣を創世で作り出す。
鋼鉄剣のスキルポイントが無駄になっちゃったな。
『問題ありません、スキルポイントに変換します』
おおっ、そんなことまで出来るんだ。
あれ? 鋼鉄剣分のスキルポイントは一本あたり10ptのはず、なんで合計で200も増えてるの?
『スキルポイントの最適化を行いました。より効率的にスキルを取得できるようになりました。』
んん? ってことは入ってくるスキルポイントが増えたって思っていいの?
『はい、その解釈で問題ありません』
そっか、じゃあ聖剣もやってしまおうかな。
創世で、聖剣を作り出す。
銘はアオイとツカサって、僕の名前じゃないか。
まあいいや、名無しの聖剣をそのままポイントに変換。
『了解しました。獲得スキルポイントは、1000になります』
やっぱり1本10ptはおかしかったのか、聖剣が鋼鉄剣と一緒なんてありえないよね。
有難かったからいいけどさ、さて、創世でもう2本剣を作っておこうか。
聖剣よりはランクが低いけど鋼鉄剣よりはランクの高い名剣。
銘はやっぱりアオイとツカサ。
さてと、準備は整ったかな、さてセイル市に入ろうか。
門番のいる所で列に並ぶ。
程なくして、門番のところまでついた。
「身分証の提示を」
「すみません、田舎からやってきたもので身分証がないんです」
「そうか、なら銅貨1枚だ。ギルドで身分証を発行すればこの金は返せるから、忘れずに取りに来るんだぞ」
「ありがとうございます。ゴブリンの討伐証明もギルドで大丈夫ですよね?」
「ああ、それで大丈夫だ。それにしてもお嬢ちゃん、その歳でゴブリン退治なんてすごいんだな」
その言葉に照れたように身を捩って答える。
小さい頃から僕は女の子に間違えられることが多くて、こういう態度の人には面倒なのでそのまま放置しておくことにしてる。
15歳になった今でも間違えられるんだから不思議だ。
『マスターは非常に可愛らしいと断言します』
ありがとう、でも男の子は可愛いよりかっこいいって言われたほうが嬉しい人のほうが断然多いからね? その辺は気にするように。
『マスターは可愛いと言われて傷ついてしまうタイプでしたか、申し訳ありません』
分かってて言ってるよね、僕は余り気にしないよ、慣れてるからね。
さて、さっさとギルドに行って、身分証を作らないとね。
んーでもなにか違和感がある。
これは……魔力?
「マスターご注意を、上級悪魔が出現します』
うん、見えたよ、あれが上級悪魔、大して人間と変わらないね。
もしくは生贄にされた人間かな、徐々に形が変わってるから後者だね。
異常な事態に気がついたのか、周りの人たちが息を呑む。
さっさと逃げないと死んじゃうよ? 人のこと言えないけどさ。
そして、悪魔が魔法を放った。