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人里を目指そうというのはいいけど、どうやらゴブリンの巣は森の中にあったらしい。
戦闘に夢中で気が付かなかった。
とりあえず人のいる方に向かって歩いてはいるけど、人自体はマップに表示されずに光点と矢印で表示されている。
つまりはこっちの方向に人がいるんだろう。
反対側には人がいないので森が広がっているか何かだと思う。
歩きながらメニューを覗いていると、能力値が目に入る。
能力値は99でカンストしていて、横に実際の数値120が並んでいる。
どうやら僕は万能型らしい、じゃなくてっ99カンストのはずなのに実際の数値――実測値――が並んでいるのはなんでだろう? これって表示される能力値だったりするのだろうか。
これが実際に表示されたら面倒になりそうな気もするから、何か良いスキルはっと、んー偽情報っていうのがそれっぽいかな。
これで、情報操作してっと、よしこれでいいね。
後は服装かあ、なんか地球の現代衣装はミシンとかの関係で無理そうだから変えないとね。
ここには和服なんかも流通してるんだね、ってことは神主スタイルにしておこうかな。
同郷にはこれで僕の性別が伝わるはずだし、知らない人にも変な風には見られない。
あれ? 人がいる方向から結構な勢いで近づいてくる人がいる。
ゴブリンの巣でも確認しに来たんだろうか? でも、ほとんど死体が残ってないんだよね。
ちゃんと死体が残ってる500体はこっちで既に回収済みだし、他の10万匹はほとんど跡形も残っていない。
残っているのは、爪とか耳とか一部のみだし、残っている数も200体ほどだったと思う。
巣の規模の割に、大してゴブリンの数はいないと判断されるかもしれないけど、仕方ないよね。
こっちだって必死だったわけだし。
でも、馬を使っているにしろやけにスピードが早いね、マップ外からもうマップ圏内に入る規模にはなったよ。
接敵するまで、後1時間もないだろうねって敵じゃないか。
こっちにはやることもないので、そのまま歩き続ける。
予想より早く40分ほどで彼らと会うことになった。
どうやら自分が歩いていることを計算に入れてなかったらしい、とんだ失敗だ。
「そこの者、この辺にはゴブリンの巣があるらしい。すぐに立ち去るんだ。最もちゃんとした武器があるならいらぬ心配かも知れないが」
「騎士様、ご忠告ありがとうございます。ゴブリンの巣なら、今しがた一つ潰したところです」
「なんと!? 規模はどれくらいだ?」
「ゴブリンの数が500を超えた辺りで数えるのをやめてしまいました。申し訳ありません」
「少なくとも500体規模か、ところで、討伐証明は持ったか?」
「証明部位がわからなかったので死体ごとアイテムボックスに閉まってあります。死体は状態のいいものを選んだので500くらいしかありませんが」
僕の言葉に十分すぎるほどの金が手に入ると教えてくれた。
騎士様に礼を告げて立ち去ろうとすると、騎士様が討伐証明部位を教えてくれた、親切な方だ。
どうやら、ゴブリンの討伐証明は右耳らしい。
それに礼を言って別れる。
因みに数えていなくても冒険者ギルドのカードには討伐数を記録する機能があるらしい。
持っていないから無効かと思ったら、ちゃんと数を数えて記載してくれるそうだ、メニューに載っていた。
この辺の情報も偽情報のスキルで2000くらいに変えておこう。
じゃないと怪しまれるからね。
道の途中で立て看板を見つけた。
どうやら街まで――セイル市というらしい――はおおよそ2日の距離らしい。
まだまだ掛かりそうです。