現生死神ネクロス 1話
かつて、イフリナ大陸と呼ばれる大陸があった。
機械と資源と魔術にあふれ、世界のどこよりも発達した国であった。
その過程でいくつもの戦争が起き、数え切れぬ人々が死んでいった。
しかし、戦争で人がほろぶことはまずありえない。
魔術には禁忌がある、それは人を蘇らす禁忌の呪文「ネクロマンシー」。
時の誰かが発明したか全くわからない、伝説の秘術「ネクロマンシー」に人々は求め始めた。
死者も生物もすべての価値観が狂い始め、いつしか人類は滅びに向かった
今は無人のイフリナ大陸、ただ一人の生き残りを除いて……
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取調室風の部屋の中で二人の男が椅子に座って睨み合っていた。LED電球は上についてるのに何故か暗い。
部屋の平方は3平方メートルのちょうど正方形ぐらい、そのなかに1平方mの4つ脚のスチール机がある。
机の上には、コーヒーと丼一杯のおしるこが置いてあった。
片方は初老をすぎたスーツの男、角刈りの典型的な日本人である。
片方は上下ジャージに身を潜めた20代初頭の中東人風黒髪の青年だ。見方によっては西洋人や日本人にも見える、不思議な魅力を放っている。
男はコーヒーを一口飲み、コーヒーをちょうど首ぐらいの位置に固定したまま「そろそろ動いてくれないか」とつぶやく。
初老の男は青年に見つめている、しかし青年は全く動じない。
初老の男はさらに声をかけた。
「ドーラス・ドミナスさん……いや、茨城県17歳の根倉大輔君」
「……、……」
青年は答えない、取り調べではないようだ。
だが初老の男の雰囲気は普通ではない、青年はただひたすらに初老の男を見つめている。
「君は発掘された直後は……いや、発掘じゃ人権上の言葉じゃない、遺跡で発見された現地人かな」
「……、……」
青年は全く動じ無し、青年は初老の男の顔を見ている。
「発見された直後に餡子餅の味にえらい感動したらしいけどね、お汁粉は食べていいよ」
「食べたら、それを脅しに使う気かね」
青年はようやく答えた、やけに明るい声だ。
「それは私のおごりだよ、法律上は買収行為は禁止されてるし、これは取り調べじゃない、君のこれからの行動についてきいてるのだ」
「……前に話したはずだ。山城学園に通う予定ですと」
「ほかにないのかね、特別防衛隊に入るとか」
「……興味がないですね」
青年は淡々と語る。
初老の男は、少し参っていた。
この青年とはあまり会話を支度はないからだ。
……いや、青年ではない、確実に自分よりも年上だからだ。
「君に適当なことをされると困るんだよ、日本はね」
「……興味がない」
「そこんところをどうにかしてくれないとねぇ……」
「……。」
初老の男は参っていた。
本当のことを言うと、この青年とはかかわりたくはない。
下手なことを言って自分が攻撃されるかもしれない。
そうなれば自分に命はない。確実に。
情報が正しいなら、危険な戦闘能力を持っているとのことだ。
武器こそは持ってないが、彼自身が最強といわれる特殊能力を持っている。
この男は手刀ですら人を殺せるのだろう。
全く持って何をしてくるかわからない。
「話は終わったか」ともう一人の中年風の男が入ってくる。
初老の男は首を横に振った。
「やれやれ」と中年風の男は呆れ顔をする。
「私はそろそろ退出したいのだが」
「……もういいよ、とりあえず大人しくしてほしいな」
青年は立ち上がり、部屋の扉を開けて退出した。
初老の男は青年の後姿を見ながら思ったものだ。
必ず一悶着起こすぞと……
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ある山の奥に、一つの学園が存在した。
そこは山城学園がある、今どきでは珍しい学園だ。
なぜならこの世界には魔法が当たり前のごとく存在するからだ。
火を出したり、物を持ち上げたりなどいろいろなものだ。
この世界のすべての人間が大小なりに魔力を持ち合わせている。
こんな世界において、魔法を義務化しない学園は珍しいのだ。
山城学園は小型のお嬢様やお坊ちゃま学園とも言われている。
「遅刻遅刻~」
当たり前のセリフを言いながら、一人の少女が山城学園に向かって走り続けている。
速度はあまり早くない、時速は5kmもでてないくらいだろう。
少し赤みがかかった髪に、地元で二千円程度で買えそうな安そうなバッグだ。
言うまでもなく制服である。
それからしばらく走り続けていると、曲り道にたどり着く。
曲り道である以上その先は四角である、少女はそこに人がいることに気づかずぶつかった。
少女を人にぶつかって後ろに崩れる、ぶつけられたは全くびくともしない。
「すみません」
少女は立ち上がり、ぶつかった人の顔を見る。
山城学園の制服を着た青年だ、いくらか年を取ってるようには見える。
中東風の男だけど、日本人や西欧人のようにも見える不思議な男だ。
だが、この青年の特徴は無表情で、少女を見続けている。
少女は少し不気味に思い、少し頭を下げてからその場を走りながら立ち去って行った。
(あんな人いたっけ?)
少女は自分の教室についた、いうまでもなく自分以外がいる状態だ。
男と女を合わせて数は自分を含めて41人、全員の名前も憶えている。
教室に入って少女は違和感を感じた。
机は横に6個、縦に7個並び、一番左下がかけているはずである。
しかし、机が一つ増えて、42個が綺麗にならんでいる。
5分もすると先生が入ってきたホームルームが始まった。
先制の名前は但馬先生である、普通に国語の授業ができる程度としかわからない。
「はーい、今日は転校生のお知らせをします、入ってください」
クラスに一人の男が入ってきた。
(あ……あの人は)
少女は思った、それは通学路でぶつかった青年であった。
「自己紹介をお願い」
「根倉大輔です、みなさんよろしくお願いします」
その青年は実に冷たい瞳をみていた、まるですべてを見透かすような瞳を……。