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純粋な愛は人を狂わせる-Ⅴ
§-§-§
-チリンチリン
「ただいま~」
「おや?ロロ、早いお帰りだね。」
「そうかな?結構、ウロウロして、店の店主や子供からご飯とか貰ったぞ」
「おやおや、随分と可愛がられてるようだね。」
楓は、クスクスと笑った。
「笑うな!」
「ごめんごめん」
そう言って、楓はロロの頭を撫でた。
「そういや、さっき、茶屋で美人な女の人に会ったぞ」
「そうなのかい?」
「うん。えーと、何だったかな。あ、そうそう、嬉しそうに頭に挿してる簪を触ってたよ」
「へぇ」
「でも、あの簪、な~んか最近よく見かけるんだよねぇ」
「と、いうと?」
そう言って、楓は立ち上がり棚からカップを取り出すと、温かい紅茶を作り始めた。
「今日歩いた街だけなんだけどさ。歩く度に、女の子が同じ簪を挿してるんだよね~。色は違うけどね。流行ってるのかな?」
「へぇ。それは、面白いね」
楓は、湯気が立っている紅茶のカップを、ゆっくりと口元にやりながら言った。
ロロは、首を傾げて
「何が?」と、言った。
楓は、紅茶を一口飲むと、カップをテーブルの上に置き
「そうそう。近々、お客様が来るよ」
と、言って薄ら笑いをしたのだった。