純粋な愛は人を狂わせる-Ⅳ
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「ねぇ、廉太郎さん、今日は何処に行きますか?」
綾は廉太郎の手を握り歩きながら行った。
「そうだね。あ、そうだ、確か今日は東屋の団子屋が期間限定の商品を出していたよ」
「まぁ、そうなんですか?知らなかったわ。たまに常連さんから頂くのですが、あそこのお団子は美味しくて好きです」
「美味しいよね。僕もあそこのお店は好きなんだ。ただ、たまに行くと並んでるんだよね」
「そんなに人気なお店なんですか?」
「最近になって、人気になりだしたらしいよ。僕の友達情報さ」
そして、廉太郎は綾にウインクした。
綾はクスクスと笑った。
「そのお友達さんは、情報通なのですね」
「あはは、そうだね。結構、色んな情報を教えてもらってるよ。というか、お喋りなんだよね」
「うふふふ」
「あ、着いたね。綾さんは、ここで待ってて」
「はい」
そう言って、廉太郎は店の中に入っていったのだった。
綾は、団子屋の前に並んである椅子に腰かけた。
そして、髪に挿さってある簪に触れた。
(廉太郎さんからの、贈り物…大切にしなきゃ)
そう思い、綾は静かに微笑んだ。
すると、何かが足元にするりと触れた。
「きゃっ」
綾はビックリして、小さな悲鳴をあげた。
そして、自分の足元を見た。
「・・・猫?」
「にゃー」
猫は、返事をするかのように一声鳴いた。
綾は、そっと猫に触れ、背中を優しく撫でた。
猫は、気持ちよさそうにして喉をゴロゴロと鳴らした。
「ふふ、可愛い。あなた、綺麗な毛並みをしているのね。真っ黒で綺麗」
「にゃー」
「それに、目も変わってて綺麗ね。青と黄色の目を持つ猫なんて初めて見たわ」
「にゃー」
「ふふふ。何だか、あなたと会話をしているみたい」
「綾さん、お待たせしてすみません」
綾は後ろから声をかけられたので振り返った。
「廉太郎さん」
「誰かとお話でもされたのですか?」
「そうなの。綺麗な目の猫さんと少しお話を・・・あら?いないわ?」
綾は、きょろきょろと辺りを見た。
「猫は気ままですからね。さ、中に入りましょう」
廉太郎は綾に手を差し伸べた。
「はい」
綾は、そう返事をして差し出された手を握り返し、店の中へと入っていった。