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純粋な愛は人を狂わせる-Ⅲ
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「ふぁ~…今日も相変わらず暇だね~」
机の上にいる黒猫のロロは欠伸をしながら言った。
「そりゃぁ、今はまだ、太陽が出ているからね」
男は、書類を片手に読みながら猫に言った。
「そんなに暇なら、外の世界に出て遊んできたらどうだい?ロロ」
猫は伸びをしながら
「うーん。どうしよ~かなぁ」
と、言った。
そして、机の上から軽やかに飛び降りると、チリンと赤い首輪の鈴が小さく鳴った。
「やっぱり、少し行ってくるよ~」
「気をつけて」
ロロは、あはは、と笑った。
「相変わらず、楓は面白い事を言うね。気をつけるも何も、僕は死んでも死なないのに」
楓も、クスリと小さく笑い
「これは、方便だよ。一応、言わないとね」
「人間って、本当に変だよね。ま、とりあえず、気をつけて行って来るよ」
そう言うとロロは、小さな前足で扉を開け、店の外に出て姿を消したのだった。
一人なった楓は、ロロの姿を見送ると再び書類に目をやった。
「今日はどうやら、久し振りのお客様が来そうだね」
と、一人呟いたのだった。