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純粋な愛は人を狂わせる-Ⅱ
「お、お母さんっ!」
綾は、廉太郎の手から少し離れた。
廉太郎も、苦笑しつつ手を離し
「すみません、お義母さん。」と、謝った。
「仲がよろしいのは良い事ですが、時と場所をお考えなさい」
「……はい」
綾は、シュンとした。
「お義母さん、そんなに綾さんを叱らないでやってくれますか?僕が悪いので」
「はぁ。廉太郎さんも廉太郎さんです。この子を甘やかしては駄目ですよ」
「ははは…」
廉太郎は苦笑した。
「して、綾。」
「あ、はいっ」
「もう、今日はあがっていいわ」
「え、でも…」
「一緒にいたいのでしょ?」
「…お母さん」
「廉太郎さん。この子の事、宜しくお願いしますね」
「は、はいっ」
「お母さん、有り難う」
綾は、そう言って前掛けを外し、廉太郎の手を引いて店を出たのだった。
「綾、遅くならないようにするのよ」
去り際に母から言われ、綾は元気よく「はーいっ」と返事をした。
綾と廉太郎は、お互い目が合いクスクスと笑い合うと、人波の中へと消えたのだった。