転生者の事情(若宮春花の場合)
なんて良識のない…
春花は大きくため息をついた。
よく晴れた早朝。
自宅近くの公園である。
足元には愛犬のマリが、きちんとお座りをして春花の指示を今か今かと待っている。
目の前には、とんでもない美形のイケメンが立っていた。
その足元には、マリと同じボーダーコリーという犬種のイケメンの愛犬が、これまた文句のつけようのないピシッとした姿勢でお座りしている。
このイケメンと春花が出会ったのは昨日だった。
昨日の早朝の犬の散歩で、うっかりリードを離してしまい脱走した(という話の)イケメンの愛犬を春花が捕まえた事で、知り合った間柄だ。
流れで一緒に散歩する事になり、今日も待ち合わせたのだが…
春花は、そのイケメンが恥ずかしそうに差し出した可愛い小箱をうさんくさそうに眺めていた。
「昨日のお詫びとお礼です。受け取っていただけますか?」
そう言われて差し出されたその小箱は、綺麗にラッピングされ、赤いリボンがかかっていた。
上部で薔薇の花型に形作られたリボンの中央に”ピンク色のガラス玉に見えるもの”が、キラキラと光っている。
「これは?」
「クッキーです。本当は自分で作りたかったのですが、みんなに止められて・・・料理長が焼いてくれました。」
料理長がと言われて、なるほどと納得する。
…道理で、良識がないはずだった。
(お金持ちのボンボンなのね?)
この”お返し”は、有り得ない。
春花は、頭を抱えたくなった。
若宮春花25歳。
背が少し高い以外は取り立てて目立たない普通のOLである彼女は…実は転生者だった。
なんと、前世で異世界の帝国の皇帝(♂)だったという記憶を持っている。
そのため、春花は小箱のリボンについている”ピンク色のガラス玉に見えるもの”が、正真正銘の超一級品ピンクダイヤモンドだという事を一目で見破っていた。
(こんな”罠”です感満載のお返しを受け取れるはずがないでしょう?!)
こんなものをうっかり貰ったりしたら、どんな目に遭うかわかったものではなかった。
「すみません。受け取れません。」
その途端イケメンは、ものすごく悲しそうな顔をした。
美形のそんな顔は、破壊力満載で何だかこっちが悪いことをしている気分になる。
「クッキーお好きでしたよね」
その言葉に春花は内心顔をしかめた。
確かに昨日の会話の中で春花は好きな食べ物としてクッキーをあげていた。
まさかこんな展開が待っているとは思わずにうっかり話してしまったのだが…
(うかうかと個人情報を与えてしまうなど…)
自分も、この平和な現世に随分毒されてしまったものだと自嘲してしまう。
前世では絶対するはずのない失態だった。
「でも、そんなに大したことをしたわけではありませんし…」
お礼なんて受け取れませんと春花はやんわりと断る。
ピンクダイヤモンドを理由に断っても良かったが、世間一般のOLは見ただけでそれが本物かどうかを見破ることなど出来ないだろう。
そもそもそんなモノをクッキーの小箱のラッピングに使う発想自体あり得ないことだ!!
しかし、そんな春花の弱腰につけこむように、イケメンは強引に小箱を押し付けてくる。
春花は、困り果てた。
それと同時に、強い疑問が身の内に沸き上がってくる。
一体、自分の何がこんなに気に入って、このイケメンはこんな強引な手段に出てくるのだろうか?
ふと、春花の脳裏に前世の1シーンが思い起こされた。
あれは後宮の正妃の寝室だった。
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1日の執務を終え、正妃の元を訪れた前世の春花、サミュエル・ルダ・ノルガー…ノルガー帝国皇帝は、豪奢なッドの脇のこれまた贅をつくしたサイドテーブルに乗せられた見慣れぬ”置物”に目を止めた。
透明な球体が三つ足の台に乗っているようなどこかユーモラスな感じのするその”置物”は…どこからどう見ても、子供だましの三級品に見えた。
(大量生産の土産物か?)
何故そんな”モノ”が、他ならぬ帝国皇帝正妃の寝室にあるのかはわからないが、ある意味異彩を放つその”置物”を見つめてしまう。
そのサミュエルの様子に気づいた正妃が、控えめな笑みを見せた。
「お目に留まりましたか?…今、巷で人気の”おまじないアイテム”なのです。」
「おまじない!?…」
サミュエルは呆気にとられた。
「ええ。」と正妃はおっとりと微笑む。
何でも”それ”は、侍女の噂話をふと耳にした正妃が、わざわざ出入りの商人に命じて取り寄せた品なのだそうだった。
どんな高価な衣装や宝石も欲しがったことのない正妃が、わざわざ取り寄せたという事実に、まずサミュエルは驚く。
「おまじないとは?」
「この”置物”をベッドの脇に置いて眠ると、自分を一番愛してくれた人と、”来世”で必ず結ばれるのだそうです。」
「………」
それは、随分胡散臭い話だった。
どう考えても眉唾物だろう。
第一、その話が本当だったとしても、”来世”に現れる効果をどうやって今確かめれば良いのだろうか?
(だいたい、自分を一番愛してくれた人とは、どういうことだ?)
自分が一番愛した人と結ばれるのならともかく、愛してくれた人=結ばれたい人かどうかは、はなはだ疑問の残るところだ。
サミュエルがそう言うと、実は…と正妃は事情を話す。
なんと、この”置物”は、対の商品なのだそうで、もう片方の方が、自分が一番愛した人と来世で結ばれるモノだったのだそうだ。
「そちらは、王太子妃がどうしても欲しいと言って…」
商品は1対だけしかなかったことから話し合いの結果、正妃はこちらを買ったのだそうだった。
「それは、また、王太子妃には来世で結ばれたい人がいるということか?」
隣国カルクーラから昨年嫁いできた王太子妃は、美貌の誉も高い母である隣国女王と瓜二つの容姿で、ここノルガーでも崇拝者を山のようにつくっている。
当然、王太子も妃を溺愛しているのだが…来世で結ばれたい相手ということは今世では結ばれていない相手である可能性が高いだろう。
結果として、それは王太子以外の人物だということになる。
「違います。陛下。このおまじないは”男の人”にしか効かないのです。」
慌てて王太子妃を王妃が庇った言葉に、サミュエルは再びポカンとしてしまった。
ということは…
「王太子妃は、王太子の愛を確かめたいのですわ。」
いや、だから、それをどうやって、今確かめるというのだろうか?
女というものは、この時のサミュエルには、なかなか量りがたい対象であった。
しかし…
「では、私の来世は、君とまた結ばれると考えてよいのかな?」
上機嫌でサミュエルはそう言った。
男にしか効かぬその”置物”を正妃がここに置いたということは、正妃は自分こそがサミュエルを一番愛しているのだと主張しているのだと、この時のサミュエルは受け取った。
正妃は静かに微笑んだ。
その笑みを是と、この時のサミュエルは思ったのだが…
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今となって考えてみれば、前世で正妃は決してサミュエルを愛しているとは言わなかった。
自分よりかなり年若く、身分はあったものの平凡な容姿で正妃の座など畏れ多いと渋る彼女を、無理矢理その座につけたのはサミュエルだ。
しかもサミュエル自身、正妃を愛していたわけではなく、叶わぬ愛を抱いた他の女性の面影を彼女に重ねた結果の婚姻だった。
(今思えば最悪の男だったわよね。私。)
春花は心の中でため息をつく。
女に生まれ変わった今では、正妃が自分を愛してくれていたなどという幻想を春花は抱いていない。
ではあの”おまじない”は何だったのだろうか?
ただ単なる自分へのご機嫌とりの1つなのか?
媚びなど一切自分に行わなかった王妃の静かな顔を思いだし、春花は眉をひそめる。
そして、ひょっとしたら、さして理由も思い当たらないのに自分に執着しているように見えるこの男は、前世で自分を一番愛していた存在だとでもいうのだろうか?
(馬鹿な…)
春花は、心の中で自嘲した。
あれは正真正銘の子供騙しの偽物だ。
あんなものを気かけるなど、やっぱり今の自分は女になってしまったのだなと春花は感じる。
そんなことより、今問題なのはこの目の前の小箱をどうするかだった。
少し考え込んだ春花は、一転にこやかな笑みを顔に浮かべてイケメンに対峙した。
「ありがとうございます。いただきます。」
たった今まで渋っていた春花が急に態度を変えたことに、イケメンは一瞬訝しそうな顔をする。
しかし、せっかく春花が受け取ってくれる気になったのだ。このチャンスを逃せるはずがなかった。
イケメンは、少し警戒した様子で小箱を差し出してくる。
春花はそれを嬉しそうに受け取った。
「すごくステキですね。開けてみていいですか?」
そう言うと春花は、イケメンが止める暇も無いほどに素早く小箱の包装を解く!!
「あっ!?」
ピンクダイヤモンド付きのリボンは包み紙と一緒に無造作に春花の手に握られた。
クシャクシャになったそれを気にした風もなく、春花は小箱を開けると中のクッキーを一気にパクリと頬張る。
「美味しい!」
クッキーは、間違いなく美味しかった。
春花の歓声と笑顔を、イケメンは少し呆けたように見つめる。
「あ、いや喜んでもらえればそれで…」
何だか顔を赤らめてイケメンは口ごもった。
そのイケメンの目の前で、春花はものすごくわざとらしく手にしたリボンに目を落とす。
「このリボンもとっても可愛いですね?」
「あ、その…」
咄嗟にどう反応を返そうか迷うイケメンの隙を着いて、春花はそのままそのリボンを…イケメンの足元にいい子でお座りしているイケメンの愛犬リオンの首にサッと結びつけた!!
「あっ!!」
「キャアッ!!やっぱり、ものすごく可愛い!!」
主の認めた人間に対しては、決して牙などむくはずもない賢い犬は、春花の行為を大人しく受け入れる。
尻尾までパタパタとゆらせて見せた。
リオンの首に、赤いリボンとその中心に鎮座するピンクダイヤモンドが燦然と輝く!!
イケメンは、顔を小さくしかめた。
「確かに可愛いですがリオンはオスです。マリの方が似合うと思いますよ。」
そう言ってリボンを外そうとするイケメンを春花はやんわりと止める。
「マリはそういったリボンをつけるのを嫌がるんです。」
モチロン、大嘘だった。
リオン同様賢いマリはリボンだろうとバンダナだろうと大人しくつけてくれる。
だがそれをバカ正直に告げる必要はなかった。
イケメンは、今度ははっきりと顔をしかめる。
春花も今更表情を繕ったりはしなかった。
「ごちそうさまでした。クッキー確かにいただきますね。」
ふふんと笑うと、クッキーの箱だけを抱えて春花はそのままマリを連れて立ち去ろうとした。
当然もう二度とこのイケメンに会うつもりなど欠片もない。
この公園は、マリの散歩に丁度いいお気に入りのコースだったのだが、明日からは当分近づくまいと決心していた。
その春花の後ろ姿に声がかかる。
「待ってください。…どうやらあなたは一筋縄ではいかない方のようですね。困ったな。」
深いため息とともに吐かれたセリフに、春花もため息を返した。
仕方なく、くるりと振り返る。
「イイ人のふりは止めたんですか?」
「どうにも簡単には騙されてくれないみたいですからね。…残念だな。砂糖菓子のように甘い恋を味あわせてあげようと思っていたのに。」
かぶっていた猫を捨てたイケメンは、ニヤリと笑った。どこか意地悪そうなそんな笑みでも美しいのは、反則だろう。
まっぴらごめんだと思った春花は、露骨に顔をしかめた。
「他を当たってください。それだけおキレイな顔でお金持ちなんだから、誰でも選り取り見取りでしょう?」
わざわざ自分にかまう気がしれないと春花は思う。
そのまま今度こそ本当に立ち去ろうとした春花の前に、イケメンが素早く回り込んだ。
「?!」
「あいにく、他には興味がないんだ。俺は、君しかいらない。」
「!…何を馬鹿なことを。」
冗談は止めて欲しいと春花は思う。
なのに、真摯な顔になったイケメンは熱い瞳で春花を見つめてきた。
当然、その顔は息をのむほどに美しい!
「俺は本気です。本気であなたに一目惚れをしました。…俺は、神永武人といいます。」
(!!)
そういえば、自分と、このイケメンは互いに名前も名乗っていなかったのだなと思いながら、春花はその名前に驚く。
神永といえば、日本どころか世界的に有名な大財閥の一族だ。
目の前のイケメン…いや、神永武人の外見や良識外れの行動を考えれば、彼がその一族の一員であることは間違いないだろうと思われた。
(冗談じゃないわ!!)
前世で皇帝だった春花は、高い地位にはそれ相応の重い責任が付いて回ることを骨身に染みるほど承知している。
せっかく現世では一般市民に生まれついたのだ。また面倒な立場になるなど真っ平ごめんだった。
なのに神永武人は、真剣な上に美しいという厄介この上ないその顔のまま、春花に迫ってくる。
「俺と結婚を前提に、お付き合いしてくれませんか。」
「!?」
何で急に結婚なんて言葉が飛び出してくるのかと春花は思う!
やっぱりこいつは、良識がない!と確信してしまった。
はっきりきっぱりお断りしたい春花だ。
前世で磨き抜かれた春花の危機関知能力の全てが、即時の撤退を叫んでいる。
しかし…
何故、こんなモテそうな男が自分に執着してくるのかと悩む頭の片隅に、あの前世の胡散臭さ満載の”おまじないアイテム”が思い浮かぶ。
もし、万が一にでも、この神永武人が”あれ”の犠牲者なのだとしたら…
(こんな、寵妾がいたか?)
春花は、前世で自分を愛してくれていたのかもしれない側室たちの顔を何人か思い浮かべた。
自分が男から女になったのだから、その反対だってあるはずだと春花は思う。
側室たちは、確かに皆美人揃いだったが、目の前のこの男とは違うような気がした。
何より春花は、自分の周囲の者たちの全てが、皇帝という自分の身分を愛してもサミュエル自身を愛していたとはとても信じられなかった。
自分を真摯に見詰めてくる神永武人の瞳に宿る”熱”を春花は見返す。
こんな風に自分を見た寵妾など少しも思い出せぬのに…どこかその瞳に既視感を覚えた。
確かに春花は、前世で自分を焼き付くさんばかりの強い瞳に見られていた覚えがあった。
その瞳の持ち主を何故か思い出せぬまま…
「お友達からで良ければ…」
気がつけば、春花はそう答えていた。
「ありがとう!!大丈夫、お友達からすぐに”夫”に昇格してみせるから。」
見惚れるほどに美しい笑顔で神永武人はそう言った。
お友達から即”夫”は、いろいろすっとばし過ぎだろう?と春花は思うのだが、出した言葉はなしにはできなかった。
「私は、若宮春花といいます。」
ようやく春花は自分の名前を名乗った。
「春花。」と、ものすごく甘く口にしながら武人は春花を見つめる。
(いきなり、下の名前で、しかも呼び捨てはないでしょう!?)
やっぱりこいつは良識がない!と、春花は断じた。
早くも自分の判断を後悔しはじめた春花だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ノルガー帝国正妃は、深いため息をついた。
つい今しがた王太子妃が機嫌よく出ていった大きく重厚な扉を見つめる。
…王太子妃に渡した例の”おまじないアイテム”は、無事当初の目的を果たしたらしい。
王太子妃からそれの効果を聞いた自分の息子である王太子は、すっかり感激し王太子妃に来世まで続く永遠の愛を誓ったという話だった。
(これで少しは、ヤキモチをおさめてくれると良いのだけれど…)
王妃は、もう一度ため息をつく。
そう、今回こんな子供騙しのアイテムを買ったそもそもの発端は、王太子の自分の妃へのヤキモチにあった。
魅力的で誰からも好かれる王太子妃は、日々宮廷に熱烈な崇拝者を増やしている。
そのため、そのことに機嫌を損ねた王太子が、今にも自分の妃を自分の宮だけに閉じ込めかねない様子を見せたのだった。
なんとかして欲しい!と王太子妃から頼まれた正妃が一計を案じたのが、今回の”おまじないアイテム”大作戦である。
愛する妻から、”生まれ変わっても自分を愛して欲しい”とアピールされて、喜ばない夫などいない。それと同時に寄せられる深い愛情に自信を持った王太子に余裕を持ってもらうのが今回の大きな目的だった。
元来この”おまじないアイテム”自体、そういった男の自尊心をくすぐることを目的としたモノなのだ。
来世の効能うんぬんなど、信じる女性などいないだろう。
しかし…
正妃は、自分の寝台の脇にある片割れの”おまじないアイテム”を視る。
正妃には、特別な”力”があった。
…この世界には、神の加護と呼ばれるさまざまな特別な”力”を持った人間がいた。
その加護は特に王家の人間に出やすく、容姿は平凡でも家柄と血筋だけは一流の正妃も王家の血をわずかながら引いており、加護を持っていた。
誰にも言ったことのない正妃の加護は、”力”あるものの輝きを視る力だった。
おかげで正妃は、やはり正妃同様自らの”力”を隠している皇帝が強い”力”の輝きを持っていることを知っている。もちろんそんな事を誰にも話すような愚かな真似をする正妃ではないが…
その正妃の目には、自分の部屋にある”おまじないアイテム”が、眩いほどの輝きを放っているのが視てとれた。
(これは、”本物”だわ。)
対ではあっても、王太子妃が持って行った方のアイテムには何の輝きも視えなかった。
当然、正妃が、愛する息子である王太子の来世を左右するような危険なモノを王太子妃に渡すはずなどない。王太子妃の本来の目的からすれば、こちらの方が良いと思われたアイテムを自分の手元に残したのは、そんな理由だった。
(それに…)
この”おまじないアイテム”が本来の力を発揮すれば…
(…”あの方”の想いが叶う。)
正妃は、既に思い出の中にしかいない亡くなってしまったその人物を思い出す。
正妃は…その人が好きだった。
叶う事のない想いだったが、幼い時からその人のキレイな”輝き”に憧れ、ずっと視てきていた。
誰よりもその人を視てきた正妃は、それ故にその人がサミュエルに向けていた想いを知っていた。
サミュエルに憧れ、サミュエルを慕い、しかし自分の想いがサミュエルに届くことも、応えてもらえることもないことに絶望して、最後にはサミュエルを殺したいほどに憎んだ”その人”。
あれほどに強い想いをサミュエルに向けた”者”を他に正妃は知らなかった。
正妃の白くほっそりとした手が”おまじないアイテム”に触れる。
正妃以外の者の目には、ただのガラス玉にしか見えないそれを大切に撫でた。
このアイテムの本来の”力”とは、【自分を一番想ってくれた人と、”来世”で必ず結ばれる】というモノだった。
その”力”が発揮されれば、”あの方”はきっと転生し、同じく転生するだろうサミュエルと来世で必ず結ばれるのだ!
うっとりと正妃は目を閉じた。
瞼の裏に”あの方”のキレイな顔が蘇る。
かつて隣国との戦いで悲惨な最期を遂げた当時の第二王子。
サミュエルの異母弟、ジェイクリフト・ルダ・ノルガー。
彼の幸せな来世を、正妃は祈るのであった。
このお話は、作者がムーンライトノベルズで書いている他作品の中の当選プレゼントとして書かれたもので、同じくムーンで以前書いた完結済みの小説の設定を変えて書かれています。やはりムーンで完結済みの別の作品ともつながっています。
そもそもの設定がすっかり変わっていますので、番外編として元の作品に載せるのもしっくりこないため短編での投稿になりました。
これだけでも楽しめる作品を目指したつもりですが、いかがでしたでしょう?よろしければ感想をお寄せください。
コンセプトは、「春ちゃんが最初から前世の記憶を持っていたら…」です。
お気に入りいただけると幸いです。