第3話 似るんだね
私はこの一週間、大阪で写真集の撮影があった。パパも一緒。パパは高校野球の実況で甲子園。私は仕事終わりに、パパが実況中の甲子園に行った。甲子園のことを弘喜くんにメールした。
“今、甲子園。すごい良い所だよ。”
“本当だ。今度行ってみたいな。”
“お土産買ってくるよ。帰ってきたら会えない?”
“良いよ。楽しみにしてる。”
私の方が楽しみ。(笑)
その日の夜、ホテルでパパと一緒になり野球のことを話していた。...はずだったんだけど…。
「お前、好きな人いるだろ?」
「いきなり何?」
「ドンピシャリ。んで、片思い中で告白できずにいる。違う?」
正解。
「だとしてもパパには関係ないでしょ。家訓守ってるし。」
「当然。恋愛はしても良いが、変な男には引っ掛かるなよ。」
「それはパパのため?」
「真子のため。それと半分は原田家のため。」
やっぱりね。
「今、やっぱりとか思わなかった?」
「何でわかるの?」
「俺と考えが同じなんだよ。真子は。」
パパには敵わないな。
仕事から戻り、プライベートで弘喜くんと会うことになった。待ち合わせの20分前に来てた。駅のホームから弘喜くんが来た。
「真子ちゃん、待った?」
「今来た所だよ。」
と言ってお土産を渡した。
「はい。」
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
すごく喜んでいる。この後の予定は決まっていないからデートだろうと思っていたら…。
「俺、帰るね。じゃあ。」
あれ?帰っちゃった…。プルルルル...プルルルル...。電話が鳴った。舞だった。
「もしもし?どうした?」
「今ね、真子をリアルタイムで観察してるの。悪気はないよ。偶然通りかかっただけ。それよりあの男の子って東江弘喜だよね?」
「そうだよ。てかいい加減出てきてよ。」
舞は電話を切って私の所に来た。私の背中越しに見ていたのだ。
「真子さ、彼のこと好きなんだ。」
「うん…。」
「告白したの?」
「まだだけど…。」
「後悔しないように気持ち伝えるべきだよ。何しろモデル同士なんだから大丈夫だよ。」
私は告白に対して躊躇いがあった。モデル仲間としての関係が崩れるのが嫌だから。
舞の後押しもあり、私は次の撮影の時に告白することを決意した。ママが、実はパパが同じ経験をしていることを話してくれた。
「パパってね、意外と不器用なの。小学校の時から好きだった女の子に20歳の時まで告白できずにいてね。」
「………。」
パパもパパで苦労してきたんだ。
「20歳の時に告白して結婚したまでは良かったんだけど、その彼女が自殺してね。」
「何があったの?」
「立場が逆になったの。その彼女が尽くして、パパが尽くされる側になったの。」
「その時ママは何してたの?」
「パパを見守ってた。小学校の時からずっとね。」
なるほど。
「でもパパは、今まで苦労してきたから立場が逆になれたと思ってたの。」
怖いなー。
「自分から行かないと幸せになれないよ。真子。」
「うん。頑張る。」
明日、弘喜くんに思いをすべて伝える。必ず。 続く