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弥生と夢石  作者: Runa
第四話
9/16

弥生と操られた睦月

 次の日

 

 弥生が鼻歌を歌いながら歩いていた。両手には、さきほどスーパーで買い物をしたときのレジ袋がふさがっていた。

 昨日はとても良い一日だった。友達になりたかった人に偶然出会い、見事に友達になることが出来た。こんなうれしいことはない。一日経ったが、そのうれしさが止むことがなく、今日の買い物は踏ん張って多めに買った。普段はそんなに買わないが、今日は特別だ。

 その時、弥生の足取りが止まる。

 そうだ! 友達になったんだから、まず、家に遊びに来てもらうって事できないかな? ちょうど、一人分多めにあるんだし。

 うん。今日は睦月さんを家に呼んでパーティーやろう!

 弥生はそう決めるが早いか、図書館に行き先を変更し向かった。

 

 

 

「いないかな……?」

 辺りをきょろきょろと見渡し睦月を探す弥生。

 二度もここで出会っているから、今日もここで会えると思ったんだけど……。

 そういえば……、昨日睦月さん、ジャージ姿だったなぁ? なんかランニングとかしてたのかな?もしかして、それを私が引き止めて邪魔したとか。そんなわけ…………ないよね?

 その時、後ろで誰かの足音がかすかに耳に入る。

 誰だろうと警戒しながら振り向いた弥生。

「睦月さん!」

 目の前に睦月が立っていた。何も言わずただ弥生をにらみつけている。

 私、また、なにかした……?

 睦月さんを怒らせるようなことしたの?

 内心オドオドとあせっている弥生をよそに、睦月が右手を前に突き出す。

 そして、小言で何かの呪文らしき言葉を唱える。

 唱えたとたん、何本の大きなつららが現れ、弥生に牙を向く。

「えっ!?」

 弥生はびくっと無意識に反応する。

 え? え? 何? 何が起きてるの? どうして、どうして睦月さんが私を?

 挙動不審になりその場に硬直していると、見えない結界がつららを防ぎ守ってくれた。

 た、助かった……?

 一瞬の出来事のため、今の状況についていけてない弥生。

 その時、王女の声。

 

 

『気をつけて! あの人は誰かに操られてる!』

 

 

 え……………………?

 む……つきさんが、あやつられてる?

 王女の言葉に愕然とする弥生。

 

 うそ……だよね? 睦月さんが操られているなんて……。

「うそと言って! 睦月さん!」

 弥生の泣きながら絶叫した声が響いた。

 

 

       *

 

 

「ふふっ。それでいい。それでいいんだよ、睦月」

 シャルロットが隠れた場所で傍観していた。

 その表情はどこか満足げだ。

「やはり、睦月は使い勝手があるな。さすが、別の世界に住む王子だな」

 弥生の夢石を手に入れるにはあの、見えないバリアが邪魔になる。

 そのために、睦月が必要だったからな。あの、見えないバリアを解くのに。

 もっとも、『大切な人』への思いがどれくらいのものか、気にはなるが。

 まぁ、いい。なんにせよ、もうすぐ夢石が手に入る。

 手に入れば、海の世界など……。

「もっとこの俺を楽しませてくれよ……睦月」

 シャルロットは不敵な笑みをこぼし続けた。

 

 

       *

 

 

 弥生はいまだに睦月とにらみ合いを続けていた。

 

 睦月さん……。

 

 私は、どうしたら、どうしたらいいの?

 どうすれば、睦月さんを正気に戻せるの?

 力があるのはうすうす気がついていた。

 でも、その力を使いこなせないと意味がない。

 睦月さんを戻すのに使えそうなのに……。

 弥生はもどかしい気持でいっぱいだった。

 その時。

 

 ズキンッ!

 

 うっ! あ、頭が割れそう……。

 突然、意識が無くなるのを覚えた。

 

 

 

 一人の人魚が辺りを泳いでいく。

 誰だろう? どこかで……。

 ふと誰かがその人魚に声をかける。

「ラリア王女。ごきげんうるわしゅう」

 一人の男が立っていた。

 シャルロットだ。間違いない! あの顔つきはまぎれもなくシャルロットだ!

 でも、なぜシャルロットがここに?

「シャルロット! なぜ、お前がここにいる! お前は本来ならば南の国の住人だろう!」

「あいかわらず、男勝りな王女さまだ」

「何のよう? 私の目の前に現れたということは……」

「そう、ラリア王女の力をもらおうと思ってね」

 シャルロットはにやりと笑った。

 ラリアは急いで結界を張る。

「アクアシールド!」

「そんなことでこの俺に勝てるとでも?」

 その直後、黒の光球ひかりだまを投げつける。

 光球は結界に当たり、火花を散らす。

 だが。

 光球は結界をもろとも破り、ラリアのおなかにぶつかる。

 ラリアはおなかを抱えその場に倒れる。

『ラリア王女!』

 弥生は叫ぶが届かない。

 さらに弥生は気づく。

 ラリアたちからどんどん離れていっている。

 待って! 待って、まだ……………………。

 思わず片手を伸ばす。

 しかし、弥生の思いはむなしく、現実の意識へと返された。

 

 

 今…………のは何?

 弥生が呆然としていると、睦月が後ろを向き歩き始めた。

 そのことに気づき、睦月を引きとめようとする弥生。

「ま、待って! 待って! 睦月さん!」

 睦月は夢のようにどんどん遠ざかっていく。

 そう、夢のように……。

 ここは現実なのか、夢の中かそれすらも分からないくらい、

 とても苦しい。

 どうして、そうなるかは分からないのに、睦月さんが遠ざかるのはわかるんだろう……。

 弥生は睦月が去った後をただただ見詰めるしか出来なかった。

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