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弥生と夢石  作者: Runa
第三話
7/16

弥生とチェリー・ムーン

 弥生の夢の中。

 

 

 こ、ここは……………………?

 

 朦朧もうろうとする意識の中、暗闇の世界を歩き出す。

 何もない、暗闇が続くだけの世界。

 まるで、自分の今の心を表しているようだ。

 

 そのとき、歩いていた足が意思に関係なく止まる。

 どうしたんだろう? 自分の足なのに。

 

 ふと、気がつくと目の前に誰かが立っているのに気づく。

 誰だろう?

 

 青空のような水色の髪が風もなくなびく。

 そして、一人の人魚が優しい顔つきで弥生を見詰める。

 少女が一言。

 

「やっと会えたね」

 

 この声……!

 弥生は少女の声に聞き覚えがあった。

 たびたび弥生に語りかけてくる少女の声と同じなのだ。

 どうやら、あの少女が声の持ち主らしい。

「あなたは一体、誰?」

「私の名前はラリア。あなたが弥生さんね? 私はずっとあなたに会いたかった。こうやって会うことしか、許されないから」

「どうして私のことを……?」

「あなたに伝うべきことがあって」

「伝うべきこと……?」

 ラリアは真剣な眼差しでうなずく。

「そう。ここから本当の勝負が始まる」

「本当の勝負?」

「シャルロットの相棒がやってくるわ」

 ラリアがそうつぶやいたとたん、意識が途切れた。

 

 

 

「う、う……ん」

 弥生は目をこすりながら起き上がる。

 あきたてのため、頭がぼんやりしている。

 夢……? あれは、夢……?

 右手で髪をかきむしる弥生。

 ふと、ある言葉を思い出す。

 

 ――――ここから本当の勝負が始まる。

 

 弥生ははっとする。

 ラリアという少女? 人魚が言っていた。

 ここからだと。ここから本当の勝負が始まると。

 でも、本当の勝負っていったい何? 何が始まるの?

 あの少女の声の主は分かった。けれどあの子が何者なのかまでは分からなかった。

 それに……。

 いや、いまは今私がやるべきことをやらなきゃ。

「図書館に行こう」

 気持を入れ替えると、身支度をはじめた。

 

 

 

 図書館に向かう道。

 弥生は普段どおり、いつもの道を歩いていた。

 そのとき。

 突如、黒い宝玉のようなものが弥生めがけてやってくる。

 弥生は両手をクロスさせるように顔をかばう。

 だが、黒い玉は何かにはじかれ消え飛んでしまった。

「守りは強いのね」

 ちっと舌打ちをする女性の声。

 上の方から聞こえてくる。

 弥生は見上げるとこれまた見たことない女性が宙に浮いていた。

 あのシャルロットといい、今の女性といい、どうして宙に浮くの好きなんだろう。

 思わず首を傾げたくなる弥生。

「あの~……どちら様で?」

 一応名前だけは聞いておこう。

「私? 私の名前はチェリー・ムーン。以後、お見知りおきを」

 上品に頭を下げるチェリー。

 よくあの状態で頭下げられるな~と、弥生は思わず感心してしまう。

「で、私になにか用ですか?」

「用も何もすでに分かっているでしょう? あなたなら」

「えっ?」

 思わぬ言葉につい声に出てしまう弥生。

「まさか、夢……石?」

「そう! わかってるんじゃない!」

 チェリーは天使のような笑みを浮かべると、鬼のような形相に変貌する。

 さきほど、弥生を襲った黒い玉が再び姿を見せる。

 今度は一個ではなく、いくつも姿を現している。

「今度は……………………容赦はしないわ」

 チェリーは低い声で言うと黒い玉が一気に襲い掛かる。

 え、えええぇぇ!?

 そっち!?

 弥生は内心、大慌て。

 その時、ラリアの声が響く。


『弥生! 魔法よ! 魔法を使って!』


 魔法って…………。

 そんなファンタジーみたいなの、出来るわけが……。

 弥生はためらうがもうすぐ目の前に黒い玉が迫ってきている。

 悩んでいる暇はない。

 えぇい! 一か八かだ!

 弥生は両手をクロスさせ、前に突き出す。

 そしてつぶやく。

「光よ! 力に変えよ! アクアボール!」

 空気がしんと静まり返る。

 あれ? どうして?

「やっぱり、何もしらないのね。ラリアと同じで」

 チェリーの言葉を受け、以前睦月言われたことを思い出す。

 ――――お前は自分のことなのに何もしらないんだな。

 何も知らない……。これ以上にこわいものなんてない。

 弥生の手が止まる。

 弥生は我を取り戻す。

 そうだ! 黒い玉が!

 案の定、黒い玉が弥生を攻撃する。

 だが、再び何か邪魔され、次々と消えていく。

 十数秒後、攻撃が止む。

 止まった……?

 弥生はほっと安堵の表情を見せる。

「シャルロットが言ったとおり、力も頭も不足しているのね」

 チェリーの口にシャルロットの名前が出たことに目を丸くする弥生。

「あら。意外そうな顔をしてるわね。そうよ。私はシャルロットに呼ばれやってきた、新しい相棒なの」

 新しい……相棒?

「今日はあなたの力がどんなものか、夢石の力の強さなど、お手並み拝見させてもらったわ。やっぱり、さすが夢石ね。夢石は自分の主人を守る性質がある。それがわかっただけでも上々ってとこかしら」

 チェリーは一息つくようにため息を漏らす。

「今日のところはここまでにしておくわ」

 チェリーは蜃気楼しんきろうのごとく姿を消した。

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