弥生と目覚めたチカラ
弥生は今意識が朦朧としていた。
こ、ここは……。
私は、何をしていたのだろうか……?
あぁ、そうだ。友達と夏休みの宿題をしに図書館へ……。
だめ。意識が………………。
そのときだ。
声が聞こえたのは。
『お願い。助けて』
声だけが耳に入った弥生。ほぼ同時に強力な光とともに、魔力が弥生の体から放たれた。弥生は中に仰向けに浮き、薄い光の膜の球体に覆われいる。
友人は突然の出来事に開いた口がふさがらない。
「や、弥生……? ど、どうしたの…………?」
だが、弥生は眠ったまま反応しない。
な……に…………?
本人は意識が朦朧としているため、今、自分の身に何が起きているかは知るはずも無い。
さらに、体自体が何かに制御されているため動かすことも不可能となっている。
まるで、中から早く出してといっているかのように。
*
海堂町 町の中
ちょうど図書館で騒ぎが起きているころ、町の中でも同じように騒ぎが起こっていた。
「ぎゃあ~~!! た、助けてくれぇ~~!!」
「嫌~~!」
「殺される~~!!」
町の住人が町中を動き回り逃げ惑う。
町の中央では、トドのような図体の大きな魔物が私利欲望を求めて暴れまわっていた。
住人達の悲鳴やわめき声が建物を通して響き渡る。
町の中央の電光掲示板に警告アナウンスが流れていた。
「住人の皆さん。ただいま、謎の生き物が町に襲来しています。ただちに、避難を……」
途中で魔物により、破壊され、画面に大きなヒビが入る。
と、その時、魔物の動きが止まった。
何かを感じたのか、周りを見回し始める。そして、力の根源が図書館の方向にあると分かるとすぐさま飛んで向かった。
*
北の海 ノール・メール
海堂町と同じようにメール・モンストルが未だに暴れ破壊尽くしていた。海中に鳴り響く鳴き声と共に。
海に住む住人たちはメール・モンストルに気づかれぬよう隠れた場所で様子をうかがっている。
「まだ、暴れているみたいだぜ? あいつ」
「ギ、ギルがぁ~! ギルがぁ~!」
「ピーピー、うるせえよ! お前は~っ!」
その時岩陰の向こうから声がしてきた。
「全く、俺がいないとだめなんだな。お前って奴は」
「ギル!」
魚たちは声そろえて言う。
「無事だったんだな!」
「安心したよ……」
「ギ。ギルゥゥゥ~! よかったよ~~!!」
「くっつくな! うっとおしいだろう!」
「よく無事だったな! メール・モンストルがいるというのに」
「時たまに、止まるんだ。あいつ。何かをかんじとるかのように。だからその隙に逃げることが出来たんだよ」
「へー……。すごいね……」
だが、外から再び大きな破壊音が聞こえる。
魚たちはそとをすこし覗くと、さっきよりも数倍以上に暴れまわるメール・モンストルがいた。
「メ、メール・モンストルの奴、さっきよりも強くなってるぜ!?」
「ど、どうしよう……」
「わあああぁぁぁん! ギルゥゥゥ!」
「だからうっとおしいといっただろう! 何回言わせたら気が済むのだ! いや、そんなことよりも、余計逃げづらくなったな」
「あぁ、まだここにいる時間が長くなりそうだぜ」
「うん……」
魚達は心配そうにメール・モンストルに目を凝らした。
*
再び 海堂町の図書館
いつの間にか光の球体が消え、自由の身になっていた弥生。その場に倒れて目を瞑っていた。そこにかすかに窓が割れる音が入る。さらに、数秒後には何かが窓から入ってくる音まで聞こえてくる。
その音で目を覚ました弥生は、ゆっくり目を開ける。
数十分ぶりに光を浴びた目には観たことのない、生き物が暴れ狂う姿が焼きついていた。