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弥生と夢石  作者: Runa
最終話
16/16

弥生と自分の思い

 

 

 

 城の中では突風が巻き起こっていた。部屋一面に台風が巻き起こったように巨大な扇風機になり荒らす。さらにシャルロットが夢石を手に入れたことにより、夢石の力が暴走しつつあった。

「ふははは! これで、世界は俺のものだ! 黒の人魚族の方々よりも先に支配できる! もう、俺様は無敵だ!!」

 シャルロットは高笑いしながら、天高く見上げた。その右手には夢石が握られている。

「さぁて。この夢石の力、ためさせてもらおうかな」

 弥生はその言葉を聞き眉を上げる。

 

 ――やばい! そんなことをしては! 大変なことに!!

 

 まずい。シャルロットは今にでも夢石を使おうと動いている。でも、夢石は使う者の命を削り、削った命を力に変えて増していく。そうなれば、世界を支配するなどという所ではなくなってしまう。

 もしそうなれば、完全に世界の滅亡へと発展するのは時間の問題。

 弥生のほほに一つの汗が滴り落ちる。

 どうしよう……どうしたら、どうしたらいいの? 早くとめなきゃ……。でも、正直言ったら怖い。自分なんかができるのだろうか。人一倍怖がりの自分が……。

 ごくりと生唾なまつばを飲み込んだ。

 ……いや、やらなきゃ。私は睦月さんを助けるために来たんだ。決心してここまで来たんだ。なのに、その自分が弱音を吐いてどうする。最後まであきらめちゃ駄目だ。

 きっと前を見据えるとすばやく立ち上がる。

 あきらめない。 絶対睦月さんを元に戻して一緒に海堂町へ帰るんだ!

 

 

 だが。

 

 

 シャルロットの手中にある夢石が一段と輝きを増した。

 

 シャルロットは夢石を天に掲げ叫んだ。

「さぁ! 夢石よ! この俺にお前の力を見せてもらおう!!」

 その瞬間、夢石は光を放ち力を放出の制限を解き始めた。

 そのことで力の放出度が見る見るうちにあがっていく。

 

 とめなければ!

 

 弥生は止める一心でシャルロットに立ち向かう。

 しかし、夢石の力は球体のごとくシャルロットを包み込むように放っている。そのため、力にね退けられてしまい、うかつに手が出せない。

 

「さぁ! もっともっと見せてくれ。お前の本当の力を!」

 女性に魅了されるかのように夢石をさするシャルロット。

 

 だが、シャルロットは気がついていない。既に、自分の命が少しずつ夢石に吸い取られてるということを……。

 

 睦月さん……。

 

 早く夢石を止めないと睦月が助けられない。でも、夢石の力がシャルロットを包んで手が出せない。でも、このままじゃ……。

 

 

 それでも、睦月さんを助けたい!

 

 睦月さんは、睦月さんは……私の……………………。

 

 だから、

 

 だから、

 

 シャルロットになんか負けたくない!

 

 

「アクアアロー!」

 弥生は水の矢を出現させる。

 

 そして、水の矢を放つ。

 

「いっけぇ!」

 

 水の矢は音を立てる事もなく、小さく泡を立てるように進んでいく。

 

 しかし、水の矢は夢石の力に圧倒されはじけ飛んでしまう。

 

 それでも弥生は矢を放つ手を止めることは無かった。

 

 

 睦月さんは、悔しかったんだ。

 

 シャルロットと手を組むという選択をした自分が。

 

 他に選択肢はあったのにと……。

 

 だから、思わず涙が出ちゃったんだ。

 

 それが、最初にみたあの、涙のワケ。

 

 それでも私、睦月さんが好き。

 

 たとえ、夢石が消えたとしてもそれでいい。

 

 夢石なんかいらない。

 

 私はただ、睦月さんの笑顔が見たいだけなの――……。

 

 

「睦月さん、今私が助けます。だから待っててください」

 そうつぶやくと呪文を唱える。

「アクアシールド!」

 水の弓矢を構える弥生を包み込むように現れる結界。

 

 そして。

 

「アクアアロー!」

 弥生は構えていた矢の手を離す。

 

 水の矢は結界に包み込まれそのままシャルロットに突進する。

 夢石の力を通り抜けシャルロットの心臓あたりに直撃。

 

「うぐぅ! な、な……んだと?」

 正気に戻ったシャルロットは苦しくなりながらも、夢石を強く握る。

 夢石はシャルロットに強く握られたことにより、ヒビがはいり粉々に砕け散ってしまう。

 

 パリーン!

 

 シャルロットがはっと気づいたときには床に夢石の破片だけが残っていた。

「し、しまった……これでは、これでは、今までの計画がすべて無駄に…………。どれほど年月を費やしてこの日を待ったことか……。これでもう、ねが……いは…………」

 シャルロットの身体はスローモーションのようにゆっくりと倒れた。

 

 シャルロットが倒れたことによりシャルロットの城が崩れ始めた。

 

「睦月さん!」

 急いで睦月の元へ駆け寄る弥生。

「睦月さん! 目を覚ましてください! 私です! ラリアです! 昔、あなたにシャルロットから助けられたラリアです!」

 両肩をつかみ睦月をゆする弥生だが睦月は反応しない。

「お願いです! 元に戻ってください! そう、じゃなきゃ何のために生まれ変わったのか……」

 弥生の目に自然と涙が浮かび、弥生の涙は床をぬらす。

 その瞬間、弥生と睦月を覆うかのように光が支配し始める。床は光によって一面を埋め尽くされていく。

 

「こ、これは一体……?」

 

 

「夢石だ。お前の最後の願いを聞き入れたんだろう」

「睦月さん!」

 弥生が睦月の顔を見たときには睦月はいつもの表情に戻っていた。どうやら正気に戻ったらしい。

 

「よかった……ほんとによかった……」


「心配かけて、……悪かったな」

 申し訳なさそうに微笑する睦月。

 弥生は横に首を振る。

「そんなことない……。だって、睦月さんが戻ってきてくれたもの!」

「は、恥ずかしいだろ! そんなこと!」

 顔を真っ赤にして弥生の手を振り払う。

「と、とにかくここは危ない。とにかくここを出るぞ」

「うん!」

 その時、弥生の前に睦月の手が差し出される。

「……ほら。つなぎたかったらつなげ」

「い、いいの……?」

 

 

「………………あぁ」

 小さく深呼吸をして一言。

「お前のこと、……好きだから」

 

 

「…………え? それって……」

「悪いか!」

「い、いいい、いえ! そんなことないです! 別に悪いことなんて一つもありません!」

 慌てて首を振る弥生。

「あ、あの! わ、わた、私も、睦月さんのことが…………好きです!」

 その言葉に一瞬ぽかんと口を開ける睦月の顔が見える。

 

 あ、あれ? 私……、変な事いった……?

 

 

 睦月は可笑しそうに笑うと強引に弥生の手をつかむ。

「ほら! 弥生! 早く行くぞ!」

 満面の笑みが浮かぶ。

 睦月の笑顔に、弥生は笑みをこぼした。

「うん!」

 

 睦月と弥生の二人は海堂町に向かって城を飛び出していった。

 

 

 



 <完>

 あとがきもどき 


 どうも。


 星原ルナです。

 弥生と夢石を読んでくださって誠にありがとうございます。

 やっと書き終わった……。

 短いようで、長かった……。


 弥生と夢石を書こうと思ったキッカケ。

 最初は人魚の生まれ変わりの主人公のマンガを描こうとしたことが始まりでした。

 けど、すぐに断念。中学生ぐらいのころ。

 弥生と夢石はそれを元に書いたものです。

 だから、弥生はラリアの生まれ変わりなんです。

 ネタバレだけど、ネタバレじゃないね。

 それでも、いろいろ物語に穴があったのでちょっと違和感がありながらも、楽しく書かせていただきました。


 なので、改正版を書くつもり。

 ホームページに載せる予定なので、

 よかったら足を運んでいただけたらとおもっています。

 ちなみに、

 改正版は、文字数も多くなりますし、内容も大幅変わってくるだろうと思います。

 そこを配慮して読んでいただきたいです。


 続編について。

 弥生シリーズは全三作品でお送りしようとおもっています。

 なので、次も一応頭の中には入ってますが、まだ構成はできていません。

 もうちょっと先になるかも。

 それでも、がんばって続きを書くので、

 楽しみに待っていただけたらと。

 次の続編のタイトルは決まっています。

 文章が長くなりますが、

『弥生ともう一つの世界』

 です。


 この続編では、

 知りえなかった睦月の秘密やチェリーの家族がわかるようになると思います。



 次の小説、作品で出会えたら……いいですね。

 では。

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