弥生とチェリーの対決
さらに次の日
弥生は再び図書館の外にやってきていた。もちろん、睦月に会うためだ。昨日は失敗したが、今日こそは話し合って元に戻ってもらわないと。睦月さんに対して、何故こんな気持ちになるかは分からないが、これだけは分かる。
睦月さんは私にとって大事な人だということ。
絶対元に戻してみせる。そして、本当のお友達になれたら……。
その時、どこからか聞き覚えのある女性の声が耳に入る。
「元に戻す? そんなことされちゃ困るのよね」
弥生は辺りを見渡し、ある一本の木の上に座る女性の影。
チェリー・ムーンだ。シャルロットの新しい相棒さんが何故ここに? それよりも、今さっきの言葉はどういう意味?
「どういう意味ですか?」
弥生はチェリーにそう問いただす。
チェリーはにやりと笑うと答えた。
「必要なの。夢石を取り出すのに」
夢石を取り出すのに必要? どういうこと?
ますます訳が分からなくなる弥生。
その時弥生の脳裏にあることが思い浮かぶ。
まさか……睦月さんを操っているのはチェリー? さっきだって『そんなことされちゃ困る』って言っていた。ということは睦月さんを操っているのはチェリーに違いない。ううん、絶対そう! 睦月さんを元にもどさなくちゃ。
でも……。
私……魔法の使い方分からない。
弥生は急に不安になる。
その時、ラリアの声が聞こえてきた。
『大丈夫! 私がサポートする。私が言った通りにやって!』
ラリアはさらに優しい声でささやくように言った。
『自分を信じて。自分の大切な人を信じて』
自分を信じる……。
自分の大切な人を信じる……。
弥生は意を決めてチェリーと戦うことにした。
「一つ、言っておくわ」
「何ですか?」
「知らないかも知れないから、一応教えてあげる」
「……?」
弥生は眉間をしわを寄せながら首をかしげる。
そんな弥生を気に留めることはなく、チェリーは話を続けた。
「睦月はね、昔、シャルロットと手を組んだことがあるの」
「…………えっ?」
チェリーの口から思わぬ言葉が出てきたためつい声が出てしまう。
む、睦月さんが…………昔、あのシャルロットと手を組んでいた?
それってどういう……………………。
「やっぱり、知らなかったようね。まぁ、付き合いが浅いから知らなくて当然だけど」
チェリーの口からふぅとため息が漏れるのを耳にする。
「さて、始めましょうか」
チェリーは内心密かにほくそ笑んだ。
「黒球」
チェリーは独り言のようにつぶやく。
弥生は両手をクロスさせ前に出す。
「アクアシールド!」
大量の水がドームのように弥生を覆う。水は黒い球を吸収し、飲み込む。
それを見たチェリーは感心したように口に出す。
「へぇ……。少しは勉強したのね。まぁ、ラリアに手伝ってもらってるだけなんだろうけど」
ふっと鼻で笑うと攻撃を再開する。
やっぱり、私なんかじゃダメなのかな……。
再び不安がよぎる弥生。
魔法を使ったことのないド素人が突然魔法が使えるなんてありえるはずがない。やっぱ、何度も修行とかを積み重ねて使うものであって、突然完璧にできるのはおかしい。今はラリアの力添えがあるからできるのであって、いなかったらただ攻撃をよけるぐらいしかできないだろう。
やっぱ、無茶だったのかも。
ため息をするしかない弥生。
でも……。それじゃ、いつまで経っても睦月さんは助からない。ここで逃げちゃおしまいになっちゃう。睦月さんを助けるためにもここは絶対負けたくない!
「アクアアロー!」
弥生がそう叫ぶと弥生の目の前に水で出来た矢がいくつも姿を見せる。
そして矢はチェリーに向かって飛んでいく。
「黒竜巻!!」
チェリーも叫び、どす黒い色した竜巻が蛇のように水の矢に突進していく。
水の矢は次々と竜巻に飲み込まれ消えていく。
竜巻はそのまま弥生をも飲み込む。
「きゃあ!」
弥生は無意識に両手で顔をかばう。
ど、どうしよう……。
弥生は息苦しくなりながらも耐えることしか出来なかった。