EP 9
ボロ屋敷を一瞬で『最高級リゾート』へ!最強の拠点作り
「騒々しいな。……一体何事だ?」
ギルドの奥から現れたのは、隻眼で白髭を蓄え、歴戦の覇気を纏った筋骨隆々の老人だった。
周囲の冒険者たちが、慌てて背筋を伸ばし道を空ける。この街の冒険者ギルドを束ねるギルドマスターだ。
壁に空いた大穴と、白目を剥いて気絶しているボルグ、そしてカウンターに置かれた『神話級の毛皮』。
ギルドマスターはただならぬ空気を瞬時に察知し、鋭い隻眼で俺を見据えた。
「……坊主。あの馬鹿をぶっ飛ばしたのはお前か?」
「俺からは何もしてない。あっちが先に手を出してきたから、軽くデコピンしただけだ」
「デコピン……だと?」
ギルドマスターは呆れたように息を吐くと、カウンターの毛皮に視線を落とし、その表情を真剣なものへと変えた。
「受付。この毛皮の鑑定結果は?」
「し、神話級です……! ギルマス、これは本物です!」
「……なるほど。どうやらとんでもない化け物が辺境にやってきたようだな」
ギルドマスターは俺に向かって深く頭を下げた。
「部下が失礼をした。俺はこのギルドのマスター、ガルドだ。その毛皮、ギルドの全資金を動員して白金貨100枚……いや、200枚で買い取らせてもらおう。もちろん、冒険者登録も特例として、最初から自由に動けるAランク扱いとさせてもらう」
「白金貨200枚……って、一生遊んで暮らせる額じゃないか?」
「あぁ。国を一つ買えるかもしれんな。……どうだ?」
「助かるよ。交渉成立だ」
面倒なことにならなくてよかった。話のわかるギルマスで助かる。
俺たちは白金貨の詰まった魔法の袋を受け取り、ギルドを後にした。
「ご主人様! 大金持ちですね! お肉、たくさん食べられますか!?」
「あぁ、ルナのお腹がパンパンになるまで食わせてやるよ。でもその前に、まずは寝床の確保だ」
俺たちは不動産屋へ向かい、街の郊外にある広大な屋敷を購入した。
本来なら白金貨でも足りないほどの敷地面積だったが、なんと金貨たったの10枚。理由は単純だ。
「……なるほど。確かにこれは、安いわけだ」
目の前にあるのは、ツタが絡まり、屋根は抜け落ち、壁は崩れかけの『超ド級のボロ屋敷(お化け屋敷)』だった。
不動産屋曰く、「長年放置されていて今にも倒壊しそう」なのだという。
「ご主人様……わたくしは、ご主人様と一緒なら、雨風が凌げなくても一向に構いませんっ!」
ルナが気丈に拳を握って宣言する。健気で可愛い奴め。
だが、心配無用だ。俺の【ステータス編集】は、生き物や装備品だけじゃない。あらゆる『無機物』にも干渉できる。
「ルナ、少し下がっててくれ。――【ステータス編集】、対象『屋敷全体』!」
俺は屋敷全体を視界に収め、巨大なウィンドウを展開した。
そこには、建物のステータスがずらりと並んでいる。
ーーー
【名称】廃墟の屋敷
【耐久度】3/10000(倒壊寸前)
【清潔度】0(腐海)
【快適度】0(地獄)
【防衛力】0
ーーー
「これなら、一つずつ直すより『一括置換』が早いな」
俺は仮想キーボードを操作し、一気に数値を書き換えていく。
カタカタカタ……ターンッ!
【耐久度】3 → MAX(絶対破壊不可)
【清潔度】0 → MAX(完全無菌・自動浄化)
【快適度】0 → MAX(極上の癒やし)
【防衛力】0 → MAX(神級結界)
「決定!」
その瞬間、地響きと共にボロ屋敷がまばゆい光に包まれた。
バキバキバキッ! シュゴォォォォォッ!!
腐っていた木材が新品の高級建材へと変化し、抜け落ちていた屋根が芸術的な瓦へと組み直されていく。
荒れ果てていた庭には美しい芝生が広がり、澄み切った水が湧き出す巨大な噴水(温泉付き)まで出現した。
光が収まった後。
そこにあったのは、王族の別荘すら霞むほどの、超豪華な『最高級リゾート邸宅』だった。
「……えっ? あ、あれ?」
ルナが目を丸くして、パチパチと瞬きを繰り返している。
「よし、完璧だ。最高の風呂もベッドもあるぞ。ここが今日から、俺たちの家だ」
「ご、ご主人様は……本当に、神様だったのですね……っ!!」
ルナは感極まったように俺に抱きつき、尻尾をブンブンと振り回した。
こうして俺は、金と最強の拠点、そして可愛い従者を手に入れた。
ただの雑用係だった俺の、誰にも邪魔されない最高の異世界スローライフが、いよいよ本格的に幕を開ける。




