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EP 8

絡んでくるAランク冒険者を、デコピン(腕力1編集)でワンパン

「……拾った木の棒で、小突いて倒した、だと?」

ギルド内の静寂を破ったのは、低く、地這うような男の声だった。

カウンターの前に立つ俺とルナの後ろから、一人の男がゆっくりと近づいてくる。

全身を高級な漆黒の軽鎧で固め、背中には身の丈ほどもある大剣を背負った、筋骨隆々の男。

その顔には数本の古傷があり、周囲の冒険者たちが怯えたように道を空ける。

「おいおい、あれは……Aランクパーティー『黒き牙』のリーダー、ボルグじゃないか」

「辺境じゃ最強クラスの冒険者だぞ。……あのガキ、目をつけられちまったな」

周囲のヒソヒソ話で、男の正体が知れる。Aランク。勇者パーティーを除けば、この国でも指折りの実力者ということだ。

ボルグは俺の目の前まで来ると、ニヤリと下劣な笑みを浮かべ、カウンターの『神話級の毛皮』と俺を交互に見た。

「坊主。いい嘘を吐くじゃねぇか。死の森のSランク魔獣を、ただの村人が木の棒で? ……ハッ、笑わせるな」

ボルグは俺の肩を、威圧するように強く掴んだ。

「正直に吐け。この毛皮、どこぞの英雄の死体から盗んだんだ? なぁ?」

「盗んでない。自分で倒した」

俺は掴まれた手を冷ややかな目で見返した。

アレスたちに散々舐められてきたからな。この程度の威圧じゃ、眉一つ動かん。

「……チッ、図太いガキだ」

ボルグの手の力が増す。普通の村人なら、これだけで肩の骨が砕けているだろう。

「ご主人様に触れるな、下賤な人間が……ッ!」

俺の後ろで、ルナが殺気を放った。フードの下から金色の瞳が鋭く光り、今にもボルグに飛びかかろうとする。

「ルナ、待て」

俺は片手でルナを制した。

ここでルナが暴れれば、神獣の力がバレかねない。……それに、こいつ程度なら、俺が手を下すまでもない。

「ボルグと言ったか。……あんた、Aランクのくせに、ステータス(実力)は大したことないんだな」

「……あァ? 今、なんつった、ガキ……?」

ボルグの顔が、怒りで真っ赤に染まる。ギルド内の温度が数度下がったかのような、凄まじい殺気がボルグから放たれた。

「死にてぇようだな……! その減らず口、二度と聞けねぇようにしてやる!」

ボルグは掴んでいた俺の肩を突き飛ばし、そのまま拳を振り上げた。Aランクの腕力から放たれる、本気の拳だ。

周囲の冒険者たちが「ああっ!」と悲鳴を上げる。

だが、俺は動かない。

拳が俺の顔面に迫る、その一瞬。

「【ステータス編集ワールド・エディット】」

俺は脳内でウィンドウを展開し、ボルグのステータス画面を呼び出した。

そして、彼の【腕力:450】という数値を――。

カタカタカタ……ターンッ!

【腕力】450 → 1

決定。

『死ねぇぇぇぇッ!!』

ボルグの拳が、俺の鼻先に直撃した。

――コンッ。

「……え?」

間の抜けた音が響いた。

ボルグの拳は、俺の顔を軽く小突いただけだった。

蚊に刺されたほどの衝撃もない。

「な……なんだ? 力が……?」

ボルグは自分の拳を見つめ、困惑した表情を浮かべる。

彼の全身の筋肉はそのままなのに、拳を振るう「腕力」だけが、赤ん坊以下になっているのだ。

「……あんたの全力って、この程度か?」

俺は呆れたようにため息をつくと、ボルグの鼻先に向かって、静かに指を弾いた。

パチンッ!!

「――デコピン」

『ギュビャァァァァァァァァッ!?!?』

デス・ベアを吹き飛ばしたのと同じ、ただのデコピン。

だが、今の俺はレベル50だ。ステータスを編集していなくても、素の腕力は一般人を遥かに凌駕している。

ボルグの巨体はボールのように軽々と吹き飛び、ギルドの壁を突き破って外へと飛んでいった。

そして、ドサァッと地面に落下し、白目を剥いて痙攣したのち、完全に気絶した。

「「「…………は?」」」

ギルド内が、再び静まり返る。

Aランク冒険者が、ただの少年のデコピン一つで、壁を突き破って気絶したのだ。

「……さて。受付嬢さん、登録の続きをお願いできるか?」

俺は平然と振り返り、青ざめて硬直している受付嬢に微笑みかけた。

「あ、あわわわわ……っ、あ、貴方は、一体……!?」

「騒々しいな。……一体何事だ?」

その時。

ギルドの奥から、凄まじい威圧感を纏った一人の老人が現れた。

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