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EP 6

【閑話】無能だったのは誰か。勇者パーティーの崩壊の始まり

「くそおおおおおっ! なんだよこのゴブリン、硬すぎるだろ!!」

死の森の入り口付近。

勇者アレスの情けない叫び声が、薄暗い森に響き渡っていた。

彼の目の前にいるのは、最弱の魔物として知られるゴブリンがたったの三匹。

普段であれば、アレスが剣を一振りするだけで消し飛ぶはずの雑魚中の雑魚だ。

しかし現在、アレスの放った渾身の斬撃は、ゴブリンの持つみすぼらしい錆びた剣によって、ガチンッとあっさり防がれていた。

「痛ぇっ!? なんだこれ、腕が痺れる……っ! それに、体が鉛みたいに重いぞ!?」

アレスは激しい疲労感に襲われ、ぜぇぜぇと肩で息をしている。

後ろで援護するはずの魔術師の女も、ヒステリックに叫んでいた。

「ちょっとアレス! 早く倒してよ! さっきから魔法を撃とうとしてるのに、魔力マナが全然練れないのよ! それに肌はベタベタするし、足は痛いし、もう最悪!」

「俺だって防具が重くて動けねぇんだよ! なんなんだ今日は!?」

戦士の男も、自分の鎧の重さに耐えかねて膝をついている。

「……おいおい、冗談だろ?」

その惨状を呆れたように見ていたのは、リクトの代わりに加入した『上位互換』であるはずの賢者の男だった。

「あんたたち、王国最強の勇者パーティーなんだろ? なんでただのゴブリン三匹に手こずってるんだよ。しかも、森に入ってまだ一時間も経ってないのに、魔力切れに体力切れって……初心者以下のスタミナじゃないか」

「う、うるさい! 今日はたまたま調子が悪いだけだ! それに、このゴブリンが異常に強いんだよ!」

アレスは顔を真っ赤にして反論するが、賢者はため息をついた。

「異常に強い? ただのレベル3のゴブリンだぞ。……もしかしてあんたたち、今までずっと『誰か』に敵を極端に弱体化してもらって、ついでに自分たちの体力や魔力も常に全回復してもらってたんじゃないのか?」

「は……?」

賢者の何気ない言葉に、アレスたちは絶句した。

敵を弱体化させる? 自分たちのステータスを管理する?

そんなことができる神のような存在が、自分たちの身近にいただろうか。

いや、一人だけ、ステータスの数値をいじる『書類整理スキル』を持っていた無能な雑用係が――。

「――な、馬鹿な! あんなただの書記官が、俺たちの戦闘に関与できていたはずがないだろ!!」

アレスが必死に否定したその時だった。

『ギギャアアアッ!』

隙を見せたアレスの足元を、ゴブリンの蹴りが強打した。

「ごぼぁっ!?」

情けない悲鳴を上げ、最強であるはずの勇者が、汚い泥水が溜まった水たまりへと真っ逆さまに倒れ込んだ。

「あ、アレス!? きゃあああっ、こっちに来ないで!」

「くそっ、逃げるぞ! 一時撤退だ!!」

迫り来るゴブリンから逃れるため、魔術師も戦士も、泥まみれになりながら森の出口へと無様に走り出す。

賢者も舌打ちをして、さっさと背を向けてしまった。

「ま、待ってくれ! 俺を置いていくなあああっ!」

顔中を泥だらけにし、涙と鼻水を流しながら、這いつくばって逃げ惑うアレス。

彼らはまだ気づいていない。

自分たちの圧倒的な強さは、すべてリクトの【ステータス編集】によって作られた『ハリボテ』だったということに。

そして、本物の実力は最弱のゴブリンにも劣るという、残酷な現実に。

リクトを失った勇者パーティーの崩壊は、今、静かに、そして確実に取り返しのつかない形で始まっていた。

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