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EP 6

【閑話】勇者アレス、禁忌に触れる(ざまぁ加速)

王都の裏路地にある、ネズミが這い回るような木賃宿。

かつて「王国最強」と謳われた勇者パーティーのリーダー、アレスは、カビの生えた硬いパンを齧りながら、血走った目で虚空を睨みつけていた。

「どうして……どうして俺が、こんな目に……ッ!」

彼の美しい金髪は油と泥で汚れ、特注だった白銀の鎧は売り払われ、今はみすぼらしい革鎧を着ている。

隣のベッドでは、魔術師の女と戦士の男が、空腹と絶望で死んだように眠っていた。

ギルドからの信用は地に落ち、借金取りから逃げ回る日々。もはや彼らは「勇者」ではなく、ただの浮浪者同然だった。

そんな地獄のような日々のトドメとなったのは、昼間に酒場の残飯を漁っていた時に耳にした、ある「噂」だった。

『辺境のアルカディアにいるルーキー、ヤバいらしいぜ。絶世の美女の神獣と、凄腕の美少女錬金術師を従えて、毎日国宝級のアイテムをバカスカ作ってるんだとよ』

『ああ、そのリクトって少年だろ? なんでも、ギルドマスターが王族以上の待遇で屋敷を用意したらしいぜ』

リクト。

その名前を聞いた瞬間、アレスの心の中で、何かが完全に壊れる音がした。

「あいつだ……! あいつが、俺のステータスを全部奪い上がったんだ!!」

アレスはパンを床に叩きつけ、ギリィッと歯ぎしりをした。

無能だと思って追放した雑用係が、神獣と美少女を侍らせ、莫大な富を築いている。

一方の自分は、残飯を漁る日々。

こんな理不尽が許されていいはずがない。俺は選ばれた存在だ。俺が世界の中心(主人公)であるべきなのだ。

「力だ……俺には、あいつをねじ伏せる圧倒的な『力』が必要なんだ……!」

狂気に囚われたアレスの脳裏に、一つの記憶が蘇った。

勇者として王城に招かれた際、国王から聞かされた『禁忌の宝物庫』の存在。

そこには、かつて国を滅ぼしかけた魔王の武器――手にした者に絶対の力を与える代償として、魂を喰らう『呪われた魔剣』が封印されているという。

アレスは狂ったように笑い出すと、眠っている仲間たちを一瞥もせず、夜の王都へと駆け出した。

――数時間後。王城・地下最深部。

「ははっ……! 見つけた、見つけたぞ……!!」

数人の見張りを闇討ちし(もはや勇者のやることではない)、厳重な封印の間をこじ開けたアレスの前に、禍々しい赤黒いオーラを放つ一本の大剣が突き刺さっていた。

『魔剣グラム』。

アレスがその柄に手を伸ばした瞬間、脳内に悍ましい声が響いた。

『――我を手にするか、矮小なる人間よ。我は貴様の魂と理性を喰らい、引き換えに圧倒的な暴力を与えよう』

「くれてやる……! 魂だろうが何だろうが、俺の邪魔をする奴らを皆殺しにできる『力』を寄越せぇぇぇッ!!」

アレスが剣を引き抜いた瞬間。

魔剣から噴き出した赤黒い瘴気が、アレスの全身を包み込んだ。

彼の金髪は毒々しい紫色に染まり、白目は黒く濁り、筋肉が異常に膨張していく。

ーーー

【個体名】アレス(魔剣の傀儡)

【職業】元・勇者 / 狂戦士

【レベル】MAXエラー

【攻撃力】99999(暴走)

【状態異常】理性崩壊、魂の代償(寿命残り3日)

ーーー

常軌を逸した、システムのエラーすら引き起こすほどの異常なステータス。

寿命と理性を引き換えにした、純粋な破壊の化身。

「アハハハハハハハッ!! 力が、力が湧いてくるぞぉっ!!」

魔剣を振り回すと、それだけで地下宝物庫の分厚い城壁が豆腐のように消し飛んだ。

「待っていろよ、リクト……! お前が積み上げたものすべてを、俺のこの剣で粉々にぶち壊してやるからなぁぁぁっ!!」

かつての勇者は、もはやただの化け物へと成り果てた。

彼は城を破壊しながら、リクトのいる辺境の街アルカディアへと、狂気の咆哮を上げながら跳躍した。

以上が第16話となります!

「手を出してはいけない力」に手を出して後戻りできなくなる、典型的な「ざまぁ対象」の末路への第一歩です。寿命まで削って強くなったアレスに対し、我らが主人公がどれほど「理不尽に(涼しい顔で)」絶望を与えるのか。

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