EP 5
最強のシナジー!『錬金術』×『ステータス編集』
「ここが、わたくしの工房です……。汚くて、ごめんなさい」
クロエに案内された店の中は、まさに「爆発の跡」と「研究の残骸」の山だった。
焦げたフラスコ、ひび割れた大釜、そして床には不思議な色をした液体の跡がこびりついている。
「気にしないで。……それよりクロエ、さっきの『失敗作』以外にも、同じようなものはあるか?」
俺の問いに、クロエは自信なさげに棚の奥から一本のポーションを取り出した。
ドロリとしていて、どす黒い紫色をしている。どう見ても飲むと即死しそうな外見だ。
「これは……『万能薬』を作ろうとして失敗したものです。材料は最高級の薬草を使っているはずなのに、なぜか出来上がるのは猛毒よりもひどい液体ばかりで……」
俺は即座に【ステータス編集】を展開し、その液体を解析した。
ーーー
【名称】失敗作(本当は究極の再生薬)
【品質】エラー
【詳細】細胞の再生速度を1万倍にするが、エネルギー消費が激しすぎて被験者は1秒で餓死するため、システム上『即死毒』と判定されている。
ーーー
「……やっぱりだ。クロエ、お前の調合は完璧すぎるんだよ。ただ、この世界の生物のスペックが、お前の作る薬についていけてないだけだ」
「え……? わたくしの、薬が……完璧?」
呆然とするクロエ。
俺はウィンドウを操作し、その「失敗作」のステータスに介入する。
ゼロから「神の薬」を作るには膨大なMPを消費するが、すでに「素材」として究極に近いこれなら、ほんの少し『調整』するだけで済む。
カタカタ……ターンッ!
【詳細】エネルギー消費を99.9%カット。過剰な再生力を「ストック」として保存する機能を追加。
「書き換え完了。……ほら、ルナ。ちょっと飲んでみてくれ」
「はい、ご主人様!」
俺が差し出した(見た目はまだどす黒い)液体を、ルナは迷わず一気に飲み干した。
すると、彼女の全身から眩いばかりの生命力が溢れ出し、毛並みがさらに白銀の輝きを増していく。
「すごい……! 体の芯から力が満ちてきます! 以前負った古傷の違和感まで、完全に消えました!」
「う、嘘……。わたくしの失敗作が、本当に『伝説の霊薬』に……?」
クロエが震える手で空のフラスコを掴んだ。
彼女の目は、驚愕から、次第に希望に満ちた輝きへと変わっていく。
「これだ……。俺が探していたのは、このシナジーだ」
俺は確信した。
世界システムに逆らうには、膨大なコストがかかる。
だが、クロエが「正しすぎる素材」を作り、俺がそれを「世界のルールに適合させる」という工程を踏めば、最小限の力で、世界を根底から覆すアイテムを量産できる。
「クロエ、お前の錬金術は、俺のスキルのための『最後のピース』だ。……俺と一緒に来ないか? お前の才能をバグだと言い放ったこの世界に、二人でやり返してやろう」
「わたくしの……才能が必要……?」
クロエの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
没落し、誰からも否定され、ゴミを作る無能だと蔑まれてきた彼女。
そんな彼女を、初めて「天才」と呼び、必要とした男。
「はい……! はい、喜んで! わたくし、クロエ・フォン・アルトワ、一生あなたについていきます、リクト様!」
【クロエが仲間に加わりました】
【拠点:最高級リゾートに『神級錬金工房』が追加されました】
こうして、俺たちは最強の「生産ライン」を手に入れた。
俺の【編集】と、彼女の【調合】。
この二つが交わる時、もはやこの世界に作れないものは存在しない。
「よし。次は、あの『世界の修正者』を紙屑のように切り裂く武器を、三人で作るとするか」
俺は二人のヒロインを見渡し、不敵に笑った。
勇者たちが泥水をすすりながら借金に震えている間に、俺たちの反逆の準備は、着々と、そして圧倒的な速度で進んでいく。




