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EP 1

無能の烙印と、死の森への置き去り

「リクト。お前、今日でパーティーをクビな」

じめじめとした空気が漂う薄暗い森の入り口で、勇者であるアレスは吐き捨てるように言った。

「え……? クビって……」

突然の宣告に、俺は背負っていたパーティー全員分の巨大な荷物を下ろしながら、呆然と聞き返す。

「言葉通りの意味だ。お前のようなただの『書記官』は、俺たち最強の勇者パーティーにはもう必要ないってことだよ」

アレスは嘲笑うように俺を見下ろした。

その後ろでは、魔術師の女や戦士の男も、まるでゴミを見るかのような冷たい視線を俺に送っている。

俺、リクト(18歳)の役割は、底辺の雑用係だ。

荷物持ち、野営の準備、武器の簡単な手入れ。そして何より、俺のユニークスキル【ステータス編集ワールド・エディット】による『書類の整理』だ。

俺のスキルは、目の前に半透明のウィンドウを出し、そこに表示された文字をいじることができる。

しかし、アレスたちにとっては「ギルドへの報告書を綺麗に清書するための、ただの便利機能」程度の認識でしかなかった。

「でも、これから向かうのは最難関ダンジョン『死の森』だぞ!? 俺がいなきゃ、荷物の管理や周辺の記録はどうするんだよ!」

「あぁ、それなら心配いらない。つい昨日、アイテムボックス持ちで高火力魔法も使える優秀な賢者が仲間に入ることになってね。つまり、お前の『完全な上位互換』だ」

アレスの言葉に、俺は絶句した。

上位互換。その冷酷な響きが、これまで俺が血を吐く思いでやってきた裏方の努力を、すべて否定していく。

「それにここは『死の森』だ。お前みたいなレベル1の無能がついてきても、魔物のエサになって足手まといになるだけだろ? ほら、貸してやってた防具と荷物を置いて、とっとと消えろ」

「待ってくれ! こんな場所で丸腰で放り出されたら、死ぬに決まってるだろ!」

「知るかよ。這いつくばって泥水でもすすりながら、王都まで逃げてみろよ。ま、運が良ければ生き延びられるんじゃねぇの? じゃあな、無能」

俺から最低限の防具すら剥ぎ取ると、アレスたちはゲラゲラと下劣な笑い声を上げながら、森の奥へと進んでいってしまった。

残されたのは、ボロボロの平服を着た俺一人。

「嘘だろ……」

木々の隙間から見える空は、すでに赤黒く染まり始めている。

ここは、凶悪なSランク魔物が跋扈すると言われる『死の森』だ。剣すら持っていないレベル1の俺なんて、最弱のゴブリンにすら殺される。

『グルルルルル……ッ!』

その時。

背後の漆黒の茂みから、地響きのような低い唸り声が聞こえた。

ビクリと肩を震わせて振り返ると、そこには赤く爛々と光る、二つの巨大な双眸。

「あ……あぁ……」

見上げるほどの巨大な熊の魔物が、ヨダレを垂らしながらゆっくりと俺に向かって歩みを進めてくる。

――終わった。俺はここで、誰にも知られずに死ぬんだ。

理不尽な絶望が、俺の全身を氷のように凍りつかせた。

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