第6話:【暴露の果ての、甘い制裁(パニッシュメント)】
「あはは! 見て見て! パパがママを抱きしめて『凪がいなきゃ俺の時間は止まったままだ』って泣きついてる時の音声ログもあるよ!」
「やめろおおお! 消せ! そのログを物理的に消去しろ未来!!」
地下司令室では、時空警察最強の男が、十歳の娘を相手に必死の形相で追いかけっこを繰り広げていた。
しかし、未来は紅い粒子を撒き散らしながら、重力を無視して壁を駆け上がる。
「だーめ! パパのデレっぷりは歴史の重要文化財なんだから! ほらママ、これなんか最高だよ? 『凪、愛し合ってる最中の顔も世界一——』」
「強制シャットダウン!!!」
凪が真っ赤な顔でメインコンソールの全レバーを叩き伏せた。
一瞬、司令室の全ホログラムが消失し、沈黙が訪れる。
「……ふぅ、ふぅ……。未来ちゃん、そのデバイスは、ママが『没収』します」
「えーっ! ケチー! まぁいいや、パパの愛の出力が上がったおかげで私のスーツのチャージは完了したし。私、ちょっと恐竜見てくるね!」
未来は黄金のゲートを開くと、「パパ、ママ、仲良くね!」と言い残して、嵐のように去っていった。
番外編:【ママの逆襲 ―今夜はタイムアップを許さない―】
その夜。
任務を終え、ようやくマンションの自室に戻った駆は、ソファに深く沈み込んでいた。
「……命の危険は何度もあったが、今日ほど死ぬかと思った日はなかったな……」
未来の自分のポエムや、あられもない写真。その記憶が脳内をリピートし、駆は顔を手で覆う。
そこへ、お風呂上がりの凪がやってきた。
いつもならTシャツに短パンのラフな格好なのに、今日の彼女は、どこか艶やかなシルクのナイトウェアを身に纏っている。
「……凪? なんだ、その格好は」
「未来ちゃんが置いていった日記、少しだけ続きを読んじゃったんです」
凪が、駆のすぐ隣に座り、熱を帯びた瞳で彼を見つめる。
その距離、わずか数センチ。
「未来の駆さんは、私の寝顔を撮るのが趣味なほど……私に『欲情』してるみたいですね?」
「い、いや、それは未来の俺であって……」
「言い訳は禁止です。私の写真を勝手にフォルダ分けして楽しんでいる報いです。……覚悟してくださいね?」
凪が駆の胸元に手をかけ、押し倒すように彼をソファに組み伏せた。
オペレーターとしての冷静な顔はどこにもない。そこにあるのは、独占欲を隠さない「女」の顔だった。
「そんなに私の寝顔が好きなら……今夜は寝かせませんよ?」
「な、凪……ッ」
「明日まで『コンマ一秒』の猶予もあげません。……ずっと、私のことだけ見ていて。駆さんの時間を、全部私にください」
凪の柔らかい唇が、駆の耳元で熱く囁く。
駆のデバイスが、かつてないほどの『愛のエネルギー』を検知して、異常なまでの高出力を記録し始めた。
「……。……降参だ。俺の時間は、最初から全部お前のものだよ」
駆は諦めたように笑い、自分を縛り付ける愛しい妻を、力いっぱい抱き寄せた。
時空警察TOKIO。
歴史を守る英雄も、今夜ばかりは「愛」という名の甘い牢獄に囚われるしかなかった。




