第5話:【紅蓮のタイム・パトロール:未来からの超戦士】
「……くそッ! 次から次へと……! 湧き出る害獣どもめ!」
現代、渋谷。スクランブル交差点は、阿鼻叫喚の地獄と化していた。
違法なリープ・ドラッグの過剰摂取により、同時に十体以上の**時間獣**が自然発生したのだ。
**【完全体クロノス】**となった時尾 駆は、漆黒と白銀の装甲を纏い、孤軍奮闘していた。
「『絶対加速』展開! ……一体、二体……ッ!」
駆の動きは、もはや光速を超えていた。
敵が攻撃を認識する前に、その因果核を『時空消滅砲』で撃ち抜く。以前なら一匹倒すのに寿命を削っていた相手を、今の駆はゴミのように処理していく。
『駆さん、ダメです! 敵の増殖速度が、排除速度を上回っています! このままでは渋谷全域が因果の渦に飲み込まれます!』
凪の悲鳴が通信機を裂く。
駆の完全体としての力は強大だが、多勢に無勢。何より、敵が振りまく「腐敗した時間」が、渋谷の街を刻一刻と風化させていく。
「……だったら、俺の全時間を燃やしてでも……!」
駆が、かつての禁忌――『オーバーロード』を起動しようとした、その瞬間だった。
紅き閃光の降臨
渋谷の夜空が、夕焼けのような**「紅蓮」**の色に染まった。
上空一〇〇メートルの虚空に、黄金の時空門が開く。
「――ターゲット確認。……お父さんの初期型ゲートは、やっぱり座標がズレるんだから!」
凛とした、しかしどこか幼さの残る少女の声。
ゲートから飛び出してきたのは、駆の『クロノス』とも、レックスの『白銀』とも違う、燃え盛る炎のような紅いコンバットスーツを纏った戦士だった。
紅い戦士は、重力を無視して垂直に落下。
地面に激突する直前、背中のスラスターから紅蓮の粒子を噴射し、無音で着地した。
「……何だ、あいつは……!? 新型のTOKIOか?」
駆が驚愕に目を見開く。その紅いスーツは、駆の『完全体クロノス』さえ凌駕する、圧倒的な因果律の「厚み」を感じさせた。
コンマ一秒の「粛清」
紅い戦士は、群がる時間獣を一瞥した。
彼女が右腕のデバイスに触れた瞬間、周囲の空間が、紅い数式と幾何学模様に埋め尽くされる。
「――システム・クロノス・ヴァルキリー。……全存在」
一瞬。
本当に、コンマ一秒にも満たない刹那だった。
紅い戦士の姿が掻き消えたかと思うと、十体以上の時間獣の巨体が、同時に内側から「紅い炎」を噴き出して崩壊した。
「な……ッ!?」
駆は言葉を失った。
完全体の自分が、全力を出さなければ倒せなかった複数の敵を、あいつは**「指先一つで、同時に消滅させた」**のだ。
時間獣の死体が青い粒子となって消える中、紅い戦士は駆の方を振り返り、バイザーの奥で少しだけ悪戯っぽく微笑んだ気がした。
「パパのクロノスは、まだ『愛』が足りないんだ。……またね、若い頃のパパ」
「……パパ……?」
紅い戦士はそう言い残すと、黄金のゲートへと飛び込み、瞬時に姿を消した。
静まり返った渋谷の街。
駆は、呆然と空を見上げるしかなかった。
エピローグ:【紅い戦士の正体】
TOKIO地下司令室。
駆と凪は、モニターに映し出された「紅い戦士」の戦闘データを、何度も見返していた。
「……信じられない。凪、あのスーツの出力、俺の何倍だ?」
「測定不能です。駆さんの『完全体』が、プロトタイプに見えるレベルの、次世代オーバーテクノロジー……。それに……」
凪が、紅い戦士のバイオサインの解析結果を表示する。
彼女の指が、震えていた。
「バイオサインの整合性、駆さんと……私の……完璧な一致。それに、彼女が持っているデバイスのシリアルナンバー……」
凪が、自身の左手薬指の指輪を強く握りしめた。
「……駆さん。……あの子、もしかして、未来の……」
「……俺とお前の、娘……?」
二人の声が重なる。
漆黒の英雄を凌駕する、紅蓮の超戦士。
その正体は、二人が愛し合った末に生まれた、最強の遺伝子を受け継ぐ娘――**時尾 未来**であった。




