第4話:【時空警察の朝は、一秒前からはじまる】
記憶と身体、そして最愛の妻との絆を取り戻した駆。しかし、完全体となった『クロノス』の力はあまりに強大で、二人の新婚(?)生活は、時空を股にかけた前代未聞のドタバタ劇へと突入します。
【時空警察の朝は、一秒前からはじまる】
新宿の高層マンションの一室。朝日が差し込むリビングに、香ばしい味噌汁の匂いが漂う。
時尾 駆は、食卓に並んだ朝食を前に、感慨深げに呟いた。
「……美味い。凪、この味だ。俺が忘れてたのは」
「もう、大げさですよ駆さん。昨日も同じこと言いました」
エプロン姿の凪が、呆れ顔で笑う。かつての悲痛な涙はどこへやら、今の彼女の薬指には、隠す必要のない銀の指輪が誇らしげに光っていた。
だが、平和な日常は長くは続かない。
『緊急入電! 渋谷スクランブル交差点にて、時間獣の反応あり!』
リビングに響くアラート。凪の表情が一変し、空中にホログラム・ディスプレイが展開される。
「駆さん、朝食の途中ですが出動です! ターゲットは……江戸時代の小判を現代で換金しようとした歴史改変者!」
「チッ、せっかくの朝飯が。……凪、三分で終わらせる。味噌汁、冷ましておいてくれ」
「了解です。――時空門、オープン!」
【新生・クロノスのチート性能】
駆が左腕のデバイスを叩くと、以前とは比較にならないほど滑らかに、そして禍々しいほど美しく、漆黒と白銀が混ざり合った**『完全体クロノス』**が装着される。
一瞬で渋谷へ転送された駆の前には、巨大な時計の触手を持つ時間獣が暴れていた。
以前なら寿命を削り、死力を尽くした相手。だが――。
「……遅いな。止まって見えるぜ」
レックスの力を統合した駆には、**「未来の確定」**が見えていた。
敵が攻撃を繰り出す前に、その腕を掴み、時空手錠を叩き込む。
「確保。……所要時間、二秒だ」
【波乱万丈な「夫婦」の日常】
任務を終え、再びリビングに転送された駆。
だが、そこには仁王立ちで怒る凪の姿があった。
「駆さん! 何やってるんですか!」
「え? ちゃんと二秒で捕まえただろ?」
「早すぎます! 現場に残った因果律の残滓を処理する私の身にもなってください! おかげでこっちは事務処理が三日分も溜まったんですよ!」
「……すまん。次は五秒くらいかける」
「そういう問題じゃありません! あと、戦闘の衝撃で、江戸時代の小判が私のデスクに転送されてきました。これ、どうすんですか!」
完全体となったことで、駆の意図しない「時空の揺らぎ」が凪の周囲にまで影響を及ぼし始めていた。
仕事中は厳格なオペレーター、家では口うるさい(けど可愛い)妻。
駆にとっては、失った記憶よりもずっと刺激的な毎日が始まったのだ。




