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第12話:【時空警察への反逆 ―俺のルールは、家族の笑顔だ―】


司令部の断罪、そしてパパの爆発

 現代への帰還直後、TOKIO最深部の審問会議室。

 無機質なホログラムとして現れたTOKIO上層部「時の賢者」たちが、冷酷な宣告を下した。

「時尾 駆。同一時間軸に二人の『凪』が存在することは、因果律の致命的なバグである。異分子である『大人の凪』を即刻、虚無の彼方へ消去デリートせよ」

 その言葉が終わる前に、会議室の重力場が歪んだ。

 駆の全身から、かつてないほどの黄金と漆黒の粒子が噴き出す。

「……消去だと? 誰に向かって言ってる」

「これは組織の決定だ、駆。パラドックスは世界を滅ぼす」

「世界が滅びても、俺の妻(家族)は一人も欠けさせねえッ!!」

 駆が拳を床に叩きつけると、因果律保護用の防壁がガラスのように砕け散った。

 【完全体クロノス・バーストモード】。

 組織が誇る最強の守護者が、組織そのものを敵に回した瞬間だった。

「邪魔する奴は、長官だろうが神だろうが、コンマ一秒でブチのめす。……凪、子供たちを連れて家に帰ってろ。――ここは、パパが『掃除』してやる」

 駆は一人で、TOKIOの精鋭部隊をなぎ倒しながら、長官室へと突き進む。

 その圧倒的な強さに、組織は「ルール」を書き換える以外の選択肢を失うこととなった。

「ダブル凪」の波乱の共同生活

 結局、駆の「物理的な説得」により、特例中の特例として大人凪の生存が認められた。

 しかし、本当の地獄(天国)は、自宅マンションに戻ってから始まった。

「……駆さん。お帰りなさい。あっちの私も、お風呂に入って待ってますよ?」

 若き日の凪(若凪)が、少しだけ挑発的な笑みで出迎える。

 その後ろから、二十年の経験を積み、色香と包容力が増した大人凪(大人凪)が、しっとりとした着物姿で現れた。

「駆さん……あんなに無茶をして。さあ、こちらへ。私がそのお疲れの腰を、じっくりと解してあげますから」

「……あ、ああ。いや、二人とも、そんなに詰め寄らなくても……」

 左右から二人の凪に腕を絡められ、駆の鼻腔を「同じ、でも少し違う」甘い香りがくすぐる。

 若凪の「初々しい猛攻」と、大人凪の「熟練の包囲網」。

「駆さん、未来の私が『腰痛に効く』って言ってたマッサージ、私もマスターしたんです。さあ、ベッドへ」

「あら、私の方が本場(?)ですよ。さあ、駆さん、どちらからに……いえ、三人一緒でもいいのですよ?」

「……。……助けてくれ、未来、零時、ミライ……!!」

パパの財布と腰、最大級のピンチ

 翌朝、駆の目に飛び込んできたのは、見たこともない額のネットショッピングの請求書だった。

「な、なんだこれは!? 『美肌用超次元美容液・三セット』に『全時代共通・高級食材詰め合わせ』……!!」

「だって、ママが二人いるんだもん。食費も美容代も二倍だよね、パパ!」

「……ふん。パパ、残業代で稼げばいいだろ。俺たちの教育費もかかるんだ」

 未来と零時、そしてすっかり打ち解けたミライが、朝食のトーストを頬張りながら無慈悲に宣告する。

「駆さん、私たちはこれから『ダブル凪・エステ』に行ってきますから、お夕飯の準備、よろしくお願いしますね?」

「ふふ、駆さん。今夜も……期待してますよ?」

 二人の妻から同時に頬にキスをされ、駆のデバイスの「愛のエネルギー」は振り切れ、腰の悲鳴は限界を超えた。

「……。……歴史を守るより、この家を守る方が……一億倍大変だぜ……」

 最強の時空警察官。

 彼は今、二人の愛する妻と、三人の最強の子供たちという、世界で一番幸せで、世界で一番恐ろしい「因果律」の中にいた。

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