第8話:【双輪の時空(クロノス):希望と絶望のクロスロード】
第8話:【双輪の時空:希望と絶望のクロスロード】
渋谷上空:紅と黒のヴァルキリー・アクセル
……幸せそうね。見ているだけで反吐が出るわ」
ダーク・ミライが放った【因果の暴露】は、司令室のモニターを凪の疑念で埋め尽くした。
駆の腰の痛みと心の動揺が、『完全体クロノス』の出力を不安定にさせる。
「駆さん……。私を……本当に道具として……?」
「凪! 騙されるな! そいつは俺たちの絆を壊そうとしてるんだ!」
「アハハ! いい顔ね、お父さん。……愛なんて、一瞬のバグで消えるゴミよ。それを証明するために、私はこの時代のあなたたちを殺しに来たの」
ダーク・ミライが、黒いエネルギーを右手に集め、凪に向けて放とうとした。
「――お姉ちゃん(?)を止めるのは私! パパとママの愛は、私が守るんだから!」
紅い未来が、燃え盛る炎のような紅蓮の閃光となって、ダーク・ミライの前に立ちはだかった。
「……鬱陶しいわね、もう一人の私。……愛なんていう幻に縋って、滅びればいいのに」
「幻じゃない! 現実に、ここにパパとママがいるもん! 私は負けない!」
二人の少女は、同時に渋谷の上空へと飛び立った。
【紅(希望)】と【黒(絶望)】の、超高速戦闘が幕を開ける。
「ハアアアアッ!」
「無駄よ、私」
紅い未来が放つ【ヴァルキリー・ストライク】を、ダーク・ミライはコンマ一秒の未来視で完璧に回避。
逆に、黒いエネルギーの刃で紅いスーツを切り裂く。
「あぐッ……!」
『未来ちゃん! スーツの損傷率、四十パーセント! これ以上は……!』
「凪ママ! 私、大丈夫! パパとママが、仲直りするまで……時間は私が稼ぐ!」
紅い未来は、ボロボロになりながらも、再びダーク・ミライへ向かって突撃していく。
地上:パパの決意、生身の叫び
渋谷の街を見上げながら、駆は唇を噛み切った。
自分のせいで、娘(未来)が傷ついている。自分のせいで、凪が苦しんでいる。
「……凪」
「……」
凪は、コンソールを見つめたまま、動かない。彼女の瞳からは、光が消えかけていた。
「ダーク・ミライが言ったことは、全部嘘だ。……でも、俺が任務を隠してたのは本当だ」
駆は、ゆっくりと歩き出し、凪の前へ立った。
「……どうして……?」
「お前を、巻き込みたくなかったからだ。……時の王との戦いで、お前がどれだけ傷ついたか、俺は知ってる。……完全体になった俺が、またお前を泣かせるのが怖かったんだ」
駆は、左腕のデバイス『完全体クロノス』に触れた。
「……だから、道具として扱ったんじゃない。……世界で一番、大切だから、俺の手の届かないところに、置いておきたかったんだ」
駆は、デバイスを操作し、スーツの装甲を解除した。
漆黒と白銀の鎧が粒子となって消え、生身の駆の姿が露わになる。
「何をするんですか、駆さん!? 敵がいるのに、無防備で……!」
「凪。……俺の愛が嘘かどうか、お前が確かめてくれ」
駆は、凪の疑念をすべて受け止めるように、両手を広げた。
「俺は、お前を愛してる。……歴史なんて、どうでもいい。お前がいなきゃ、俺の時間は止まったままだ。……お前のことが、宇宙で一番、好きだ!!」
その瞬間、渋谷の上空から、ダーク・ミライが放った黒い衝撃波が、地上にいる駆に向けて真っ直ぐに飛んできた。
「駆さん!!」
凪が悲鳴を上げる。
生身の駆に、黒い衝撃波が激突した。
衝撃波は、駆の身体を貫き、背後の地面を粉砕する。
「……あ、が……ッ!!」
駆は血を吐きながら、膝をついた。
だが、彼は、倒れなかった。
「……凪。……俺の……時間は……まだ……動いてるか……?」
駆は、血に染まりながらも、凪を見つめて、笑った。
「駆さん……! あなた、バカ、本当に……バカなんだから……!」
凪の瞳に、光が戻った。
彼女は、コンソールを飛び出し、駆のもとへ駆け寄った。
「謝らないで! 謝るくらいなら、覚えていてくださいよ……! 歴史なんてどうでもいい、私だけを見てって言ったの、忘れないでください!!」
凪は、駆を抱きしめ、彼の胸に顔を埋めた。
『愛のエネルギー指数、測定不能! 完全体クロノス、再起動!』
駆と凪の絆が、かつてないほどの『愛のエネルギー』を生み出し、生身の駆の身体を黄金の光が包み込む。
傷が癒え、新たな装甲が形成されていく。
第参の戦士:蒼き零時
上空では、紅い未来がダーク・ミライの攻撃に、ついに力尽きようとしていた。
「……終わりね。希望なんて、幻に過ぎない」
「パパ……ママ……ごめん……ね……」
紅い未来が、空から落下していく。
ダーク・ミライが、とどめの黒いエネルギー波を放とうとした、その瞬間だった。
「――妹を、泣かせる奴は……俺が、許さない」
渋谷の夜空を、紅蓮とは対照的な、冷徹で美しい**「蒼」**の閃光が切り裂いた。
黄金のゲートよりも、さらに高次の因果律から開いたゲートから、蒼いコンバットスーツを纏った戦士が現れた。
蒼い戦士は、落下する紅い未来を、お姫様抱っこで優雅にキャッチ。
「……あ。零時……お兄ちゃん……?」
「待たせたな、未来。……パパとママの痴話喧嘩を見物してたら、遅くなった」
蒼い戦士は、紅い未来を地上へ降ろすと、ダーク・ミライに向けて蒼い刃を向けた。
「……あんた、誰?」
「俺の名は、零時。……未来の双子の兄。……そして、お前の『绝望』を終わらせに来た、蒼き時空の守護者だ」
蒼い零時は、右腕のデバイス『クロノス・ヴァルキリー・零式』を起動。
紅い未来の「熱い炎」とは違う、すべてを凍らせる「絶対零度の蒼い炎」を放つ。
「ハアアアアッ!」
「な……ッ!?」
ダーク・ミライの未来視さえ、蒼い零時の【絶対零度】は凍らせた。
黒い未来の装甲が、蒼い炎によって砕け散る
家族の絆:希望の未来へ
地上では、黄金の光を纏った駆が、立ち上がっていた。
隣には、同じ光を纏った凪が、彼の腕をぎゅっと掴んでいる。
「零時……あいつも、俺たちの息子……?」
「……駆さん。未来だけじゃなくて、零時まで……。私たち、本当に……幸せな未来を作れるんですね」
駆と凪は、上空で戦う息子(零時)と、地上でボロボロになりながらも笑う娘(未来)を見つめた。
「ああ。……二人で、あの幸せな未来を、守り抜くんだ」
駆は『完全体クロノス』の出力を、凪はオペレーター席の全機能を、家族全員へ繋げた。
「――時空警察TOKIO、時尾家! 全員……緊急出動!!」
漆黒と白銀(駆)、紅(未来)、蒼(零時)。
家族全員の『愛』と『希望』の力が、渋谷の夜空を、永遠に変わることのない、美しい『奇跡の七色』に染め上げた。




