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虹時代 出来損ないの亡霊  作者: 小型旧人
昔話と墓暴き編
9/31

面談

「純也くん、だいぶ慣れたね〜」

「一年生なのにすごぉい」

「やるじゃーん」

「いえ、そんな…」

 廊下では、純也が乗組員部門の二年生に構われながら歩いている。

 皐月の部屋の中にいる双子は、ベッドで寝転がりながらテレビを見ている。

「私らだって一年なのにねぇ、お兄ちゃん」

「なぁ、ずりぃよな」

 暁音と暁斗の愚痴に、窓の外を眺めながら皐月が突っ込む。

「熟練の特異体が言ってもな」

「お前が言うかよ」

 皐月の突っ込みに、暁斗が突っ込む。

 テレビには、またアラスカ沖の様子が映る。どうやら、昼からずっと膠着状態だったらしい。両軍それぞれ、総勢200隻ほどの大艦隊が、洋上の空で数時間睨み合い続けている。

 外はいつの間にか暗くなり、照明なんてものがない海原の空には、白い星の群れと地球軌道上の白銀の環がよく映える。

 星空は夜の暗闇に包まれた真っ黒な海に浮かび、逆さの宇宙がそこに出来上がる。それを遮る白波だけが、ここが海であるということを認識させる。

 艦内に放送が鳴り響く。

「えー、機動歩兵部門二年、三灯皐月君。ちょっと第一艦橋に来てくれ」

 小森の声に、三人は驚く。

「えっ、皐月なんかやらかしたのか。初日からサイテー」

 囃し立てる暁音をよそに、皐月はせかせかと立ち上がり、上着を羽織る。

「わかんないの?」

「いや…何となく察しはつく」

 暁音の質問に、皐月は淡々と答える。

 暁斗が皐月に訊く。

「え、何したんだ?」

「いや、多分艦長たちが俺の履歴書とか経歴とかを読んだんだと思う」

「あぁ…そういうこと」

 暁斗が皐月の察したことと同じことを察する。

 皐月は靴を履き、ドアノブに手をかける。

「じゃ、行ってくる」

「いってらー」

「また後でねー」

 玄関を出、廊下を歩く皐月は、少し奥歯を噛み締めていた。

 第一艦橋には、黒服と帽子の男が窓の外を眺めながら待っていた。その男は後ろを振り向き、皐月に話しかける。

「呼び出してすまないね、皐月くん」

「いえ、暇だったんでいいですよ、艦長」

 小森は、近くにあった窓際の椅子に座る。

「さ、君もここに座って」

「あぁ、はい」

 皐月は小森の用意した椅子に座る。

 小森は皐月の目を見ながら質問する。

「君、戸籍上はあの二人の弟ってことになってるんだな」

「はい。神社の後継ぎの問題で、俺が兄になったら面倒らしいです」

 小森は顎をさする。

「なるほどね、そういうことだったんだ。じゃぁ、もう一個質問」

「…はい」

「君、六年前の釜山のテロの時に脱走した特異体だよね」

 皐月が黙り込む。その様子を見て、小森も少し気まずくなる。

「…別にそれが悪いとかじゃなくて、単に気掛かりなんだ」

「履歴書が六年前からですもんね。それに出生日も釜山テロの日になってますし、そりゃ気づいちゃいますよね、軍関連の人なら。」

 小森が俯く。そしてゆっくりと顔を上げ、口を開く。

「…まぁ、そうだな。それでだ。何で今回、その特異能力を使わなかったんだ?」

「俺の特異性質、知ってるんですか。履歴書にも学生証にも何にも書いてないと思うんですが」

 皐月が驚いたように小森を見る。

「いや、知らない。知らないけど、弱いってことはないだろ?教えてくれてもいいんじゃないか?」

「まぁ、そうですね。破壊と殺害には向いてると思います」

 小森が、小さく息を呑む。

 倒した副長席に腰掛ける青田が、顔に本を乗せたまま、寝たふりをしながら聞き耳を立てる。

「だから、知られたくないんです」

 小森は、俯き加減になって話を聞く。

「知られてしまったら、いつかは人殺しの道具にされてしまうんじゃないかって」

 俯いた小森の顔を、本の隙間から青田が見る。

「だから、教えません」

「…わかった」

 小森は、皐月の顔を見ながら深く頷いた。


 皐月は自室に戻る。

「おっ、おかえり皐月ぃ」

 暁音が部屋の角から顔を覗かせ出迎える。

 暁斗が揶揄(からか)う。

「どんな説教だった?」

「説教ではねぇよ…俺があっちの質問を受け答えするだけだった」

「何だよ、つまんねーの」

 皐月は部屋に入ると、暁音と暁斗のいるベッドの空いたところに落ちる。

「お疲れ皐月。圧迫面接は疲れるね」

 隣に座っている暁音は、労いに揶揄いを混ぜ込む。

「だからただの質疑応答だって」

「それはそうとさ、青田さんイケメンじゃない?声も良くない?良くない?」

 声を昂らせた暁音を、皐月があしらう。

「ああ、あの人ね。さっき俺が艦長と話してる時、ずっと寝たふりしながらこっち見てきてて嫌だったな」

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