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虹時代 出来損ないの亡霊  作者: 小型旧人
昔話と墓暴き編
8/33

戦闘開始

 上空では、すでにウェリントン三型たちによる仮想巡航誘導弾の撃ち合いが始まっていた。

 両者ともその画面上の誘導弾を被弾することなく回避し、両戦闘機編隊の軌跡が交差する。

 同性能の機体による旋回戦が始まろうとしていた。

 海上では、重装甲の橘が甲板状にしゃがみ、右肩に取り付けた狙撃用の大型投射砲を展開し、それを重々しい装甲で包まれた両手で支えながら、小さな虹の点の群れの方向に構える。

「狙撃開始」

 砲の先端のライトが赤く点滅する。

「全敵機動歩兵の虹力子防壁を排除。やっぱ仮想だと反動なくて楽だわ」

 虹の点が一斉にバラバラになる。

「味気は無いけどな」

 皐月が橘に言いながら、背中の安定翼を広げる。他の四人も同じように翼を展開し、暁斗と暁音は翼の形を円筒状に変える。

「いってら。俺はここで狙撃しとく。必要なら呼べよ」

 大型の投射砲を構えたまま通信する。

 虹色の揺らぎを大量に放出しながら、他の機動歩兵部門生たちは加速して、敵部隊に突入して行く。

 彼らもまた虹の点となり、敵部隊の点たちを囲むように広がる。

 一つの点が、青空へ向け急上昇する。

「みんな抑えといてよ」

 暁音が通信を飛ばす。

 敵味方双方の機動歩兵部門生が、一キロほどの距離から、腕の側面に取り付けられた投射砲を使い仮想の撃ち合いをする中、暁音は自身を囲むような円筒翼から勢いよく虹色の揺らぎを噴射し、敵部隊の真上につく。

「行くよ〜」

 暁音は合図とともに、翼を変形させて隼型にする。

 そして全身を下に向け、体の何倍もの大きさの翼を後退させながら急降下して行く。足にかかるほど後退した翼からは、大量に虹色の噴射炎を放つ。一筋の虹が海面に向かい一直線に、ものすごい速さで伸びて行く。

 敵部隊に突っ込む寸前、暁音の体は白い傘状の風に包まれる。暁音のヘルメット内の画面には、赤文字で1215km/hと表示されている。

 敵部隊の中央に、虹色に揺らぐ一筋の線が突如現れる。直後、爆風のような風が彼らを襲う。

 敵部隊の生徒たちは、その風に耐えきれずバランスを崩す。

 伊勢の機動歩兵部門たちは、そこを一斉に突いた。バランスを崩し回避行動を取れなくなった敵に、容赦なく仮想の熱線を浴びせる。

 軽装甲の敵が一人、海面に向け墜落して行く。

 水野はその機動歩兵を打とうとしたが、腕に携えた砲を向けた瞬間、その機動歩兵は安定翼を展開し、スラスターから虹の揺らぎを大量に噴射、急加速して伊勢の方へ向かう。海面スレスレを高速飛行する敵を見ながら、水野は焦った口調で通信する。

「やべっ、逃がしちゃった。ごめん!」

 その声を聞くまでもなく、皐月と暁斗はその敵を追っていた。

 暁斗は一瞬にして敵に追いつき、追い越す。そして急減速する。体を起こし、自身の何倍もの大きさの四枚の翼を広げ、敵の進行方向を塞ぐ。

 敵は寝かせていた体を起こし、安定翼を進行方向に対し垂直に広げ、腰を囲む四つのスラスターを前に向けて強く噴かす。衝突寸前のところでスラスターの噴射方向を下向きに変え、急上昇する。暁斗の翼を回避し視界が開けた時、目に入ったのは目標の伊勢ではなく、こちらに二つの砲口を向けた皐月だった。


「敵部隊の無力化を確認。私達の勝ちです」

 艦長役、雨宮の声に、通信が騒ぎ立つ。

 皐月たちが敵を掃討した頃には、上空でも決着がついていた。

「遥希先輩、私ら何もしてなくないですか?」

 帰投してくる仲間たちを艦橋の窓越しに眺めながら、雨宮が小声で石井に言う。

「まぁ、あいつら何も言わない方が早く終わるからな」

「雑に艦砲射撃でもしといたら良かったかな」

 雨宮の冗談は、思っていたより石井には受けた。

 雨宮たちの横にいた小森が通信を入れる。

「今回の訓練は以上だ。ご苦労。これからも、こういう突然の戦闘訓練は定期的にあるから、心しておくように」

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