質問会
「お帰りー、どんなんだった?」
暁斗の質問に、皐月は受け流すように答えながらソファーに、暁斗の隣に座り込んだ。
「いや、特に何とも」
田畑は屋外で紙タバコを嗜んでいる。
皐月は背凭れに、己が体の質量と惑星の質量の間にかかる万有引力という相互作用の全てをかけた。首の筋肉から力を抜き、目線は天井を仰ぐ。天井を見つめる灰被りの瑠璃は瞼により隠された。
瞼の裏には、焼き付けられた映像が浮かび上がる。
つい先程見た、終盤はもはや解読すらできない日記。自分そっくりの男が話す様子を記録した立体映像。
皐月は瞼の上に右手のひらを被せる。
ゆっくりとため息をつき、独白した。
最近は情報量が多すぎる
奥の廊下から、一人分の足音が近づいてきた。
「おっ、恵真先輩、チッスチッス」
暁斗はソファーに腰掛けたまま皐月の足に手をついて体をせり出させ、余った片手で恵真に手を振った。
恵真もそれに応じて手を振る。
「みんな揃ってるね、どうかしたの?」
暁音が言った。
「いやー、全部皐月が説明するってももちゃん言ってたんだけどねぇ」
「聞いてないんだが」
皐月は目を塞ぎ天を仰いだまま言う。
恵真は暁音の隣に座った。
「ももちゃんが誰かわかんないけど……なんかあったの?」
暁斗はその話題をそのまま皐月に流した。
「だってよ皐月、説明しろって」
「そうは言ってないだろ……」
そう言いつつ皐月は体を起こし目を開いた。
「じゃぁ軽ぅく説明する。暁斗と暁音は凍結卵子で生まれてる、その母体の話だよ」
暁斗と暁音はあからさまに残念そうに言った。
「えぇー」
「結局知らない事何も聞けてねぇじゃねぇかよ」
そんな二人に対し、恵真は驚きを見せた。
「えっ、凍結……え?」
皐月はその驚きを切り捨てるように解説する。
「いや、そんな偶然特異体がぽんぽん出てくる訳ないでしょ。もう隠しても無駄だろうから言っちゃうけど、俺は日帝生まれの人造人間、レイジヤシマの模造品だよ。で、この二人は東京革命の時の機動天使と同じ卵子から生まれたもの。天使の兄妹みたいなもんだよ」
「えー……え?」
恵真は困惑した。
暁斗も困惑した。
「言っちゃうんだそれ」
皐月は暁斗に応える。
「まぁ、もうバレバレってのがこないだわかったからね」
暁音は皐月に同情混じりの声で言った。
「皐月、最近吹っ切れすぎだよ」
皐月は続けた。
「まぁね……で、さっき田畑さんと見たのが、その卵子の母体の話」
「なーる、ほどぉ?」
恵真は首を傾げた。
暁音と暁斗は畳み掛ける。
「何で俺らに教えねぇんだよ」
「ずるいよー皐月ばっかりー」
皐月は一瞬逡巡したのち、答えた。
「あんたらが馬鹿で、言いふらすんじゃって軍が言ってたそうだ」
「は?」
「は?」
暁斗と暁音のその言葉は、凡そ同時に低い声で、怒鳴るとまではいかなくとも、脅迫に近い言い方だった。
恵真が質問する。
「要するに、みんな由緒ある特異体ってこと?」
暁斗は自慢げに答えた。
「そ。俺たちは最強の三灯三兄妹!」
「そこに君が入ってきたんだ」
その時、入口の自動ドアが開閉する音がした。その自動ドアは、田畑に反応したようだった。
ラウンジに入ってきた田畑が言った。
「特異体四人の世話を焼かないといけないんだ、こっちは大変だよ、本当」
それに対し、三灯の三人が同時に言った。
「ご苦労様です」




