帰宅
「帰りましたけども、暁斗ですけども」
荷物をいち早く片付けた暁斗は、ジャンパーに厚手のズボン姿の中年の女の元を訪れた。
神社の傍にある宿泊施設の受付ラウンジで、彼女は自販機と睨み合っていた。
「ああ、暁斗君かい。遅かったじゃないか」
「みんなの中じゃ早い方っすよ……それより、倉庫開いたんでしたっけ。行きましょうよ田畑さん」
急かす暁斗を、田畑は片手で制止した。
「ちょっ……と、タンマ。まず、貴方たちが見て面白いようなのはなかった。まぁちょっと話そうか、皐月君と暁音ちゃん待ってる間に」
「はぁ、はい」
暁斗は渋々、田畑に促されるままラウンジの椅子に座った。
数分間、二人は他愛の無い会話を続けた。
「伊勢」での出来事、佐渡での戦闘、その他諸々。
「皐月も折角頭いいんだから、大学行って学者になってみればいいのにな」
暁斗の言葉に、田畑は半ば同意した。
「まぁそれもそうかもしれないが、あいつもわかってるんだろうさ。学者なんかなったら政府に全て吸い取られるって」
「まぁ……」
受付の奥の通路から二人分の足音と声が聞こえ始めた。
「急に何だろうね」
と、暁音。
「な、ほんと何だろ」
と、皐月。
「ウルセェ!ダマレェ!キェェ!」
突如声を裏返した暁音に、皐月は困惑した。
「は?え、何?」
「ごめん、ちょっとふざけた」
「ちょっと、ねぇ……」
暁音が落ち着いた声で謝罪するのを尻目に、皐月はラウンジのソファーに座る暁斗と田畑を見た。
「あ、どうも田畑さん。お久しぶりです」
田畑が振り向き、皐月たちの方に手を振る。
「久しぶりだね、皐月君。それと暁音ちゃんも」
暁音はパッと顔が明るくなった。
「ももちゃーん!久しぶりー!」
そう叫びながら、暁音は両手を広げて田畑の方に駆け寄る。
咄嗟に田畑は暁音を抱き止めて、暁斗に苦笑いを見せた。それが伝播したかのように、暁斗苦笑いした。
ちゃん付け……やっぱ年上にそれしようとは思わないな。年齢関係ないけども
皐月は脳の内側で呟きつつ、暁斗や田畑たちのいるラウンジの席に向かった。
皐月がソファーに座ると、田畑は説明を始めた。
「まず、あの倉庫が開いた。次に、その倉庫の中身は暁斗、暁音、君たち二人の出生に関する話だ」
「よっしゃ気になるしいこーぜ!」
活気よく立ち上がった暁斗に呼応するように、暁音も量拳を突き上げた。
「行くぞー!」
そんな二人に、田畑は片手を掲げることで制止をする。
「まぁ待て、落ち着いてくれよ……で、君たちに倉庫の中身を見せることはできないんだ。すまないね」
「えー……」
「そんなぁ……」
暁音と暁斗は落胆しつつ、ソファーに腰を落とした。
それとは裏腹に、皐月は田畑に食いついた。
「じゃぁ、俺は見て良いんですか?」
田畑は一瞬天井を見上げた。
「あー……ま、良いんじゃないかな。じゃ、来るかい?」
皐月は即答した。
「はい。行きます」
そんな皐月を、暁斗と暁音は羨む。
「ずりぃぜー、お前ばっかり」
「こないだもそうだったじゃんかー」




