墓暴き
皐月らに見つめられたまま、白衣の男は話を変えた。
「そういや、また別のデータも取れまして。なんで本人認証無しだとデータ秘匿されてたかに関する話なんですよ」
そう言いながら、白衣の男は端末の立体映像をまた弄り始めた。
「警備システムのAIが過敏になってたっぽくってですね。このAI優秀でして、真面目に記録文字起こしして書き残してんすよ。偉いっすね」
皐月達三人は楽しげに語る白衣の男を白い目で見つめていた。
ただ皐月の目には、まだ微かな不安が残っていた。
「あぁ、すみません。つい……ちょっと待って下さいね」
白衣の男は、己の指先を急かし立体映像を弄り続けた。
少し待ったのち、白衣の男は口を開いて。
「出ました。これです。すみません、お待たせしてしまって」
小森が気持ち程度の擁護をした。
「あぁ、いえいえ、別に。どれどれ……」
立体映像は、単調な文章を空中に映し出していた。
「……えーっと、どこですかね?」
青田の質問に、白衣の男は焦って立体映像を指差し答える。
「あぁ、えっと、ここですね。この、八百九十七年一月十四日って書いてあるところです」
「あっ、ここね。すいません」
「いえいえ」
そして三人は、先程のデータと同じように黙々と文字を読み始めた。
――――
897/1/14-0:23:48・警備ログ・侵入者 機動歩兵と思われる人型が六体シェルター内に侵入 全隔壁閉鎖 全データ秘匿
0:25:30・警備ログ・侵入者 人型六体、第三隔壁突破
0:25:45・警備ログ・侵入者 人型六体、第五隔壁突破
0:26:03・警備ログ・侵入者 人型六体、第七隔壁突破
0:26:30・警備ログ・侵入者 人型六体、シェルター墓地へ侵入
0:28:45・警備ログ・侵入者 人型六体、真空遺体保管容器を持ち墓地から出てくる
0:30:21・警備ログ・侵入者 人型六体、真空遺体保管容器を持ちシェルターから逃走
――――
「おそらくこれですね、システムが警戒を解かなかった原因は。だいぶデータ切り抜いてて、本来はもっと大量のログがあります。軽く百倍くらい」
白衣の男の説明を他所に、皐月は呟いた。
「いや……まさかな」
「何か言いました?」
白衣の男が食い気味に訊いてきた為、皐月は困惑しつつ答えた。
「あー、いや……そうだ、その真空の棺みたいなやつ、画像ありますか?」
皐月の脳内に、断片的な記憶が走る。
虹の壁から透けて見えた、上半分が透明の、レモンを縦に切ったような形状の物体。
その大きさが凡そ大人一人程だったのを、皐月はなんとなく覚えていた。
「あぁ、画像ですね。少々お待ちを」
そう言って白衣の男は、再び立体映像を弄り始めた。
表示されていた文字が消え、代わりに大量の文字や映像、画像が表示される。
それら画像や文字などは増えては減ってを繰り返し、最終的にそれらは一つの画像に収束した。
その画像は、上半分が透明の、レモンを縦に切ったような形状の物体の画像だった。その物体の透明な部分から、老いた男の姿が見える。
皐月は小さく苦笑いした。
「画像はこれですね」
「これは……まさか、レイジヤシマか?」
小森の動揺混じりの質問に、白衣の男は淡々と答える。
「そうですね。この容器、真空の名の通り真空容器ではあるんでしょうけど、他にも多少工夫があったんじゃないでしょうか。大体千年ですからね、相当ですよ。でもその墓地には他にそんな容器ありませんでした」
小森は苦笑いしながら言った。
「ここまでレイジと深く関係を持つことになるとはな……まぁ、仕方ないか」
隣から青田が割り入った
「一人だけ、しかも遺体をこんな扱いとは……まるで神みたいな扱いですね」
「まぁ、宗教的な部分はあったんじゃないですかね。なんてったって伝説の英雄ですし」
青田は横目でちらりと小森の表情を伺った。そしてその表情の安定具合に青田は安堵した。
皐月が恐る恐る小森と青田に問う。
「あの、そろそろ帰れます?疲れました」




