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虹時代 出来損ないの亡霊  作者: 小型旧人
昔話と墓暴き編
51/61

墓暴き

 皐月らに見つめられたまま、白衣の男は話を変えた。

「そういや、また別のデータも取れまして。なんで本人認証無しだとデータ秘匿されてたかに関する話なんですよ」

 そう言いながら、白衣の男は端末の立体映像をまた弄り始めた。

「警備システムのAIが過敏になってたっぽくってですね。このAI優秀でして、真面目に記録文字起こしして書き残してんすよ。偉いっすね」

 皐月達三人は楽しげに語る白衣の男を白い目で見つめていた。

 ただ皐月の目には、まだ微かな不安が残っていた。

「あぁ、すみません。つい……ちょっと待って下さいね」

 白衣の男は、己の指先を急かし立体映像を弄り続けた。

 少し待ったのち、白衣の男は口を開いて。

「出ました。これです。すみません、お待たせしてしまって」

 小森が気持ち程度の擁護をした。

「あぁ、いえいえ、別に。どれどれ……」

 立体映像は、単調な文章を空中に映し出していた。

「……えーっと、どこですかね?」

 青田の質問に、白衣の男は焦って立体映像を指差し答える。

「あぁ、えっと、ここですね。この、八百九十七年一月十四日って書いてあるところです」

「あっ、ここね。すいません」

「いえいえ」

 そして三人は、先程のデータと同じように黙々と文字を読み始めた。

 ――――

 897/1/14-0:23:48・警備ログ・侵入者 機動歩兵と思われる人型が六体シェルター内に侵入 全隔壁閉鎖 全データ秘匿

 0:25:30・警備ログ・侵入者 人型六体、第三隔壁突破

 0:25:45・警備ログ・侵入者 人型六体、第五隔壁突破

 0:26:03・警備ログ・侵入者 人型六体、第七隔壁突破

 0:26:30・警備ログ・侵入者 人型六体、シェルター墓地へ侵入

 0:28:45・警備ログ・侵入者 人型六体、真空遺体保管容器を持ち墓地から出てくる

 0:30:21・警備ログ・侵入者 人型六体、真空遺体保管容器を持ちシェルターから逃走

 ――――

「おそらくこれですね、システムが警戒を解かなかった原因は。だいぶデータ切り抜いてて、本来はもっと大量のログがあります。軽く百倍くらい」

 白衣の男の説明を他所に、皐月は呟いた。

「いや……まさかな」

「何か言いました?」

 白衣の男が食い気味に訊いてきた為、皐月は困惑しつつ答えた。

「あー、いや……そうだ、その真空の棺みたいなやつ、画像ありますか?」

 皐月の脳内に、断片的な記憶が走る。

 虹の壁から透けて見えた、上半分が透明の、レモンを縦に切ったような形状の物体。

 その大きさが凡そ大人一人程だったのを、皐月はなんとなく覚えていた。

「あぁ、画像ですね。少々お待ちを」

 そう言って白衣の男は、再び立体映像を弄り始めた。

 表示されていた文字が消え、代わりに大量の文字や映像、画像が表示される。

 それら画像や文字などは増えては減ってを繰り返し、最終的にそれらは一つの画像に収束した。

 その画像は、上半分が透明の、レモンを縦に切ったような形状の物体の画像だった。その物体の透明な部分から、老いた男の姿が見える。

 皐月は小さく苦笑いした。

「画像はこれですね」

「これは……まさか、レイジヤシマか?」

 小森の動揺混じりの質問に、白衣の男は淡々と答える。

「そうですね。この容器、真空の名の通り真空容器ではあるんでしょうけど、他にも多少工夫があったんじゃないでしょうか。大体千年ですからね、相当ですよ。でもその墓地には他にそんな容器ありませんでした」

小森は苦笑いしながら言った。

「ここまでレイジと深く関係を持つことになるとはな……まぁ、仕方ないか」

 隣から青田が割り入った

「一人だけ、しかも遺体をこんな扱いとは……まるで神みたいな扱いですね」

「まぁ、宗教的な部分はあったんじゃないですかね。なんてったって伝説の英雄ですし」

 青田は横目でちらりと小森の表情を伺った。そしてその表情の安定具合に青田は安堵した。

 皐月が恐る恐る小森と青田に問う。

「あの、そろそろ帰れます?疲れました」

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