報告書
――八咫烏軍に関する報告書――
報告者:連邦政府直轄軍事・生体技術研究所一同
大規模な破損のない状態の八咫烏軍の戦闘車及びデバイスやパイロットについて、さまざまな調査を行うことができた。尚、航空機に関しては反物質弾(陽電子)や自爆機能を搭載した無人機であったため、全てが大破しており、これといった情報を得ることはできなかった。
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一、戦闘車について
基本形状は通常の戦車に近い。一人乗り。
動力源は小型核融合炉であり、燃料は重水素とヘリウム3。
推力は核パルスであり、小規模の核融合反応による爆発のエネルギーに指向性を持たせることにより、大きな推進力へと変換させることで高い機動性とある程度の飛行能力を確保している
また、スラスターは大型のものが一つあるだけだが、そのスラスターの方向以外に位置自体も変えることができ、移動方向を変えても速度低下が少ないなどの利点がある。
履帯を四分割して外にせり立たせたような形状の脚部には高性能なホバー機構はついており、これはホバー以外にも吸引による張り付き、ジェット噴射による上昇などさまざまなことに利用できる、脚部の方向が根本を固定して自由に回転する、人間の肩のような関節方式をとっているためさまざまな地形に適応することができる。
攻撃能力は、主砲一門のみ。この主砲は出力調整や連射など、さまざまな使い方が可能である。
発射する弾丸はプラズマと思われていたが、そうではなく、未知の原子で形成された分子の負イオン弾である。限界まで電子を詰め込まれた分子を磁気衝撃波で包み、圧縮。これを投射し、衝突時に運動エネルギーと強烈なクーロン力を目標にぶつけることで破壊力を発揮する。
車体の装甲からは太陽系内の小惑星の含まれるものと同じ成分を微弱に検出。それらを元に未知の元素を合わせ合金化し、その上で通電させることで高い硬度を誇る。
内部デバイス、主にコンピューターにおいては高度な技術が用いられており、小型量子コンピューターがふんだんに使用されていた。
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二、パイロットについて
パイロットは生存していたため、さまざまな尋問や拷問を行ったが、帰ってくるのは訳のわからない言語のみであった。試しに鉛筆と紙を渡してみたところ、彼らはアルファベットで旧世代言語を記した。
「please forgive me」という文字列を書く者が多く、長い文章を書かせてみたところ、それら文章の中には「I」「is」「was」などの、おそらく単語と思われる文字が頻出した。また、それら文章には共通して、「army」「mars」という単語が入っていた。
この文字の意味については未だ調査中であるが、現代でも様々な専門分野で使われる「英語」という言語であるとして言語学班、考古学班は調査中である。
戦闘車パイロットで生存していた九名のうち、六名は男、三名は女である。
全員比較的顔の堀が深く、肌や目、髪色が薄い。
男の内最も若いものから精子を採取、女の内最も若いものから卵子を手術で採取し、その他の者からも血液や毛髪、爪、皮膚、筋肉など様々な組織を採取、それらから遺伝子を検査した。
検査結果、同じ人間ではあるものの、我々とは祖先がどこかで分かれている、我々とは少し違う人間であるという結果が出た。猫でいう色違いの猫のような、微細な差異である。
――――以下、特別に許可された者以外アクセス禁止――――
以下は研究者たちの推論及び要請である
現在、別惑星への進出を目指す人工衛星は必ず、地球から離れると何らかの宇宙空間の物体に破壊されるという法則のようなものがあり、軍艦でさえ単独で行けば撃沈されています。
そして月は我々太平洋連邦が支配しており、何者かによる干渉は一つも許可しておらず、確認もされていません。
そして今回、八咫烏軍の核融合炉を確認するとヘリウム3で動くことが確認されました。
ヘリウム3があるのは主に月面と木星のみであるため、これらは木星から採取していると考えるのが妥当です。
ですが、我々は木星に接近することができません。しかし彼らはそれができている。
どういうことか、彼らの背後には、我々の宇宙進出を止めている存在がいるということです。
そして、重大な事実が判明しました。
「mars」とは「火星」であり、「army」とは「軍」であるのということです。
考古学班と言語学班による翻訳で、優先して翻訳されました。
これらから推測するに八咫烏軍は火星軍であり、火星軍とは我々の宇宙進出を止める存在であるということです。
ですが、それ以上の事実は何も分かりません。修復歴以前の歴史が埋まっているとされる佐渡の地下、レイジ・ヤシマの物語の始まりの地であり墓とされる「歴史遺跡189番」は、未だ最も重要な区画は立ち入れないままです。
真実まであと一歩です。それが分かれば、確実に我々は他国より一歩前に出ることができます。
計画の加速をお願いします。




