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虹時代 出来損ないの亡霊  作者: 小型旧人
昔話と墓暴き編
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出航

出航

「げぇ、開会式とかあんのかよ」

「出航式な」

 不快感を含んだ暁斗の声に、皐月が突っ込む。

「やっぱなんも覚えてないじゃん」

 暁音が半目で兄を見る。

 教員の声が体育館に響く。

「おーい、お前らさっさと並べー」

「じゃ」

 そう言って暁音が急いで列に入る。

 それを見て、後の二人もゆっくり歩きながら列に入った。

 軍戦部の生徒全員が整列を終え、その場で体育座りをする。生徒会役員の女子が、マイク越しに話す。

「これから、諏訪高等学校、出航式を始めます。校長先生、お願いします」



先程の生徒会の女子が再びマイクを取る。

「これより、乗艦を始めます。軍戦部の皆様は、滑走路へお進みください」

 生徒たちは体育館から出て、ぞろぞろと滑走路へ歩いて行く。少し開けたところに出ると、そこからはその艦がよく見えた。生徒たちがざわつき出す。

 長い三角錐状の艦首には、一面ごとに二つづつ小さな、花の蕾のような姿勢制御スラスターが備わっている。

 そこから続く三角柱状の船体には、全体に規則的に散りばめられた小さな姿勢制御スラスターがある。

 三つの小さな艦橋と、大きな板状のレーダーが取り付けられた艦中央部、その後ろに放熱機、艦尾には大きな三つのスラスターと、それを囲む壁が配置されている。

 全ての部分が艦の中心軸を艦の形に沿って囲むような形で配置されており、上下左右の区別ができなくなりそうな外観だ。艦首の下側の面から艦尾までの艦底全体から伸びる着陸脚がなければ全くわからなかっただろう。

 艦底と右舷側の間からスロープが伸びている。艦に入ると、そこには乗組員の若い女性がいた。

「付いてきてください。第一艦橋へ案内します」

 彼女の声に、生徒たちはついて行く。複数のエレベーターと通路を経由し、やっと艦橋に辿り着く。

 艦橋には、艦長と乗組員たちが集まっていた。そこに生徒たちも整列する。

 中年の男が話し始める。

「こんにちは」

 生徒たちも挨拶を返す。それが終わるのを待ち、艦長がまた口を開く。

「多目的重巡洋艦『伊勢』にようこそ。私は艦長の小森だ。よろしく。さて、本艦の事を知っている人はおるかね?」

 はい、と艦艇部門の少年が手を挙げる。

「どうぞ」

 少年が立ち上がり、眼鏡のちょっとしたズレを直す。真面目そうな雰囲気と裏腹に、煌びやかな金髪がよく似合っている。

「はい。連邦が開発した最新鋭の巡洋艦で、軽空母としての機能を持ちつつ、単艦での戦闘能力をできる限り上げた艦です」

 小森がほんの一瞬俯き加減で逡巡し、すぐに答える。

「そうだ、よくわかっているな。名前は?」

「はい。諏訪高校艦艇部門所属の、石井遥希(いしいはるき)です」

 石井は誇らしげに名乗った。それを見て、小森も少し嬉しそうに微笑んだ。

「君のことはよく覚えておこう。座っていいぞ」

「はいっ」

 溌剌とした返事を聞いた後、艦長が思い出したように言う。

「あぁそうだ、全員で自己紹介をするんだったな。みんな自己紹介をしてやってくれ」

 体を少し捻って、後ろにいる乗組員にそう呼びかけると、乗組員たちは「はいっ」と返事をする。

 その中から一人、青年が前に出てくる。

「じゃぁまず俺から、俺は本艦の副長の青田だ。これからお前たちとよく行動を共にすることが増えると思う。よろしく頼む」

 その後、次々と乗組員が自己紹介をして行き、最終的に全員の自己紹介が終わった。

 小森がまた前に出てきて、話し始める。

「えー、では、これで大体の事は終わりかな。巡洋艦合宿とはいえど、職場体験を兼ねた修学旅行みたいなもんだと思ってもらって構わない。気楽に楽しもう」

 そう言うと小森は一瞬俯き、それを青田が軽く睨んだ。

 気を取り直し、青田が口を開く。

「これからしばらく自由時間だ。荷物を個室に置いたら、艦内を好きなように見て回りな。ただし、傷はつけるなよ。あと、すぐ艦が動き出すから気をつけろよ」

 生徒たちは一斉に「はい」と返事をする。そして皆、散り散りになって自室へ向かって行った。

「抜錨!」

 艦長が声を張り指示を出す。

「抜錨!」

 操艦士が復唱する。操縦席横側にあるスライド式のレバーを前に押す。

 着陸脚の横から伸びた真空アンカーが音を立てて空気を吸い、アンカーが船体に収納される。

 補助用人工知能が話し始める。

「機関出力正常、障害物無し、離陸可能」

「離陸!」

 操縦士の声を聞き、小森は眉を顰めた。

 艦底に付けられた姿勢制御スラスターが地面に向け、虹色に揺らぐ光大量にを放つ。その光は地面にぶつかると、そこに沿ってぶつかった地点から半径五メートルほどの範囲まで広がる。

 外では、離れたところから学校の教員や生徒が手を振っている。

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