布告
翌日、修復歴九百二十五年五月二十一日、二十時三十二分
「いやーお疲れい!」
暁音は気泡が弾ける音を奏でるジュース入りのグラスを掲げながら言った。
「今日は忙しかったねぇ、明日は丸一日休みだって」
「そっか、良かった」
グラスに入ったジュースを弄びながら皐月は言った。
その時、玄関からドアノブを捻った音がした。
「食堂でピザ買ってきたぞー」
開いたドアから暁斗が、薄っぺらい四角柱の形が浮き出たポリ袋を掲げながら入ってきた。
「おっ、ナイスお兄ちゃーん」
そう言って暁音は、サムズアップした手を暁斗に見せつけた。
暁斗はポリ袋から取り出した薄い箱を、ジュース入りペットボトルとグラスの並んだ机に置いた。
「じゃ、今日はちょっと夜更かしするか!」
暁斗の言葉に、暁音は嬉しそうに返す。
「さんせー!」
「まぁ、明日休みだしいいか」
皐月はジュースを飲みながら同意した。
「テレビつけようぜ、リモコンどこ?」
「そこ」
暁斗の質問に、皐月は簡潔に返しつつ指で場所を示す。
「お、あったあった」
皐月が指差したベッドの上にあった細長い板状の物体を見つけ、暁斗はそれを手に取った。
その板に表示されたタッチパネルを押すと、テレビに明かりがつく。
大きなテレビモニターは立体映像の番組表を映した。
暁斗はその番組表をリモコンで操り、選択した。
立体映像が消え、テレビモニターにが直接平面映像を映し出す。
「おー、このアニメまだやってたんだ」
そんな暁斗の関心の糸を切るように、皐月は携帯端末の立体映像を眺めながら言う。
「テレビ変えてくれ、五チャンネルに」
「ん?ああ、いいけど」
テレビの平面映像が消え、再び立体映像が現れる。
その画面にはニュース映像が映っていた。
立体映像で映し出されたスーツ姿の女性は、落ち着いた声で淡々と言う。
「――ど、八咫烏軍からの二度目の声明がありました。映像をご覧下さい」
立体映像が切り代わり、五芒星が浮かぶ。
そして、ボイスチェンジャー越しの低く荒い声が鳴り始める。
「我々八咫烏軍は、この世界の神の敵に対し、決着をつけようと思う。場所は北米南部、ヴァージン諸島である」
「お」
その言葉に、皐月は反応する。
「雨宮が言ってたけど、石井の予想通りじゃん。流石は連邦戦術コン学生一位ってだけあるな」
荒い声が続く。
「ここを我らが押さえ、この星に五芒星を描く。さすれば、神は救いと断罪が為御降臨なさるであろう。我々はヴァージンに最大戦力を結集し、正面戦争を行う。時は今から一時間後だ。タイマーはスタートしている。一時間もあれば貴様らも準備が整うであろう。かかってこい、邪悪共よ。我々が貴様らを裁いてみせる。この決戦には兵器の制約も戦力の対称性もいらない。全力でぶつかり合うのだ。一時間後を、楽しみにしている」
荒い声の言葉は終わり、黒い五芒星も消えた。
スーツ姿の女性が話す。
「この声明に、早くもネット上ではさまざまな憶測が飛び交っています。例えば――」
皐月が立体映像を見ながら、その女性の代わりのように語り始めた。
「えー、『最初から五芒星がとか言ってたし、今やってみたけど襲撃地点繋いでついでにヴァージン諸島も繋いだらだいたい五芒星になるからマジっぽい』……石井と同じ考察してるな。『連邦はどうすんだろ』『がんばれんぽう!』『漁夫れんぽう!』『今のうちにア連攻めろ』……カスの意見だな」
「……なんか、ア連は大変なんだな」
暁斗は同情した。同時に、切り捨てた。
「まぁ第一、五月でも豪雪みたいな現状を作り出してんのはあそこだから自業自得なんだろうな」
「でも住民は可哀想だよねー」
暁音は気楽そうに、ピザを頬張りながら言った。




