足音
佐渡空中港にもう一隻の軍艦が入港した頃、ア連――アメリカ社会主義連合南米地方アクレ州イラセーマの基地が、襲撃された。
北米の対日本前線に戦力を集中していたア連軍と財団は抵抗すらできず、ただ呆然と基地に敷かれた五芒星を爪を噛んで見つめるしかなかった。
同基地周辺には日本連合皇国のウイルス弾頭弾道ミサイルが着弾し、ア連は周辺地域に免疫爆弾を散布し医療班を派遣することで対応をしている。
が、臨時病院に感染者と医者が集まったタイミングで大量のクラスター弾道ミサイルが着弾し、臨時病院、都市共に完全に壊滅した。
それらは、凡そ二時間のうちに起こった。
一体は完全に封鎖され、生き残った僅かな市民はウイルスで死ぬのを待つのみとなった。
地獄と化した一帯に、ア連国防省の調査員は派遣された。
調査員を乗せた装輪装甲車が、瓦礫と死体まみれの街道を駆けて陥落した基地へと向かう。
「やはり、奴らの狙いは我々を徹底的に叩き潰すことでしょう。八咫烏軍を支持するという声明を日帝が出してから、攻撃はア連が受け連邦は受けないという状態です。『恐らく』としか言えないんですがね」
僅かに揺れ続ける装甲車の中、調査員は端末を介して通話をしていた。
「人気はありませんし、人らしき熱源もない……ですよね?」
調査員は運転席の方を向いて訊いた。
運転手が答える。
「ええ。人どころか生き物自体反応がないです」
「とのことです。無色透明なので見えないですが、恐らく私の乗っている車の周りもウイルスまみれなのでしょう……なんとか、反撃の手立てはないんですかね?」
携帯端末から返答が来る。
「我々としても反撃をしたいところだが、今の所は厳しそうだ。財団が味方についているとはいえ、あちらはどこに来るのか分からないテロリストの対策をしなくて良いのだからな。戦力差は圧倒的だ……もう一度、核の冬を招くしかないのかもしれない」
その返答に、調査員は言う。
「ただでさえ核の冬は続いているというのに、もう一度やってしまえばそれはもう氷河期、地球の終わりですよ」
「我々だけが終わるのか、地球を終わらせてなんとか生き残るか、そのどちらかしかないのではないだろうか」
「まぁ……それもそうかもしれません。到着しました、これより調査に入ります」
装甲車は、瓦礫と化したイラセーマ基地に到着した。
基地設備、役所設備の悉くが瓦解し、滑走路だった場所には大きく五芒星が描かれていた。
――――
佐渡港の伊勢、その艦橋では石井が一人で立って艦橋モニターを眺めていた。
「袋叩きだな」
そう呟きながら、石井は顎を指でさすった。
「AI、今のところのテロの襲撃地点を表示してくれ。そしてそれらを点で繋いで」
石井の指示で、艦橋モニターが映し出す立体映像は南太平洋と南アメリカを跨ぐ台形に近い形を映し出した。
石井は、八咫烏軍の生命にあった五芒星という言葉を反芻する。
五芒星……五角形……
石井は追加でAIに指示を出した。
「今のこの台形が大体正五角形になる位置に点を置いて、その点も繋いでくれ」
立体映像が動いた。
そして、北米南部のヴァージン諸島に点が置かれた。
石井は指示を続ける。
「この五角形を五芒星の繋ぎ方で繋いで」
立体映像上の五角形が変形する。
その五角形は、南太平洋、北米南部の、南米を跨ぐ巨大な五芒星となった。
地球に五芒の星が描かれたその時、神は降臨なさるだろう
石井は八咫烏軍の声明を思い出す。
地球に、五芒の星
石井は確信した。次の襲撃地点はヴァージン諸島だと。
その時、艦橋の自動ドアから青田と小森が入ってきた。
小森が訊く。
「どうした、石井くん。何かあったかい?」
石井は答える。
「いや、次の襲撃地点どこかなって」
一方、青田は艦橋モニターの立体映像を見ていた。
その立体映像は、ヴァージン諸島に置かれた点を強調表示していた。
「次の襲撃地点はヴァージン諸島……成程な」
青田は呟いた。
その様子を見た石井が訊いた。
「どうかしました?」
「いや……これ、なんでヴァージンだと?」
「ああ、ここが襲撃地点とすると、今までの襲撃地点と五芒星で結べるんですよ。あいつらずっと五芒星がどうのって言ってたじゃないですか、だからここかなと」
「成程……」
青田は感心した。
八咫烏軍からの声明が発表されたのは、その翌日のことだった。




