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虹時代 出来損ないの亡霊  作者: 小型旧人
昔話と墓暴き編
36/43

入港

 カナダ北部での虐殺から数日後、修復歴九百二十五年五月二十日

「そっち搬入終わったー!?」

 暁音が少し遠くの乗組員部門の集団に大声で訊いた。

 彼らの内一人が応える。

「まだあと半分あるー!」

 大雪が降る中、軍戦部の少年少女たちは搬入作業を急いでいた。

「あと一時間だ!急げ!」

 高松の声かけに、皆が焦り始める。

 積もった雪に倒れ込むようにして身を委ねた秋田に、風間が段ボールを抱えながら言った。

「そんなことしてると、高松にボコされるぞ……あっ」

 風間は目を逸らし、何事もなかったかのように立ち去った。

「えっ、どうしたんす」

 秋田が言いかけた時、彼の横腹に衝撃が走った。

「がっ」

 風間に言いかけた言葉が歪む。

「ちょっ、何……あ」

 見上げた先には、大きく目を見開いて見下ろしてくる高松が腕を組んでいた。

 その高松が、大きく口を開いた。

 秋田が恐怖で目を塞ぐ。

 ――――

 一時間後

 佐渡空中港の真上に、もう一隻の軍艦が浮かんでいた。

 三角錐の艦首、滑らかな流線で形成された鋭利な構造。特徴はおおよそ伊勢と同じものだ。

 空中港の天井がゆっくりと開き、雪が降り込む中数多のロボットアームが天を仰ぐ。

 そのロボットアーム一つ一つの手先に赤いレーザーの点が当たる。

 同時に、ゆっくりと降りて来る艦底にも赤いレーザーの点が当たる。

 その巨大な船はスラスターで重力に抗いつつ、ゆっくりと港の建物内に降りて行く。

 姿勢制御スラスターたちが虹の点滅をする。

 やがて艦底がロボットアームに触れた。ロボットアームは緩衝しつつ船を抱き止めた。

 艦底だけでなく、艦全体にロボットアームが廻る。

 伊勢の隣に入ったその船に、様々な管が差し込まれた。

 その様子を、伊勢に乗る軍戦部の少年少女は眺めていた。

「あの船どこの学校の奴が乗ってるんだろ」

 暁斗のそんな疑問に、彼の隣の皐月が答える。

「あれだよ、こないだの透明人間。あいつが乗ってんじゃなかったっけか」

「ああー!あいつね」

 暁斗は納得した。

「今度会ったらシバこ」

「面倒ごと起こすなよ」

 と、皐月は忠告した。

 ――――

 皐月が部屋で課題を進めているところ、暁斗と暁音がチャイムを鳴らしてきた。

 皐月は端末の立体映像を切ってベッドから立ち、ドアの鍵を開けた。

「課題やってたの?真面目だねぇ」

 暁音はベッドの上に転がった学校の端末と皐月を見比べるようにして感心した。

 皐月は言う。

「いや……やらないとその方が面倒だし」

「後先考えてたら今が楽しくなくなるよ、気をつけな」

「何その人生の先駆者みたいな言い方」

 その会話を、暁斗が全く別の会話に変えた。

「そういや俺がまた彼女と別れた話したっけ」

「お兄ちゃん、あなたは付き合い始めた話すらしてないよ」

 暁音は呆れた。

 皐月は当然の如く納得した。

「まぁ、いつも通りだし」

 皐月の納得を見て、暁斗は続ける。

「四月ごろに同じクラスの女子に告られて、伊勢乗る前に振られたんだよ」

「意味がわからないね」

 困惑する暁音、慣れている皐月。

「それもいつも通り」

「なんで別れるのかって聞いたら、会う時いっつも別の奴の話ばっかしてるからだって」

「お兄ちゃんが悪い」

「最早テンプレだな」

 責める暁音と納得する皐月。

 暁音が訊く。

「で、誰の話を?」

「わかんねぇけど皐月の話ばっかしてたんだって」

「えぇ……」

 皐月が引いた。

「自覚はないんだけどな」

「いい?お兄ちゃん。女の子ってのはね、自分に興味を持ってくれてる人が好きなの。不細工以外でね」

「ふむ」

 暁斗は真剣に聞く。

 暁音が続ける。

「お兄ちゃんさ、ちゃんと『髪切った?』とか『化粧変えた?』とか訊いた?」

「変えてなさそうだったから訊いてない」

「それがダメなんだよ。女の子はそうやって気にされてるって思うと、ちょっとしたこととこじつけて嬉しくなったりするもんだから訊かないと。まぁそもそも妥協で付き合ってあげただけだろうからどうしようもないけど」

「何その言っときゃ良いみたいな」

 暁斗は訝しんだ。

 暁音は教えるように応える。

「違うのよ。女の子はそういうふうに見ててあげないとダメなの。そういう生き物なの」

「そんな勝手な」

「でも男って女の子といるだけで嬉しいでしょ?」

「そういう奴もいるってだけだろ」

「その嬉しさを味わうために、女の子の勝手を甘んじて受け入れてあげないとなの」

 暁斗は呆れたように反論する。

「そうじゃないやつはどうなるんだよ」

「知らん」

「女に勝手があるように、男にも同じ勝手があるんだよ。そんな勝手に付き合ってられねぇよっていう勝手がな」

 その会話に、ベッドで寝転んだ皐月が割り入る。

「そんな男だ女だ言ってると、一部のやつにボコされるぞ」

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