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虹時代 出来損ないの亡霊  作者: 小型旧人
昔話と墓暴き編
31/33

自由時間

「にしたって、透明なドームで都市丸ごと包むってすげぇな」

 大盛りの青椒肉絲を頬張りながら、暁斗が言う。

「汚染があったりなかったりするとこではこうなんだっけ?実物は初めてだわ」

「ね、すごいよね」

 暁斗の向かいに座る暁音がラーメンを啜って咀嚼し飲み込み、暁斗に同意した。

 その隣に座る皐月の元に、半球状の炒飯が置かれる。

 皐月はそれを運んできた店員に軽く会釈をし、炒飯を乗せた皿の縁に付いているレンゲを持った。

 皐月がそのレンゲで炒飯を掬って食べようとした時、暁音が皐月に質問を投げかけた。

「あれ、どうやって放射線入んないようにできてるの?」

「確か……分厚い二重の鉛ガラスの間に水を流して循環させてるとかじゃなかったっけ」

 皐月は思い出しながら答えた。

「へー……鉛ガラス?なんそれ」

 暁音はそう言いながら首を傾げた。

「鉛のガラスだよ」

「そうじゃなくて」

「いや……俺もよくわからないんだよ」

「ならしゃーない」

 暁音は諦めてラーメンを啜った。

 皐月も同じように手元の炒飯をレンゲで掬い、口に入れて咀嚼する。

 暁斗はもう、大盛りの青椒肉絲を食べ切っていた。

「いやぁ、やっぱ久々の天然肉は旨いな」

 暁斗は嬉しそうに言った。

 その様子を見た皐月は、少し嬉しそうに微笑しながら暁斗に言う。

「だから言ったろ?ちょっと遠くても民営に行くべきって」

「マジでそうだったわ。国営じゃ天然肉食えねぇもんな」

「野菜もな」

「いやぁ、マジで良くやったぞ皐月!」

 暁斗はサムズアップした右手を皐月に見せつける。

 皐月は呆れて言う。

「だからその上からな感じ何?」

 三灯の三人がいる料理屋の窓の外を、吊り下げ式リニアモーターモノレールが駆け巡る。

 モノレールが通り過ぎた後の景色は、無機質なビル群で埋め尽くされていた。

 凡そ十分後、三灯の三人は料理屋を出、ビルから少しせり出したモノレール停にあるベンチに座った。

「どーしよっかなー、伊勢戻る?それとも地下の居住区にでも行ってみる?」

「居住区に行く意味も無いし、伊勢の方戻ろうか」

 暁音の質問に、皐月が答えた。

 その回答に暁斗が物申す。

「せっかく久々の陸地だぜ?もうちょっとなんか遊ばね?」

「それもそうだなぁ……じゃあどっか行こうかな」

 暁音は暁斗に同意した。

 皐月がポケットから端末を出し、その端末に言う。

「近くのなんかしらの遊び場教えて」

 無機質な声が答える。

「最寄りのゲームセンターは――」

 ――――

「天皇陛下、万歳!」

「天皇陛下、万歳!」

 日本連合皇国、旧世紀天安門遺跡現皇居前広間に、大量の人が群れて叫んでいる。

 曇り空の下、全てが影に包まれている中、スポットライトの光を一人だけ浴びている男がいた。

 その男は、天皇という名を持つ。

 天皇と呼ばれる一人の男は天安門楼上の屋外に、凛々しさを醸し出す佇まいで、群衆がある程度落ち着くのを待っている。

 約一分間待った後、少し群衆が疲れ、声が小さくなった。

 それを確認した天皇は、口を開けた。

 ほんのりと聞こえていた万歳の声がぴたりと止む。

「諸君、八咫烏軍を名乗る組織のことは皆、承知の上と存ずる。彼らは世界から認められず、排除対象とされている。だが我々は、彼らと会話の機会を得た。彼らは言った。神を尊ばぬ穢れが許せぬと。神はお怒りであると。彼らは、真の神の遣いであった。神に仕え、神に歯向かう邪悪を排除せんとする正義の集団であった。故に、以後我々は八咫烏軍を支援することとする。八咫烏軍、万歳!」

 天皇は聞き取りやすい話し方で、力強く叫ぶように話した。

 その話を聞き、集まっていた群衆が沸き立つ。

「八咫烏軍、万歳!」

「天皇陛下、万歳!」

「万歳!」

「万歳!」

 鉄筋コンクリートで固められた天安門が、数千か数万か、数多の人々の声が当たり僅かに振動する。

 その振動や群衆の迫力を受けても、天皇は微動だにしなかった。

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