援助
「うぇーい、大物ー」
「お兄ちゃん、どんなズルをしたんだ?」
三灯の三人は、解放された飛行甲板に座って釣りをしている。
遠い海面に繋がった糸を眺めながら皐月が言う。
「釣りとかしたことないんだよな、慣れない」
「それは釣れない言い訳かぁ?」
暁斗が皐月の顔を覗き込んで、にやつきながら言った。
「でも朝はなかなか釣れないなぁ……朝釣りにしては遅いし」
釣り上げた小魚を針から外して海面に投げながら暁音は続ける。
「って、青田さんが言ってた」
「それっぽいこと言ってんなーと思ったのに期待外れだわーマジ」
暁斗が釣竿を振り下ろし、釣り針を投げ飛ばしながら呆れたように言った。
「お前ほんと青田の言うことは良く覚えてるよな」
嫌味の籠った声で皐月は吐き捨てた。
「顔と声がいい男の人の言うことは覚えるのが女だよ、皐月くん。覚えな?」
「暁音の言ったことが正しいとすれば、残念ながら俺は女じゃないし、お前は顔と声のいい男じゃないから覚えないね」
「そんなこと言ってたらモテねぇぞ皐月」
暁斗は釣竿を片手に、皐月の白髪混じりの髪をわしゃわしゃと撫で回した。
――――
一方青田は、艦橋で一人モニターを睨んでいた。
モニターから声が鳴る。
「えー、国際自警財団からの、今回のテロに関する声明だそうです。ライブ配信があと10秒で始まります」
モニターから話していた黒服の男が消え、代わりにただひたすらに緑が映る。
その緑の右端から、長髪の男が歩いて出てきた。
その男はゆっくりと振り向き、自身のTシャツの乱れを一瞬確認したのちに顔を上げた。
「えー、世界中の皆様、こんにちは!私は世界自警財団の白い死神こと、大和田颯です。今回我々は、近頃のテロに関して軍の皆様にお話があって、この配信をすることに致しました」
どこかご機嫌に話す颯を他所に、各国の軍司令部は慌てていた。
「発信源の特定は?」
「ダメです……地球を包み込むように大量の発信源が」
「対策はしているか……」
ア連軍総司令官は悔しそうに舌打ちをした。
同じように、他二国の軍司令部も発信源特定による天照への攻撃を試みたが、悉く失敗した。
そんな彼らを他所に、颯は楽しげな口調で続ける。
「我々にとって八咫烏とかいう奴らは攻撃対象なんですよね。軍基地を襲撃する時にそこの軍を無力化するだけならいいんですが、基地丸ごと壊して役所機能も喪失させてて、インフラも壊してますからね。市民に対して有害です。故にあいつらシバきたいところなんですが……」
颯は息を吸い、嘲笑うような表情で続ける。
「我々が行く前に、もう勝ち逃げしちゃうんですよね、奴ら。最低でも十分は掛かるのってのに、1分くらいで軍人の皆様が完全敗北してしまうので、我々が言ってもどうにもならないんですよ、残念なことにねぇ」
颯は両手の手のひらを肩の高さまで上げ、笑いながら少し首を傾げた。
「もうちょっと軍人の皆様には頑張ってもらわないと困るので、せめて五分は耐えて下さい。そうすれば我々が何とかしますので。五分間足止めしてくれればいいんですよ。それだけです。あとは、市民に加害行為をした場合は許しません!これはいつも通りですね。用件はそれだけです。では」
映像が消え、真っ黒になったモニターに反射した青田の顔は澄ましていた。
対して、各国の軍司令部は狐につままれたような顔をしていた。
青田は白い死神の言っていた五分という言葉を脳内で反芻する。
そして青田は反芻をやめ、ポケットから骨伝導イヤホンを取り出し、通信を入れた。
「小森さん、今から佐渡港で補給することになったので、お願いします」




