明け方
窓から暁光が差す。
その光に当てられた皐月の顔は一瞬不愉快そうな皺が寄り、その皺がなくなると共に瞼が重々しく開く。
中から現れた瞳は光を当てられた宝石のように煌めき、それを嫌がるように瞳孔が収縮する。
昨夜、三灯の三人でゲームをしながら食べたお菓子の袋が散乱したベッドの上、皐月は太陽に叩き起こされた。
上体を起こし、ベッドの隣にある窓の外を覗く。
鳴き喚く海猫、穏やかに揺らぐ海面、それに基づいた白波、それらを照らす太陽、その光に一部が包まれた白銀色の環。それらが皐月の瞳に映り込んだ。
皐月は目を擦りながらベッドを降り、洗面所に向かう。
雑に脱ぎ捨てたはずの擬似皮膚全身服がいつの間にか通路の壁ハンガーにかけられていることに皐月は気付き、多少申し訳ない気持ちが脳裏をよぎった。
顔に手で汲んだ冷水を当て、付いた水をタオルに吸わせる。
歯ブラシと歯磨き粉をスタンドから取り、歯ブラシのブラシ部分に歯磨き粉のクリームを乗せる。
歯磨き粉が乗った歯ブラシが、振動音を奏で始めた。
その歯ブラシを口に入れ、ブラシを歯に当てながらゆっくりと撫でるように動かす。
その動作を全ての歯で終えると、コップで口を濯ぎ、そのコップを洗い、水を入れ直す。
入れ直した水を飲み、ベッドの有る部屋の方に戻る。
引き出しから洋服を出し、着替える。
着替えを終え、上着のジャンパーをハンガーラックから取り、それに腕を通す。
ファスナーを閉めながら靴を履き、ドアを開ける。
皐月は食堂に着いた。何かを食べながら暁音と暁斗が手を振っている。
皐月は二人のいる席の隣に座る。
暁音が口の中の食べ物を飲み込んで言う。
「おはよ、遅かったね」
「ああ、なんか寝坊気味だった。何でだろ」
皐月が返した。
小さくあくびをし、皐月は立ち上がる。
上着を置いて注文を頼みに行こうとする皐月の袖を暁斗が掴み、携帯端末の立体映像を見せてきた。
「見て、皐月。キリバス州北東の五番人口諸島群の基地が落ちたらしい」
皐月は食いついた。
「……マジか」
連邦もターゲットか……そりゃそうだな
皐月は独白した。
暁斗が続ける。
「しかもこないだのア連のやつと同じやつらっぽいらしい。なんか星マークあるし」
「白昼堂々かぁ……肝座ってんな」
皐月は感心した。
暁斗は得意げににやつきながら言う。
「有益な情報だったでしょ、感謝しろよ」
「はいはい、ありがと」
皐月は雑に感謝し、壁の端末の方まで歩いて行った。
皐月が端末で注文をしている時、後ろから航空部門の話し声が聞こえてきた。
「昨日、お前何回マニューバした?」
「クルビット五回、木の葉落とし三回、コブラ十五回っす」
「何機落とした?」
「ゼロっす!」
「バカかよ……風間は何してた?」
「敵艦に色々撃ちまくってた」
「どこを?」
「艦橋」
「サイコパスかよ……何で撃墜全部私がやらないといけなかったんだよ」
「いやぁ流石っす高松先輩!」
「カッコいいよ明奈」
「お前らマジで……」
背後の会話を聞き流しながら、皐月は端末を操作していた。
操作を終えると壁に切り込みができ、その切り込みが開いて中から食パンのサンドイッチとスープのセットが出てきた。
それらが乗ったトレーを持ち、皐月は暁斗と暁音のもとに戻った。
「そういや、昨日は割と激戦だったから今日は休みって」
皐月が席に座ると、暁斗が嬉しそうに言う。
「皐月が粘り勝ちしたからだぜ!良くやった!」
「何で上からなんだよ……」
皐月は呆れながらサンドイッチを食べた。




