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虹時代 出来損ないの亡霊  作者: 小型旧人
昔話と墓暴き編
23/31

調査

「これは……ひどいな」

 襲撃の夜が明けた。

 暁光に照らされながら履帯を履いた、角張った装甲車両は強烈な揺れを続ける。

 それに伴い、スーツの男の胸元の「国防省」とその他諸々が書き記された、首から紐で吊るされた名刺は不定期に跳ね回っている。

 国防省の男は窓のような全天モニターを見渡し、恐怖した。

 堅牢なはずだった基地の主要施設、主砲、格納庫などが悉く焼き尽くされ、灰に帰している。

「我々としても、宗教テロでここまでの被害は初めてです」

 全天モニターの中、浮かぶように向かい側に座っている軍服の男は、胸ポケットから携帯端末を取り出した。

 その端末から立体の記録映像を映し出す。

「こちらが確認できている限りの内容です。奴らは光学迷彩を使用。これは流体重力波レーダーと熱源探知で即座に看破できましたが、それだけではなく、奴らは未確認の機動戦闘車で襲ってきたのです。恐らく推力は核パルス、それ故にこれほどの汚染が広がったのです」

 国防省の男はその映像を見ながら顎を摩り、言う。

「何故、そんな旧世代兵器を?」

「さぁ……それは全く。ただ、奴ら旧世代兵器とは思えないほどの強さを誇るんですよ。謎の熱線兵器が確認されまして」

 軍服の男は立体映像を操作して、映像に記された特殊形状の戦車が発砲した瞬間で止め、急速に飛翔する熱線をズームする。

 そして、男は続ける。

「青紫色の強烈な光で、夜の基地を昼のように一瞬照らしています。まるで雷のような。なのでこれは恐らくプラズマ弾ですね。着弾の瞬間に建物が吹き飛んだ直後、別のもっと大きな爆発が起きているので、なんらかの衝撃波か何かでプラズマを包んで、空気での減衰を防いでいるんですね。反物質のようにγ(ガンマ)線が確認されたわけではないので、これは確実にプラズマです。虹力子並みの威力があります」

 軍服の男は映像を変え、基地上空でホバリングしている飛行機が基地にロケット弾のような砲弾を発射した瞬間を映し出す。

「ただ、それとは別に反物質、恐らく陽電子か反陽子か何かの格納容器をぶつけるようなこの弾丸がありまして」

 軍服の男がそう言うと、映像が一瞬だけ進む。

 その映像には、ロケット弾の着弾の瞬間に強烈な光に包み込まれて建物が一つ丸々消える様子が映る。

 それを見て、国防省の男は背後にある、基礎のかけらが所々に残っただけの建物跡を見る。

「虹力子兵器には劣るとはいえ、これをテロリストがやるとは……」

 軍人の男は続ける。

「この瞬間のγ線による汚染がこの辺りにまだ強く残っています。核パルスエンジンのせいでもありますが。最低限、テロリストと舐めてかかっていい相手ではないと言うのは確実です。相手は未確認の兵器群ですし」

 国防省の男は、全天モニターに映る世紀末の如き風景を見たまま質問する。

「敵の機動歩兵は?」

「それが、虹力子はおろか、機動歩兵すら確認されませんでした。この小型の機動戦闘車のような何かとホバリング可能な航空機以外確認されておらず、歩兵は出てきていません」

「機甲師団、と言ったところか。歴史の資料でしか見たことがなかったな」

 そう言って国防省の男は、綺麗に髭が剃られた顎をさする。

 軍人の男は付け足すように、別の立体映像を表示し口を開いた。

「後は、破壊された滑走路に五芒星が記されていました」

 国防省の男はその立体映像をまじまじと眺めた。

「やはり、八咫烏とやらの仕業か。日帝め、こんなものを送り込みやがって」

 国防省の男は溜息をついた。

 軍人の男は笑って言う。

「さぁ、ほんとは日帝は絡んでないかもしれませんよ?」

 国防省の男はその言葉に呆れて返す。

「奴ら、国に『皇』を入れてるんだぞ?神道、俗に言う天皇教の信者の仕業なのだから、日帝が……日本連合皇国が噛んでるに決まっているだろう」

 二人の乗る装甲車は、荒れ果てた汚染区域を、元は基地だった場所を走り続ける。

 基地の残骸では、黄色と黒の縞模様の防護服を着た人らが瓦礫を持ち上げたり、何かを運んだりを繰り返している。

 地割れが網目のように走っている滑走路上を、トラックが走り回る。

 そのトラックの足元には、大きな五芒星があった。

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