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虹時代 出来損ないの亡霊  作者: 小型旧人
昔話と墓暴き編
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変動、始動

変動、始動

修復歴925年5月17日、暁斗と皐月の練習試合から三日後

 「あー疲れたー」

 肌に張り付くような漆黒の擬似皮膚全身服を身に纏った暁音が背伸びをしながら言った。

「お疲れ様ー、みんな」

 艦橋で石井と艦隊戦シミュレーションによる対戦をしていた雨宮が振り向き、機動歩兵部門や航空機部門の生徒に優しい笑顔を与えた。

「お」

「ども」

 暁音と同じく首から下を黒色で包んだ水野と橘が、軽い挨拶をしながらそのシミュレーションの映像を見るために一瞬立ち止まった。

「今日はビビったわ。急にウェリントンが突っ込んできて。突っ込んできたの誰」

 同様に擬似皮膚全身服を着た暁斗が呆れた様子で、いつのまにか洋服に着替えていた航空機部門の三人に顔を向ける。

「すまん、私だ。なんか敵航空隊殲滅して暇になってさ……」

 高松は申し訳なさそうに手を合わせた。

「高松先輩……危うく俺轢かれるとこだったんすよ」

 そう言いながら暁斗は苦笑いをする。

「飛行機にも轢かれるって言うんすかね」

 秋田が会話に割り入る。

 そんな秋田に、彼の隣にいた風間は疑いに近い目と言葉を向けた。

「真冬なんか仕事した?」

「偵察しました!」

 航空機部門も機動歩兵部門も、皆呆れる。所々からため息が漏れる。

「最初から艦載レーダーが捕捉してんのよ」

 石井が立体映像に映し出された艦隊戦リプレイを眺めながら言う。

「目視って大事じゃないすか!」

「お前の視界は私らに共有されてるわけじゃないんだよ」

 自身あり気に反論した秋田を、高松は幼児に語りかけるが如く諭す。

 その諭しに、秋田は首を傾げた。

「ま、それはさておき、みんなで甲板でバレーでもやらね?」

 暁斗が割り入って遊びの提案をする。

「賛成〜」

 そう言って暁音が手を掲げた。

 高松が艦橋から廊下に出ようとして立ち止まり、後ろの暁音達の方を振り向いた。

「あんたらは着替えなくていいのか?あたしらはもう着替えてるからいいけどさ」

「あーいいですよ、気にしなくて」

 暁音は手をひらひらと振って配慮に応えた。

「おっけー、了解」

 そう言った高松は、先に行った秋田と風間を追って駆けて行った。

 それについて行くように、水野と暁斗、橘も廊下に出て行って。

 暁音は溜息をつく。

「皐月、行くよ」

 窓際で気配を消していた擬似皮膚全身服姿の皐月に、暁音は駆け寄る。

「……俺が行く意味ある?」

「こういうの無視してるといつか除け者にされるからさ、社交辞令と思って」

 暁音は皐月の手首を掴んで無理矢理連れて行く。

「ちょっと違くない?」

「違うかな…?」

 暁音は首を傾げながらも、手首を力強く掴んだまま廊下を駆けている。

 皐月は、そんな暁音の姿を見て呆れたような溜息をついた。

 その時、廊下の奥から大人数の駆け足の音が近づいてくるのを二人は感じ取った。

 その足音は、軍人達の足音だった。

 多くは何やら小言を交わしながら走っているが、青田と小森だけは顔つきが神妙だった。

 その様子に、暁音と皐月は一瞬茫然とした。

 暁音は一瞬「どうしたんですか」と声をかけようかと考えたが、今声をかけるべきではないと咄嗟に判断した。

 屈強な大人達が焦っている様子に、暁音は漠然とした不安感を抱き、皐月の手首を握る力が一瞬強まった。

 対して、皐月の不安感は全くもって漠然としたものではなかった。

 彼が生まれながらに備えている勘は、決していい予感を持たせてくれなかった

――――

 艦橋の窓の上に設置された巨大な立体画像投影機は、軍の総司令官を映し出していた。

「……早速本題に入ろう。テロリストによる犯行予告が、全世界の政府に同時に出された。内容を見せよう」

 立体映像が彼の顔の上に五芒星を映し出す。

 ボイスチェンジャーのかけられた、乾いた低い声が聞こえ始める。

「我々は八咫烏軍、神の遣いである。貴様らは、神の物であるはずの地球を身勝手に汚しすぎた。近頃の核爆弾による汚染により、今や地球が清浄かつ正常な範囲はは100年前の二分の一となってしまった。」

 字幕が勢いよく、一文字づつ伸びて行く。

「周知の事実であるが、呪詛使いにより開発された放射能耐性のある植物が地球を覆い、神が作り出した生物の均衡は植物が支配してしまっている。それによりこの星は冷え切って、古き良き世界にはあった夏という季節は消え去ってしまっている。神は大変にお怒りだ。それ故、我々が遣わされたのである。我々は人類に罰則を下し、地球を浄化する。地球に五芒の星が描かれたその時、神は降臨なさるだろう。己の罪を悔やむがいい」

 表示された五芒星が渦を巻いて消えて行った。

 司令官の呆れた顔が顕になる。

「とまぁ、こんな感じだ」

 伊勢の艦橋内で、モニターを見上げる軍人達は各々小声で話す。

「天皇教……神道過激派か」

「日本が絡んでそうだな」

「わざわざこんな無謀で面倒なことはせんだろ」

「天皇教ってのも俗語でしかないがな」

「ああ、日本人に言ったらキレられるんだっけか」

 日本人に対する嘲笑を込めた声に誰かが便乗する前に、司令官の話が再開した。

「これにより、ア連と我が国は一時的に停戦を行なっている。悪辣なテロリスト共は徹底的に叩きのめすぞ」

 司令官が敬礼をし、画面から姿を消した。

 軍人達は、嘲笑混じりの談笑を交わしている。

 対して、青田と小森は、それぞれ何かを考え込んでいた。

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