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虹時代 出来損ないの亡霊  作者: 小型旧人
昔話と墓暴き編
10/31

食堂

 出航の翌日、五月六日

 朝、皐月は携帯電話の目覚ましの音で目覚める。カーテンを開けっぱなしにしていた窓から、朝日が差し込む。

 起き上がり、換気のため窓を開けると、ウミネコの声と潮の匂いが同時に部屋に流れ込んでくる。

 皐月はテレビをつけたのち顔を洗い、歯を磨く。

 そして、寝巻きから私服に着替える。

 その時に露出された彼の体は、多少の筋肉がついており、脂肪はほぼない。そんな引き締まった体には、数多の白斑が浮かぶ。

 テレビは相変わらず、アラスカ沖の前線の様子を伝えている。滑舌が良く聞き取りやすい声の女性が、緊迫感を醸し出しながら現在の状況を解説する。だがその内容は、前日と同じく「膠着状態」でしかなかった。

 窓を閉め、テレビと部屋の電気を消し、玄関で靴を履く。

 そして、玄関から出た瞬間――

「わっ」

 暁音と暁斗が、同時に飛びかかってくる。

「…何してんの?」

「待ち伏せ」

「なんで?」

「なんとなく」

 皐月と暁音は、どうしようもない応酬を繰り返す。

 それを横で聞いていた暁斗が、皐月に話しかける。

「食堂行くんだろ?行こうぜ」

「あぁ、そうだな」


 三灯の双子は、一つ年上の義弟を挟む形で並んで廊下を歩く。

 皐月は、高い鼻から空気を吸い込みながら言う。

「…もう食べ物の匂いしてきたな」

「皐月やっぱ鼻いいよねぇ、鼻高いからかな」

「そうなんじゃない?」

 暁音を皐月が軽くあしらう。

 そのまま廊下を進み、開けた空間に出る。

 その開けた空間には長机と椅子がずらりと並べられており、数多の生徒たちがそこで会話をしながら食事をしている。

 その空間の壁は一面銀色で、その奥から機械音が響く。

「食堂もうこんな人来てんだ。早いなぁ」

 生徒たちを眺めた暁斗が言う。

「俺らが遅いんだろ」

 そう言いながら、皐月が銀色の壁についた端末の方に向かう。

 端末の前に立つと、真っ暗だった画面が光り始め、文字や画像を表示する。

「おはようございます、ご注」

 端末から鳴る単調な声を遮り、皐月は表示されたボタンを何度か押す。

 すると、端末の横に四角形状の穴が空き、そこからサンドイッチが二切れ出てくる。

 皐月はそれを両手に持ち、椅子に腰掛ける。

 後から、暁音と暁斗が皐月の前に座る。

 暁音はパンケーキ、暁斗はスープパスタを持ってきた。

「ピリ辛海鮮スープパスタって書いてあったからこれにした。うまそうだろ」

「…朝食に食うのはきついな」

 嬉しそうに話す暁斗に、皐月はサンドイッチを頬張りながら返す。

「これね、甘くないパンケーキらしい。どうなんだろ、美味しいのかなこれ」

「さぁ?」

 皐月と暁斗は同時にあしらう。

 暁音はパンケーキをナイフで切り、フォークに刺して口に入れてみる。

「お、意外と美味しい」

「意外って、美味しくないと思ってたのか」

 と暁斗。

「なんで買ったんだよ」

 と皐月。

「だって気になるじゃん。そういやさ、今日部門内練習試合だっけか」

「そうそう、タイマンだってね」

 暁音の質問に、彼女の兄が答える。

「総当たりだっけ」

「そりゃ五人だしな」

 皐月の質問に、彼の義兄が答える。

「じゃぁ、今日こん中で一番順位上だったやつになんか奢る、にしようか」

 皐月の提案に、暁音と暁斗は嬉々として同意する。

「いいじゃん!」

「絶っ対俺が勝つ」

 楽しげな二人を見て、皐月は浅い笑みを浮かべた。

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