【喫煙所】洗濯物の生乾き臭【漫才】
わ:わかば
セ:セッタ
わ「はい、どうも。ぼうずとロン毛のコンビでやってる『喫煙所』て言います。このごりごりでぼうずの高身長が『セッタ』、ロン毛の私が『わかば』って言います。今の時代に逆走中のコンビ名ですが、よろしくお願いしますー」
セ「どうしたん? 普段自分そんな丁寧な説明する人間ちゃうやん」
わ「やめいやめい、そんなこと言うの。そら人間第一印象が大事やからな。とりあえず最初は丁寧な方がええやろ」
セ「ほんまやな。うん、丁寧にいこか。んじゃあ、いきなりやねんけど、もうさ、お笑いの賞レースの決勝はさ、どんなけおもろいかじゃなくて、殴り合いで最後に立ってた方が勝ちにせえへん?」
わ「おい! おれがせっかく丁寧な入りで掴んだ好印象返せや! なんでそんな血まみれの決勝せなあかんねん」
セ「でもな、おれ柔道で国体出たことあるんよ」
わ「だからなんやねん。柔道にグーパン関係あらへんがな」
セ「まあな。でもおれステゴロには自信あるんよ。そんでな、お前も空手やってたやろ?」
わ「まあやっとったけどやな」
セ「そしたら、これいい線行けるんちゃう? ワンチャンあらへん?」
わ「誰が褒め称えんねんそんな優勝。しかも、もしいい線行っても決勝の相手がオリンピックメダリストとかなってきたら、おれら赤子同然やぞ」
セ「その時は向こうはスポーツマンシップっていうしがらみがあるやん」
わ「おれらは?」
セ「ないやん」
わ「ということは?」
セ「なにやってもええやん」
わ「優勝やな! これはおれらの優勝ですやん! くそダサい優勝やし、SNS炎上するし、仕事減るし最低やけどな!」
セ「あ! そや、聞いてや。おれな、タオルの生乾き臭が嫌いやねん」
わ「くそダサ優勝の話に対して見切り早すぎるやろ! そんで次のトークが生乾き臭て、テーマとして微妙すぎるやろ! お前のトークのターゲットは主婦層オンリーなんか?」
セ「おれ、あの臭いを根絶できたらもう死んでもいいと思ってんねん」
わ「えらい覚悟やな! 洗剤メーカーでもそこまでの覚悟あらへんで。なんなら『ちょっとましになりました』程度でもすぐドヤ顔決めてくるからな」
セ「せやな、あいつら『もう臭わない』とか『部屋干し臭ゼロ』とかいうけど、たまに余裕で臭うからな。臭いを駆逐する気合いが足りてへんねん」
わ「駆逐てどこの兵団やねん。心臓捧げる気満々過ぎるやろ」
セ「おれは本気よ。おれだけかもしれんねんけど、あの臭い嫌いなんよ」
わ「あの臭いか好きな物好きなんておらんわ。皆んな嫌いやあの臭い。だからどの洗剤メーカーもお気持ち的には打倒生乾き臭を掲げとるやろ」
セ「そうなん? でもたまにあれの臭いに近い香水つけたやつおるやん。おれ、生乾き臭が好きであの臭い振り撒いてるんやと思ってたわ」
わ「おらんわそんなやつ。それただ単に生乾きの服着たずぼらなやつやろ」
セ「マジで!? おれずっと香水やと思ってたわ。だってあいつも歌ってたやん。『横にいると思い出す』って」
わ「はぁー? お前は誰の話しとんのや?」
セ「『その香水のせいだよ』って」
わ「ドルガバに謝れお前! ドルガバにそんな臭い香水あらへんわ!」
セ「えーでも、瑛人が……」
わ「あいつも生乾き臭するなんて言ってへんやろ。生乾き臭で思い出す失恋ソングがあってたまるか!」
セ「なんでーや、生活感があってええやんか」
わ「生乾き臭させた女にフラれる男に共感するやつがどこにおんねん」
セ「おれ」
わ「おりましたー。皆さん見てやってください。生乾き臭にフラれた男がこちらですー」
セ「だからな、おれは生乾き臭を根絶したいんや」
わ「マジで私情しかないな。でもな、あれ風呂の残り湯使うのやめるとか、すすぎの回数増やすとかで臭いせんらしいで」
セ「そんなちょい技せなあかんとかだるない?」
わ「だるいなあ」
セ「やろ? だからおれはこの世からあいつらを根絶やしにしたいねん」
わ「なるほど。でもどうするん? なんか方法あんの?」
セ「出馬する」
わ「選挙に? アホなん? 出馬してどないすんねん。あと出馬したかて通らんやろ」
セ「大丈夫や、今の時代減税言えばめっちゃ支持者増えるから」
わ「やめいやめいそんなこと言うの。そらみんな減税して欲しいのは事実やけど」
セ「だからおれは生乾き臭駆逐を第一、減税を第二に押し出して出馬すんねん」
わ「打ち出す二つのベクトルちゃいまくりやし、並べると違和感バリバリあるけど大丈夫なんそれ? でも、それでもし通ったらどないすんの?」
セ「そらまず頭のいい科学者集めて生乾き臭を駆逐するための調査兵団を発足するやろ」
わ「なんで科学者で兵団作んねん! 科学兵団とか怖すぎるやろ」
セ「そら駆逐するには心臓捧げなあかんからな」
わ「誰にやねん」
セ「モラクセラ菌」
わ「なんやねんそのモラなんたら菌って」
セ「生乾き臭の原因の雑菌やん。みんなよくTikTokとかでポーズ決めながら叫んでるの見てへんの?」
わ「見たことないわそんなもん! キモすぎるわ。なんなん、最近の流行りバグり過ぎやろ」
セ「バグってないで、ちょっとイカれてるだけや」
わ「同じやないけ」
セ「あ、ちゃんと減税もするで」
わ「お前一人で何ができんねん」
セ「おれさ、柔道で国体出てるからさ……」
わ「暴力事件やないか! 誰落としにいく気やねんお前は!」
セ「せや、自分も空手やってたやろ? おれと一緒に出馬せえへん?」
わ「するわけないやろ! もうええわ」
「「ありがとうございましたー」」
※いでっち51号様主催、漫才王になろうGPエントリー作品です