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向かい合う私とレオ。少し離れたところで見守っていたアンドレアが数歩前に出て、「はじめ!」と声を上げた。
その合図とともに、レオが一気に跳躍する。
私は自分の方へ迫る側近に目線を向けつつ、素早く魔法を繰り出した。
瞬時に出現するのは、土系統魔法で作られた幾つもの壁。グラウンド上に無数に立ち上る土壁を器用に避けながら、レオは前方へと進む。彼の動きは素早く、まるで風のようだった。
出現した土壁を半分ほど越えたところで、私は次の魔法を発動させる。今度は氷系統の魔法だ。
瞬く間に、残った土壁が凍り付き、一面の氷の世界へと変わる。空気が凍てつく中、私は更に魔法を展開し、氷の礫を次々とレオへと放った。
迫る氷の礫に対し、レオは腰に下げた剣を抜き、応戦する。鋭い剣筋が氷の礫を弾き、砕いていく。私もさらに速度を上げ、様々な角度から氷の礫を繰り出した。
それを同じく凄まじいスピードで受け交わしながら、レオは懸命に前進する。彼の集中力は研ぎ澄まされ、戦場に響くのは氷が砕ける音と鋭い剣の軌道のみ。
少し離れた場所で見つめるノエルは、目を輝かせながらその戦いを見守っていた。
両者のぶつかり合いは激しさを増し、土煙とそこに混じった氷の破片がグラウンドを覆い尽くす。視界が塞がれるほどの混乱の中、私は最後の魔法を繰り出した。
ドドドドッ!
凄まじい音が響き渡り、氷の世界が振動する。
そして、その音が止んだ瞬間——
グラウンド一面を覆っていた氷がパァンと弾けるように輝き、砕け散った。
元の平坦なグラウンドが姿を現し、そこに立っていたのは平然とした私と、尻餅をついて座り込んでいる汗だくのレオ。
「……あー、疲れた」
そう言いながら、レオは額の汗を拭い、苦笑いする。
こうして、私たちの模擬戦は幕を閉じた。
私は座り込むレオの近くまで歩いていき、手を差し伸べた。
「あらあら、大丈夫?」
レオは私の手を見つめた後、軽く息をついてその手を握り、ゆっくりと立ち上がる。そんな二人の近くに、興奮気味のノエルが駆け寄ってきた。その後ろから、ヴィヴィとアンドレアも歩いてくる。
「ふたりとも、すっごい!」
キラキラした瞳でそう言うノエルに、私はふふっと笑いながら「ありがとう」とにこやかに答えた。
レオも苦笑しながら、息子の頭をわしわしと撫でる。
そんな三人の元へたどり着いたヴィヴィが、呑気な口調でレオに声をかけた。
「レオは、まだまだね〜」
「さすが姫様ですわ」
アンドレアは私に向かって、誇らしげにそう言った。
「ヴィヴィ…お前な………誰のためにやってると思ってんだ」
まだまだ、とヴィヴィに言われたレオはヴィヴィを睨みつつため息をつく。
その様子に私は苦笑しながら声をかけた。
「でも、だいぶ交わせるようになってきたし、通常の騎士たちに比べれば全然反応速度が早くなったわよ?」
それを聞いたレオは乾いた笑いを浮かべ、「通常の騎士たち以上では足りないんだけどな」とぼやく。
「まぁねぇ」
私も軽く同意しつつ、少し考えた後、提案する。
「今度は別の魔法を使って模擬戦しましょうか?」
「……そうだなぁ」
嫌そうにしつつも、覚悟を決めたように頷くレオ。
しかしそのまま私の手を掴み、懇願するような顔で訴えかけてきた。
「‥‥……助けてください、姫さぁん……!」
「はいはい、頑張れ」
私はそう言いながら、握られていない方の手でレオの肩をバシンと叩く。
和やかに笑い合う私たち。
その様子を、影からじっと見つめる人物がいた。
その人物は、自身の黒髪を静かに揺らしながら、何も言わずにその場を去っていった——。




