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ノクス様の誕生日以降、更に私にくっついてくるようになったノクス様は、誰かいる場所では相変わらずの無表情だが、二人きりの時やノエルと三人の時は、笑顔や穏やかな表情をすることが増えた。


(笑顔が増えるのはいいことよねぇ……でもちょっと破壊力が高いんだけど)


家族だけで過ごす時間や二人きりの時間にはいつも私の体の一部が触れそうな位置に陣取り、静かに幸せそうにしている。ふとした瞬間に私の指を絡めてきたり、そっと髪に触れたりするのが、変わらず最近の彼の癖になっていた。そんな様子に気づいているのはおそらく私だけで、他の者から見れば彼は今までと変わらない冷静な人物に見えているのだろう。


(結構わかりやすいと思うんだけど、私にだけ何か目にフィルターでもかかってるのかしら)


ただ、そんなノクス様の密かな甘えを察してか、時折ノエルが対抗心を燃やすようになった。「お母様は僕のだ」と言わんばかりに、ノクス様の腕の間に割り込んできたり、私の膝にちょこんと座ってきたりする。


ノクス様もさすがに子供相手にはむきにはならず、若干譲るような素振りを見せるものの、心なしか「譲ってやっている」という雰囲気を滲ませていた。私の腕に二人が寄り添ってくるたび、なんとも言えない幸福感に包まれた。


(どっちの黒髪さんも可愛いの極みすぎて、私の世界は毎日尊いです……ありがたい)


しかし、ノエルが寝た夜の夫婦の時間になると、ノクス様はまるで昼間の鬱憤を晴らすかのように、より一層私にくっついてくる。控えめな仕草ではあるけれど、その腕の絡め方や距離の詰め方には、言葉にしない強い独占欲が感じられた。


(自分好みの黒髪美形からの独占欲。なんのご褒美なんだろうか……)


そんな夜のひととき、私はワイングラスを傾けながら、グラス越しにノクス様の横顔を見た。ふと、彼の耳元に光る青いサファイアが目に留まる。誕生日に贈ったイヤーカフだ。彼はこれを大変気に入り、それ以来、毎日必ず身につけている。


その姿をじっと見つめていると、ノクス様もそれに気づいたのか、ふんわりと嬉しそうに微笑んだ。彼のそんな表情を見ると、自然と私も笑みがこぼれる。


「これ、気に入ってくれていて嬉しいです」


そう言いながら、私は手を伸ばし、彼のイヤーカフにそっと触れる。青いサファイアが、ノクス様の艷やかな黒髪に美しく映えていた。そのまま、私は彼の黒髪をさらりと撫でる。


ノクス様は目を細め、心地よさそうに微笑む。その仕草が、なんとも愛おしい。


私もまた、彼とお揃いにと自分用に作成したイエローサファイアのイヤーカフを毎日身につけている。お互いの色のものを贈り合い、常に身につける――それだけで、胸が温かくなった。


「私のこれも、ノクス様の金色の瞳を映したような色で、とても気に入っているの」


そう囁くと、ノクス様は少し頬を染めながら、私の手をそっと握る。

笑い合いながら過ごす、穏やかで甘やかな夜。幸せな時間がゆっくりと流れていった。



◇ ◇ ◇



そんなこんなで毎日幸せに過ごしている私は、突然だが現在、城にある訓練場の一つに足を踏み入れていた。


今日の装いは、長い髪を一つに束ね、高い位置でポニーテールにし、そこにいつものノクス様からもらった金と黒の薔薇を飾っている。片耳にはもちろんイエローサファイアのイヤーカフ。そして、服装は動きやすいシャツにパンツスタイルだった。この世界では女性は基本的にドレスを着ることが多いが、女性騎士や乗馬の際など、動き回る必要がある時にはパンツスタイルも一般的だ。


私は腰に手を当て、向かいに立つ人物を見た。私の側近であるレオだ。

彼もまた動きやすい服装で準備体操をしている。その腰には剣が吊るされていた。


中央付近で向かい合う私とレオを、少し離れたところからヴィヴィとアンドレア、そしてノエルが見守っている。ノエルは私たちのやり取りに興味津々といった様子で、じっとこちらを見つめていた。


(最近ノエルはレオにも懐いてるし、気になるわよねぇ)


「さぁ、レオ。準備はいい?」


私は笑みを浮かべながら尋ねる。それに応えるように、レオは気を引き締めた表情をしながらも、口元にニヤリとした笑みを浮かべた。


「……もちろん!」


その返事を合図に、アンドレアの声が場に響く。


「始め!」


その瞬間、レオの体が弾かれたように動いた。私へと向かい、一気に距離を詰めようとする。しかし、私は素早く後方へと飛び退き、一定の距離を保つ。


「……速いな姫さん、だがまだまだ!」


レオは再び間合いを詰めようと動くが、私はさらなる後退で距離を維持する。


「ふふ、そんなに簡単には捕まらないわよ?」


軽口を交わしながら、私はじりじりと距離を取り、次の一手を考える。訓練場に響くのは、見守る者たちの静かな気配と、私たちの素早い動きによる砂の舞う音だけ。


これから、大規模な魔法を展開する。

私は、魔力を込める準備を始めながら、レオの動きを慎重に見極めた。



いきなりのアイリスさんとレオの戦闘シーン。彼らは学生時代結構ヤンチャに過ごしていたので、こういったことも好きだったりします。

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