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八話:迷子………迷子!?

アマちゃんを追いかけて街の中に入る事おおよそ数分後。俺達はとても大きな路地のような場所に来ていた。俺が全力で手を伸ばしても何人も必要そうな、象が五頭も(さすがに言い過ぎかな?)同時に通過できそうな大きな路地だ。灰色の石のような素材が使われているようだが、切れ目がなく、アスファルト道路と見てもおかしくないように見える。周囲には木製の家が隙間なく建てられており、あまりの道路との不釣り合いさにとてつもない違和感を感じてしまう。

「早く来てください。本当に診察所、しまっちゃいますから」

急かすような声で先行しているアマちゃんに呼ばれる。なるべく足を速めているのだが、どうしても気になって気になっていつのまにか足が遅くなっているのだ。

「だーかーら。バッチがもらえなきゃ本当にまずいんですって」

とうとうこちらまで戻ってきて俺の服を引っ張っている。

「大丈夫ですよ。それよりここら辺見させてくださいよ」

あまりにも呑気な言い方に怒りが抑えられないのかアマちゃんはブツブツ言いながら先に行ってしまった。

アマちゃんに置いてかれてから俺は色々と面白いものを見た。

例えば、大きな大きな路地を進んだ先にあった、カラフルな屋根が沢山立ち並ぶ賑やかなそうな住宅街。

例えば、城と間違えるほど巨大な宿泊施設。「ホテルチャップ。タスト郷」と書いてあってようやく気付いたほどだ。

他にも葉の多いなにか分からない木に飲み込まれかけた家とか、見るも無残に焼かれた家や、薄気味悪い裏路地を通った先にあった空気がピリピリする公園とか色々な場所を見て回った。

「ねえ。見てくださいよ、今度はいかにも治安が悪そうな…………」

俺が振り向くとそこには誰もいなかった。

「………………」

高校生にもなって、まさか自分が、なるなんて、思ってもみなかった。

迷子ダァァァァァ。

頭を抱えて崩れ落ちた。

油断では済まされない程に油断していた。異世界に来たという興奮が静かに暴れていたのだろう。

「………………………」

俺は全力疾走で来た道を戻った。

公園。

木に飲み込まれかけた家。

怪しい老婆が手招く暗い露店。

屈強な男が立つ謎に豪華な建物。


「はぁはぁ」

どれだけ走っても元の場所に辿り着かない。

おかしいなぁ。むしろより遠くへ行っている気がする。

辺りを見回すと荒廃している。人の気配は無く、建物は所々崩れているものが多く、道は細くて汚れている。日もかなり傾き始めて空は夕の色になっている。

ぐぅぅ。

お腹空いた。そう言えばおやつ、食べてない。

足も疲れ果ててしまいトボトボと歩いていると、言い争う声が聞こえた。周囲が静かなお陰かとても大きく聞こえた。

「だから、僕たんの事を本当に知らないの!?」

「いやな。お前の事は知らないけど。とにかく、今日バッジを持っていなくて、こんな場所にいる奴はとりあえず引っ張ってくからな」

「いやだいやだ。誰か―!」

声に引かれて俺は裏路地のような場所に来た。見ると1人の男性が俺より小さい身長の小太りの男の子を捕まえている姿が見えた。

「だから…………痛いっ!」

男の子の顔が歪んでいる。どうやら大人に手を後ろに捕まえられているようだが、力が強いらしい。俺が助けようか、どうすべきか迷っているとふと男の子と目が合った。

「そこの君、僕たんのことを助けてくれ!」

涙目かつ鼻声で助けを求められる。ただその声で大人も呼んでしまったようだ。

「あ?君、この子の友達?」

男性はなるべく優しい声で聞いてくる。状況と合っておらず恐怖を感じてしまう。

俺はただの一般人。アマちゃんを探さなければいけない。そう。赤の他人なんて放っておけばいい。そう。放っておけば………………。

「そうです、そうです。ああ。こんなとこにいたんだ」

俺は裏路地に向かってゆっくりと歩き始めた。

どうやら嘘をつく癖がついてしまったようで、声はまったく震えなかった。

誰のせいかなぁー。

「すみません。こいつ、俺と検査行くって言ったのに逃げちゃて」

あははは、と笑っていると男性のジロジロとした視線が俺に当たるのが分かった。

「診察所、もうすぐ閉まるけど?」

うそ!?

「………大丈夫です」

「いやいやいや。なんか動揺してるでしょ」

「辞めときゃ良かったー!」と叫んでいる自分がいる。一旦考えろ。まだいける。ちらりとあたりを見回すが何もない。

「……………………」

「じゃあお前も連れてくからな」

その言葉に男の子が「いーやーだー!!」と涙目で騒ぎ始めた。

これは少し好都合。男性の気が少しあちらに逸れた。

俺は考え始めた。どうすればいいか。打開の道を。そして思いついた。

そういえばこの人、どこかで見たことある?

そう思った瞬間思い出した。例の五人組。レーイさん達に似ていることに。

「………そういえば、今日同じことを聞かれたんですよ」

俺の言葉に男性がこちらを振り向いた。

「確か………レーイさんという人でしたけど、お知合いですか?」

これで打開できる。竜に乗ったあの人達を、インパクトの強すぎるあの人達を知らないはずがない。俺は危うく勝ち誇った笑みを浮かべる所だった。

「誰だ?それ?」

………………。気温が下がったと感じたのは俺だけだろうか。

「竜に乗った方でしたが………」

「知らないが?」

………………。男性が大きく見えるのは気のせいだろうか。

「まあ。もういいか?」

全然良くない。

しかし男性は俺の肩に手を当てている。その顔がもう無駄だと言っているように見える。瞬間、くるっと俺は後ろを向いていた。そして腕に縄の感触がする。

いやまだだ。まだ何か残ってるはず。まだ……………なにか……………じゃあ。

「そういえば、メルさんという人もいましたけど」

その言葉に男性は動きを止めた。そして段々俺から離れているようで縄も床に落ちた。

「なんだよ。一空のとこで検査受けたのかよ。じゃあもういいや」

そう言うと男性は男の子の方へと向かった。言葉にもう敵意は無い。

「じゃあ、早く行けよー。本当にしまっちゃうからなー」

男はそのまま路地の奥へと消えて行った。男は消えたがまだ耳元で大きく音が鳴っている。それが心音だと気づいたのは少し後だった。

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