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六話:妹らしいです

そう言いそうになりそうだったが、ぐっとこらえた。ただ行動は押さえれず、立ち上がってしまったので周囲の三人から注目を集めてしまった。

「ああ。お兄さんでしたか」

副団さんがまたも紙に何かを書き始めた。

「妹さんも起きられた所で、突然ですが先ほど何があったか教えていただけますか」

そっか、事情聴取か。いやいや、そもそも兄弟ではないし、そもそも俺は転生者だし。

俺はアマちゃんの方に目をやる。アマちゃんはいつのまにか地面の草で遊んでいる。

いや。最初に嘘ついたのそっちでしょ。いやいやいやなんでこんな面倒な状況にしたの?早く話さないと怪しまれるじゃん。とりあえずこのまま嘘をつき続けるしかない。

「……………俺とアマ……ちゃんは今日あの木の下に遊びに来ていたんです。そしたら急に怪しい人が現れたので、見つからないように逃げたんです。結局は捕まってしまって、こんなことになったんですが………………」

俺は身振り手振り、できるだけ相手の目を見て、しかし俺が転生者で本当はアマちゃんと何も接点がない事を隠しつつ話した。どちらも絶対に言えない内容だしね。

その後もういくつか質問をされたが、この男との接点や襲われた理由などについてだったので全て「知らない」で通せた。副団さんも怪しんでいないように顔色一つ変えず淡々と紙に書いてゆく。

「では、これで大丈夫です。妹さんが気を失われている間に怪我がないか検査をさせていただきましたが、問題はありませんでした」

「それにしても、本当に災難でしたね」

事情聴取が終わり、安心したのかレーイさんと副団さんが心配してくれる。団長とメルはどこかへ行ってしまったようで姿は見えない。

正直俺もどうなる事かと思ったけど、メルの時より安心して話ができる人達で良かった。はぁ疲れた。走った時より疲れてるよ。心が。

「なあ。お前バッチが見当たらないんだけど」

緑髪の人に突然言われ思わず「バッチ?」と答えてしまった。瞬間。空気が凍り付く。何事かと周囲を見ると先ほどまで優しい顔をしていた副団さんも、レーイさんですらこちらを疑心の目で見てきていた。

「え…………冗談ですよね?」

レーイさんが恐る恐る、ゆっくりと聞いてくる。

「そんなもの知りませんよ」。そう言いかけた時、「あっ。あの!ごめんなさい!!」とアマちゃんが小さい体でを全力で折り曲げている姿が見えた。

俺を含めた四人の視線が一斉にアマちゃんに注がれる。突然の事に驚く反応が多数だが、緑の髪の人は依然疑心の目を向けてくる。しかし全員に共通しているのは次のセリフを待つ姿勢だ。

しばらくすると、アマちゃんが姿勢を起こし、口を開いた。

「実は……………私がわがまま言って、ここに連れてきてもらったんです。それで…………まだ検査を受けていないんです」

アマちゃんは怯えた、ただしかわいい声で答える。アマちゃんが画策したかは知らないが、これは大人に効果的であった。緑の髪の男性以外は小さい子を怖がらせてしまったと感じたのか一歩踏み込んで質問するのを躊躇っているようだ。

「いや親はどこだよ。検査責任はそいつらにあるだろ」

緑の髪の男性はそんなことも気にせず不機嫌そうに質問を続ける。

「実は、少し前に検査に行ってから帰ってきてないんです。お兄ちゃんは多分検査を拒否したんだろうっって言ってて、ね?」

怯えたような瞳でこちらを見てくるアマちゃん。

「ええ。それで俺達は怖くなってしまい、検査を受けられなかったんです」

咄嗟に口から出てきたが、実際の所、俺は何二つ状況を理解できていない。

一方、周囲の人たちは俺の返事が真かどうか各々悩んでいるようだった。緑髪の人でさえ喋ることなく目を瞑って考えているようだ。

「お前ら、そろそろ行くぞ」

団長の声が竜の元から聞こえてきた。その声に反応し皆が顔を上げた。

「はーい。今行きまーす」

レーイさんが一瞬の遅れて反応して答えた。すると俺の方を真剣な表情で見てくる。

「私はあなたを信じたいです。なのであなたに約束してほしいです。神に誓って」

神?それだけでいいの?

(わたくし)ミーツ・アミと私の兄ミーツ・オウヤーは原始の神に誓います」

落ち着いた声で答えるのはこれもアマちゃんだ。

てかオウヤ―って俺の事?

「これでいいですよね?」

レーイが質問すると、待ってましたと言わんばかりに副団さんが肯定してくれる。緑髪の人は恨めしそうにレーイさんと俺の方を見ると、舌打ちして足早に去っていった。

「神はいつでもあなたと共にあります。決して誓いを破らぬように」

そう言うとレーイさんと副団さんも走っていった。少し走ったところで副団さんは何かを思い出したかのように戻ってきて例のナイフの男性を肩に担いで持って行った。

意外と強いなぁ。

俺達はその後騎士一行がドラゴンに乗って飛び去るまでその場から動かず見送った。

「はぁー」

緊張から解放されると体が完全に脱力してしまう。しかし意識は即座に、目の前で棒立ちしている女性に送られる。

この子、何者?俺の事をお兄ちゃんって呼んで、周りの人は騙すし、そもそも怖がっているのかすら分からない。初めに会った時より大人に感じる。

「ねえ」

「はー。なんですか、アマ()()()って。確かに名前はアマと言います。しかし()()()()()である以上呼び捨てしてもらわないと困ります」

弾丸のように鋭い言葉が当たる。やはり子供には見えない。というか印象が90度変わっている。

「まあ、そうですね………。では早速検査に行きましょう」

アマちゃんは速足で歩き始めた。

「ちょ、ちょっと」

俺が慌てて追おうとすると突然立ち止まってこちらを振り返った。

「これからよろしくお願いしますね。お兄ちゃん」

そう言い放つと、スタスタと街の方へ歩いて行ってしまった。

始まる異世界での俺。早速雲行きが怪しくなってきた。



まあ空は西に傾き始めているんだけどね。

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