衣
衣
庭の。
まだ低くて、つるの少ない、
藤の木に、立派な、花の房。
いくつも、重たそうに、
ぐるりと、下がっている。
しっぽの形をした、紫色の。
フェイクファーを束ねた、
ドレスの、よう。
伸びている枝の、先で、
開いたばかりの、
小さな3枚の葉っぱ。
まだ、寄り集まっている、葉脈。
緑色の、プリーツが。
たっぷりとある、
スカートの、よう。
きみらには、
有名なデザイナーも、
かなわない。
どんなに、上手に、
染めても。
どんなに、細かく、
縫っても。
どうしたって、
コピーできない、色合い。
縫い目も、
貼り付けたところも、
全然、無い。
金糸の刺繍も、
七色のスパンコールも、
ないというのに、
いったい、どこから、
その光を、放つの。
きみらを、作るのは、
いったい、どんな、
手だろうね。