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第6話 悲しいお知らせ

それにしても担任がなかなか来ない


「遅いねぇ、ミトリ先生」


掲示板にあった担任の名前は日角美鳥ひずみみとり


大学を出て何年も経っていない、二十代半ばの若い女の先生だ


黒縁メガネに引っ詰め髪で地味な見た目をしているが、メガネを外すと実は可愛いなんて噂もある


制服に合わせている訳じゃ無いのだろうが、黒いリクルートスーツみたいな姿で、見た目通り大人しい


日角先生は年も他の先生たちより近いのもあって女子からは下の名前で呼ばれて慕われていたりする


「確かに遅すぎだな。また、小澤先生にでも仕事押し付けられてるのかな」


小澤杏奈先生は日角先生からすると仕事上の先輩であるだけではなく、高校も同じだったらしく、頭が上がらないらしい


性格もキツイので日角先生以外も逆らうのは難しい


涼なんかは一番苦手なタイプだが、派手目で美人だから好きだと好きだという男子も結構いる


そんな自分を慕う男子も容赦なくこき使うし、心底担任じゃなくて良かった


そんな事を考えていると、


甲高い悲鳴が別のクラスから聞こえた



ガタン!!


「うそ!そんなの!どうして!…なんでなんでよ!ユリナが!なんで!タナ先!嘘ついてる!そんなの、そんなの」


女子の叫び声が聞こえる

椅子か机でも倒したのだろう、けたたましい音も同時に


「落ち着け!確かに先生にとってもとても残念な知らせで…」


男性の少し慌てた声もする


「い…いやぁぁぁぁ!そんな!うそ!…う、うぁ、ひぐぅ、うわぁぁぁぁ!」


ガラガラ…ダーン!!ぱたぱたぱた…


「おい待て!あー、お前らは自席で待ってろよ!直ぐ戻るから」


たったったっ…



…どうやら女子生徒が何かにショックを受けて教室を飛び出して、それを男の先生が追いかけてるようだ


「どうしたんだろうね」


不安げな様子で廊下の方を見る沙凪


「うちの担任もこないしトラブルでもあったのかな」


流石に教室を離れて観に行くわけにもいかないし、予測もつかない


「田中先生のクラスっぽいし、後で田中先生に聞けたら聞いてみる?

田中先生は…4組だったか。もし4組に知ってる奴いたら、そいつに聞いても良いしさ。多分直ぐに何があったか噂になると思うぜ」


「そうだね」


涼と沙凪以外のクラスメイトたちも皆、他所のクラスで起きたらしい騒ぎに少し興奮気味に話合っている


落ち着いて我関せずなのは小夜子くらいのものだ


ガラガラ…


皆が教室の入り口を一斉に見る


立て付けの微妙に悪い戸を両手で開けて、ようやく担任の日角が現れた


いつもの生真面目さとは少し違うような、硬い表情で黒板前に進む


パタ…パタ…


黒いシンプルなサンダルは静かな足音を立てる


引っ詰め髪の大きめの黒い髪飾りが蛍光灯を反射する


黒板の真ん前に辿り着き、教室を緊張したような張り詰めた顔で見回して、日角は口にする


「皆さん、2年1組の皆さん…全員に今日は進級おめでとうと、言おうと思って…ました。皆さんにとても悲しいお知らせをしなくてはいけません

今朝、このクラスの仲間となるはずだった、高野友梨奈たかのゆりなさんが、遺体で見つかりました」





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